SPORTSよこはまVol.47:スポーツ医科学センター
横浜市スポーツ医科学センター 整形診療科長●清水 邦明(整形外科医師)
寒い季節は、ジョガー・ランナーにとってはむしろ大歓迎かもしれません。頬を刺す冷たい風も、体が温まれば気持ちよく感じられるでしょう。ついつい距離を伸ばしがち…。
しかし、注意しないと体は知らぬ間に少しずつ悲鳴を上げているかもしれません。今回は、知っておくべき代表的なランニング障害について解説します。
当然のこととは言え、ランニング障害は捻挫や打撲のような一瞬のアクシデントではなく、繰り返し下肢に負担が蓄積した結果として症状が現れます。いわゆるオーバーワーク(オーバーユース)です。ただしオーバーユースと言っても単にランニング距離だけの問題ではありません。体のバランスが崩れていたり筋肉の柔軟性が低下したりしていれば、通常問題なく走れている距離の積み重ねでも、体にとっては「相対的な」オーバーユースとなる場合がしばしばあります。自分の体に原因があるオーバーユースです。以下、具体的にランニング障害を挙げてみます。
足部・足関節周囲の代表的なものは足の裏の中央からかかとの手前にかけて痛みが出る「足底筋膜炎(そくていきんまくえん)」と、アキレス腱からかかとにかけて痛みが出る「アキレス腱炎・アキレス腱付着部炎(けんふちゃくぶえん)」でしょう。かかとは足の指から膝の裏側を結ぶ筋肉や腱の支点と考えることができます。足裏からふくらはぎ、アキレス腱の柔軟性が低下するとかかとに付着する筋・腱に炎症が生じてきます。この二つの障害は、一度発症すると痛みが改善するまで数ヶ月という単位の長期間を要することが少なくなく、早期に気づいて対処することが特に大切な障害です。アキレス腱やふくらはぎのストレッチ時に、張りに左右で異なる感じがしないか、普段から注意しましょう。
下腿(すねの部分)の代表的な障害では、皆さんも名前をよく知っている「シンスプリント」が挙げられます。ふくらはぎから足部の筋肉が下腿の骨(脛骨)の内側に付着する部分に繰り返しストレス(牽引力)がかかり、骨の表面に炎症を起こすものです。下腿の内側に違和感や押してみて痛みを感じるようなら要注意です。シンスプリントは広く知れ渡っているために軽視されがちで、逆に怖い障害です。長引いている時には後述する脛骨の疲労骨折を生じている可能性もあるからです。
膝の周囲では、お皿(膝蓋骨)の下の部分を中心に痛みが出る「膝蓋腱炎(しつがいけんえん)(=ジャンパー膝)」と膝の外側が痛くなる腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)が代表的です。膝蓋骨は太もも前面の筋肉(大腿四頭筋)の力を下腿に伝達する役目を担っており、大腿四頭筋のオーバーユースにより膝蓋腱や時に膝上の腱(大腿四頭筋腱)の炎症を生じるものです。四頭筋の柔軟性や筋力低下、あるいは太もも後面の筋(ハムストリング)とのアンバランスが引き金となります。これも普段からストレッチ時に張りが強くないか、あるいは階段昇降や軽いスクワット動作で痛みを感じないかなどを注意しましょう。腸脛靭帯炎はおおよそ接地時の下肢バランスが外側荷重になっている場合に起こりやすいと考えられます。歩行や膝の屈伸で外側に痛みを感じます。
もう一つ、下肢全体に起こりえる障害があります。それは各部位の疲労骨折です。足の甲(中足骨)や下腿(脛骨)が代表的ですが、大腿骨や膝蓋骨、足部の他の骨に生じることもあります。これらの部位に1週間以上痛みが続くようなら病院を受診した方がいいでしょう。
最後に忘れてならないのが加齢的な関節の変化(変形性関節症)です。純粋なランニング障害ではありませんが、当然のことながら40、50、60と年齢を重ねれば、誰でも膝を中心に足首や股関節などの荷重関節は徐々に擦り減り・変形が生じてきます。走ること自体は関節に負担をかけることになりますので、中高年では自分の関節の状態を診てもらった上で、適量を判断することも考えるべきでしょう。
ランニング障害は、前に書いたとおりランニング量の問題だけでなく、自分の体に原因がある相対的なオーバーユースによって起こることが多いものの、痛みが出る前に自分で問題点に気づくのは難しいのが現実です。ですから逆に、症状が出たら早めに手を打つことが重要です。1、2日痛みを感じたら、ランニングをストップする。「走り出して温まれば痛みが軽くなる・消える」という状態も要注意です。5日〜1週間休んでも、ランニング再開時に痛みが改善しなければ整形外科を受診してください。
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医学的検査(腹部MRI撮影等)や体力測定の結果をもとに、医師・管理栄養士・スポーツ科学員・運動指導員が個人にあったプログラムを提供します。自分のライフスタイルに合わせて減量が行えます。詳しくは、お問合せください。
