SPORTSよこはま 2009 APRIL Vol.12
近年子どもの体力低下が叫ばれていますが、横浜の子ども達の体力はどのように変化しているのでしょうか。また新しい球技を授業などに取り入れることは、子どもの体力向上にどのような効果があるのでしょうか。横浜市としての取組みについて、横浜市教育委員会事務局小中学校教育課指導主事の高木伸之さんに聞きました。
●横浜の小学校の授業で近年取り入れられてきた球技について
ここ数年で取り入れられるようになった球技にはどのようなものがありますか。
タグラグビーやソフトバレーボール、ティーボールなどが挙げられますが、なかでもタグラグビーの普及率が高くなっています。
なぜタグラグビーを授業に取り入れるようになったのですか?また、子どもたちにはどのような効果があるのでしょうか。
タグラグビーは、誰でもトライを決めることができるというところが最も大きな魅力だといわれています。運動が苦手な子どもにとってサッカーやバスケットボールでシュートを決めるというのはかなり大きな課題であり、高い技術が必要です。タグラグビーは、ボールを持っている人の後ろを走り、パスをもらえば簡単にトライのチャンスが生まれます。また、みんなでパスをつないだからトライができたんだという仲間意識が確立されやすい種目ともいえます。運動に苦手意識のある子どもが初めてトライを決めて涙を流すシーンもよく見られます。
具体的にどのような活動がなされていますか。
指導者派遣については、各学校が依頼をして専門の指導者による出前授業が行われています。
大会については、教育委員会が主催している「横浜市立小学校タグラグビー交流会」があります。この大会は平成15年度から行われています。平成20年度の第6回大会は残念ながら悪天候で中止になってしまいましたが、横浜スタジアムを会場として小学校24校、118チームが参加する全国的にも大規模な大会となる予定でした。
新学習指導要領により、2011(平成23)年度以降どのような変化があるのでしょうか。
2011(平成23)年から新学習指導要領のもとでの授業が行われます。その際、これまでは、サッカー、バスケットボールなどのスポーツ種目名で例示されていたものが、「ゴール型」、「ネット型」、「ベースボール型」という類型で示されるようになりました。
横浜市ではタグラグビーを含めて、サッカー、バスケットボールなどのゴール型中心に授業を行うことが多かったのですが、今後は、ソフトバレーボールの他にプレルボール(※)やキックベースなどが学年に応じて実施されていくものと思われます。
※プレルボールとは? ドッジボールを手で床に打ちつけ、決められた回数内で高さ40〜50cmの低いネットを越して、相手のコートにボールを返すゲーム。
●体育授業の改善と子どもの体力向上推進との関係
─横浜市の取組み─
平成20年度横浜市立小中学校児童生徒体力・運動能力調査の結果が出ました。現在、子どもの体力向上推進のために具体的にどのようなねらいを持って取組みがなされていますか。また、今後、新たになされる予定のものは何ですか。
子どもの体力・運動能力は、1985(昭和60)年ごろをピークに緩やかに下降傾向を示し、現在は「下げ止まり」といわれています。また、運動する子どもとしない子どもの二極化傾向が強くなっていることも調査の結果わかってきました(グラフ)。これは「3間」といわれる「仲間」、「空間」、「時間」が減ってきたことが大きな原因のひとつであるといわれています。
体力向上のためには、全ての子どもを運動好きにすることが最も重要な課題ですが、そのためには、まずは基礎体力づくりが大切です。具体的には、体育授業の改善・充実を図り、全ての子どもが「走る、跳ぶ、操る」などの発達の段階に応じた基本的な動きを的確に身に付けることができるようにします。その際には楽しみながら取り組めるようにすることが大切です。そして、学校での集会や休み時間を有効に使い、学校生活全体の中で体を動かすことの楽しさや心地よさを味わい、進んで運動に取り組もうとする意欲がもてるようにします。これらの取組みは、横浜市体力向上推進拠点校において先進に実践、検証し、全市に広めていく方針です。
タグラグビーなどの新しい球技に代表されるような、体力にかかわらず誰でも楽しめる種目を取り入れていくことで運動好きの子どもが増え、結果的に子どもの体力向上につながっていくことが期待されています。
子どもの体力向上推進のために、学校(教職員)だけではなく地域や保護者の協力は重要になってくるのでしょうか。
子どもが運動好きになるためには、指導する大人のかかわりも重要なポイントを握っているものと思います。例えば、休日にキャッチボールをする、地域のペタンク大会に参加するなどの機会を積極的にもつことが大切です。その際、大人が「ナイスキャッチ!」「上手になったよ。」などの掛け声をかけることで子どもは運動することの喜びを味わえると思います。場の提供に加え、大人が積極的に関わることも体力向上に繋がるものと考えています。
子どもの体力向上のためには、まず運動が苦手な子どもに運動の楽しさを知ってもらい、自分から運動に取り組んでもらうことが重要だったのですね。新しい球技はそのきっかけとして大きな役割を果たしてくれそうです。
次のページでは、子どもと保護者が共に楽しみながら活動している、ティーボールという新しい球技のチームを紹介します。