●コース 3ヶ月コース または 6ヶ月コース
●対象 15歳以上(中学生不可)
●日程 お問合せください。
TEL.045-477-5050 http://www.yspc.or.jp/ysmc/
横浜市スポーツ医科学センター 整形診療科長●清水 邦明(整形外科医師)
寒い季節は、ジョガー・ランナーにとってはむしろ大歓迎かもしれません。頬を刺す冷たい風も、体が温まれば気持ちよく感じられるでしょう。ついつい距離を伸ばしがち…。
しかし、注意しないと体は知らぬ間に少しずつ悲鳴を上げているかもしれません。今回は、知っておくべき代表的なランニング障害について解説します。
当然のこととは言え、ランニング障害は捻挫や打撲のような一瞬のアクシデントではなく、繰り返し下肢に負担が蓄積した結果として症状が現れます。いわゆるオーバーワーク(オーバーユース)です。ただしオーバーユースと言っても単にランニング距離だけの問題ではありません。体のバランスが崩れていたり筋肉の柔軟性が低下したりしていれば、通常問題なく走れている距離の積み重ねでも、体にとっては「相対的な」オーバーユースとなる場合がしばしばあります。自分の体に原因があるオーバーユースです。以下、具体的にランニング障害を挙げてみます。
足部・足関節周囲の代表的なものは足の裏の中央からかかとの手前にかけて痛みが出る「足底筋膜炎(そくていきんまくえん)」と、アキレス腱からかかとにかけて痛みが出る「アキレス腱炎・アキレス腱付着部炎(けんふちゃくぶえん)」でしょう。かかとは足の指から膝の裏側を結ぶ筋肉や腱の支点と考えることができます。足裏からふくらはぎ、アキレス腱の柔軟性が低下するとかかとに付着する筋・腱に炎症が生じてきます。この二つの障害は、一度発症すると痛みが改善するまで数ヶ月という単位の長期間を要することが少なくなく、早期に気づいて対処することが特に大切な障害です。アキレス腱やふくらはぎのストレッチ時に、張りに左右で異なる感じがしないか、普段から注意しましょう。
下腿(すねの部分)の代表的な障害では、皆さんも名前をよく知っている「シンスプリント」が挙げられます。ふくらはぎから足部の筋肉が下腿の骨(脛骨)の内側に付着する部分に繰り返しストレス(牽引力)がかかり、骨の表面に炎症を起こすものです。下腿の内側に違和感や押してみて痛みを感じるようなら要注意です。シンスプリントは広く知れ渡っているために軽視されがちで、逆に怖い障害です。長引いている時には後述する脛骨の疲労骨折を生じている可能性もあるからです。
膝の周囲では、お皿(膝蓋骨)の下の部分を中心に痛みが出る「膝蓋腱炎(しつがいけんえん)(=ジャンパー膝)」と膝の外側が痛くなる腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)が代表的です。膝蓋骨は太もも前面の筋肉(大腿四頭筋)の力を下腿に伝達する役目を担っており、大腿四頭筋のオーバーユースにより膝蓋腱や時に膝上の腱(大腿四頭筋腱)の炎症を生じるものです。四頭筋の柔軟性や筋力低下、あるいは太もも後面の筋(ハムストリング)とのアンバランスが引き金となります。これも普段からストレッチ時に張りが強くないか、あるいは階段昇降や軽いスクワット動作で痛みを感じないかなどを注意しましょう。腸脛靭帯炎はおおよそ接地時の下肢バランスが外側荷重になっている場合に起こりやすいと考えられます。歩行や膝の屈伸で外側に痛みを感じます。
もう一つ、下肢全体に起こりえる障害があります。それは各部位の疲労骨折です。足の甲(中足骨)や下腿(脛骨)が代表的ですが、大腿骨や膝蓋骨、足部の他の骨に生じることもあります。これらの部位に1週間以上痛みが続くようなら病院を受診した方がいいでしょう。
最後に忘れてならないのが加齢的な関節の変化(変形性関節症)です。純粋なランニング障害ではありませんが、当然のことながら40、50、60と年齢を重ねれば、誰でも膝を中心に足首や股関節などの荷重関節は徐々に擦り減り・変形が生じてきます。走ること自体は関節に負担をかけることになりますので、中高年では自分の関節の状態を診てもらった上で、適量を判断することも考えるべきでしょう。
ランニング障害は、前に書いたとおりランニング量の問題だけでなく、自分の体に原因がある相対的なオーバーユースによって起こることが多いものの、痛みが出る前に自分で問題点に気づくのは難しいのが現実です。ですから逆に、症状が出たら早めに手を打つことが重要です。1、2日痛みを感じたら、ランニングをストップする。「走り出して温まれば痛みが軽くなる・消える」という状態も要注意です。5日〜1週間休んでも、ランニング再開時に痛みが改善しなければ整形外科を受診してください。
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