近年子どもの体力低下が叫ばれていますが、横浜の子ども達の体力はどのように変化しているのでしょうか。また新しい球技を授業などに取り入れることは、子どもの体力向上にどのような効果があるのでしょうか。横浜市としての取組みについて、横浜市教育委員会事務局小中学校教育課指導主事の高木伸之さんに聞きました。
●横浜の小学校の授業で近年取り入れられてきた球技について
ここ数年で取り入れられるようになった球技にはどのようなものがありますか。
タグラグビーやソフトバレーボール、ティーボールなどが挙げられますが、なかでもタグラグビーの普及率が高くなっています。
なぜタグラグビーを授業に取り入れるようになったのですか?また、子どもたちにはどのような効果があるのでしょうか。
タグラグビーは、誰でもトライを決めることができるというところが最も大きな魅力だといわれています。運動が苦手な子どもにとってサッカーやバスケットボールでシュートを決めるというのはかなり大きな課題であり、高い技術が必要です。タグラグビーは、ボールを持っている人の後ろを走り、パスをもらえば簡単にトライのチャンスが生まれます。また、みんなでパスをつないだからトライができたんだという仲間意識が確立されやすい種目ともいえます。運動に苦手意識のある子どもが初めてトライを決めて涙を流すシーンもよく見られます。
具体的にどのような活動がなされていますか。
指導者派遣については、各学校が依頼をして専門の指導者による出前授業が行われています。
大会については、教育委員会が主催している「横浜市立小学校タグラグビー交流会」があります。この大会は平成15年度から行われています。平成20年度の第6回大会は残念ながら悪天候で中止になってしまいましたが、横浜スタジアムを会場として小学校24校、118チームが参加する全国的にも大規模な大会となる予定でした。
新学習指導要領により、2011(平成23)年度以降どのような変化があるのでしょうか。
2011(平成23)年から新学習指導要領のもとでの授業が行われます。その際、これまでは、サッカー、バスケットボールなどのスポーツ種目名で例示されていたものが、「ゴール型」、「ネット型」、「ベースボール型」という類型で示されるようになりました。
横浜市ではタグラグビーを含めて、サッカー、バスケットボールなどのゴール型中心に授業を行うことが多かったのですが、今後は、ソフトバレーボールの他にプレルボール(※)やキックベースなどが学年に応じて実施されていくものと思われます。
※プレルボールとは? ドッジボールを手で床に打ちつけ、決められた回数内で高さ40〜50cmの低いネットを越して、相手のコートにボールを返すゲーム。
●体育授業の改善と子どもの体力向上推進との関係
─横浜市の取組み─
平成20年度横浜市立小中学校児童生徒体力・運動能力調査の結果が出ました。現在、子どもの体力向上推進のために具体的にどのようなねらいを持って取組みがなされていますか。また、今後、新たになされる予定のものは何ですか。
子どもの体力・運動能力は、1985(昭和60)年ごろをピークに緩やかに下降傾向を示し、現在は「下げ止まり」といわれています。また、運動する子どもとしない子どもの二極化傾向が強くなっていることも調査の結果わかってきました(グラフ)。これは「3間」といわれる「仲間」、「空間」、「時間」が減ってきたことが大きな原因のひとつであるといわれています。
体力向上のためには、全ての子どもを運動好きにすることが最も重要な課題ですが、そのためには、まずは基礎体力づくりが大切です。具体的には、体育授業の改善・充実を図り、全ての子どもが「走る、跳ぶ、操る」などの発達の段階に応じた基本的な動きを的確に身に付けることができるようにします。その際には楽しみながら取り組めるようにすることが大切です。そして、学校での集会や休み時間を有効に使い、学校生活全体の中で体を動かすことの楽しさや心地よさを味わい、進んで運動に取り組もうとする意欲がもてるようにします。これらの取組みは、横浜市体力向上推進拠点校において先進に実践、検証し、全市に広めていく方針です。
タグラグビーなどの新しい球技に代表されるような、体力にかかわらず誰でも楽しめる種目を取り入れていくことで運動好きの子どもが増え、結果的に子どもの体力向上につながっていくことが期待されています。
子どもの体力向上推進のために、学校(教職員)だけではなく地域や保護者の協力は重要になってくるのでしょうか。
子どもが運動好きになるためには、指導する大人のかかわりも重要なポイントを握っているものと思います。例えば、休日にキャッチボールをする、地域のペタンク大会に参加するなどの機会を積極的にもつことが大切です。その際、大人が「ナイスキャッチ!」「上手になったよ。」などの掛け声をかけることで子どもは運動することの喜びを味わえると思います。場の提供に加え、大人が積極的に関わることも体力向上に繋がるものと考えています。
子どもの体力向上のためには、まず運動が苦手な子どもに運動の楽しさを知ってもらい、自分から運動に取り組んでもらうことが重要だったのですね。新しい球技はそのきっかけとして大きな役割を果たしてくれそうです。
次のページでは、子どもと保護者が共に楽しみながら活動している、ティーボールという新しい球技のチームを紹介します。