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SPORTSよこはまVol.5・スポーツ医科学センター

スポーツ医科学センター 運動とリラクゼーション

横浜市スポーツ医科学センター長 中嶋 寛之

 日本は、すでに65歳以上の高齢者が人口の21%を占める超高齢社会を迎えております。しかし、最近の高齢者は一昔前に比べますと体力的に実際の年齢より10歳ぐらい若いともいわれ、元気な高齢者は社会に大きな活力を与えています。このように元気な高齢者が多くなったことは、近年の医学の進歩や栄養状態の改善もありますが、スポーツや運動を日常的に行う人が増えていることにもよります。
ここではスポーツ医学の立場から「スポーツ」と「健康・体力づくり」に関連した話題について私の考えていることを述べてみたいと思います。

Ⅰ 超高齢社会とスポーツ医療

超高齢社会では労働力不足や経済の縮小など社会的にもさまざまなマイナス面があげられています。また医学的な問題点としても医療費の高騰とこれに関連して介護費用の増大が危惧されています。特に医療費の中でも年齢が長じるにしたがって多く費やされるものに、高血圧などの循環器疾患と膝痛・腰痛などの運動器の疾患によるものがあげられます。したがって、高齢になってからの介護予防のことも考え合わせますと、メタボ対策のための運動療法や膝痛・腰痛予防のための筋力トレーニングなどのようにスポーツ医科学的な背景に基づいて、個人個人の条件にあわせた安全なスポーツや身体運動を行うことは、元気で体力のある高齢生活を望むのに欠かせないといえるでしょう。
ところで安全なスポーツ活動を行うには、そのための環境(自治体スポーツセンター・フィットネスクラブ・疾病運動予防施設などを含めたスポーツ施設)、高齢者本人の身体条件(病気の有無)や指導内容(スポーツ指導者・健康運動指導士・理学療法士などのレベル)などが重要となります。
たとえば、病院で行われるリハビリテーションでは、医師の処方に基づいて理学療法士が訓練を行うことはよく知られています。その理由は、リハビリテーションの領域では健康保険による診療報酬という経済的受け皿ができているからです(互助)。最近はフィットネスクラブでトレーニングをする中高年の方々も増えつつあります。特に高齢者は何らかの病気や異常所見を持つ人が多いので、メディカルチェックと医師の運動処方に基づいてスポーツ活動をおこなうほうが安心です。しかし、健康診断は「治療」ではありませんので、「予防」のための費用は健康保険から出ませんので個人のポケットマネー(自助)で高額な診断費用を負担せざるを得なくなります。
高齢者で健康のためにスポーツや運動をしたいと考えている人はますます増えているのに、これでは安心してスポーツ活動に踏み込むことができません。一刻も早くスポーツ指導者と医師との連携による安全な指導体制が必要なのです。
横浜市スポーツ医科学センターでは、高齢者や生活習慣病あるいは膝痛・腰痛などをもつ市民でも、安心してスポーツ活動ができるように、医師とスポーツ指導者との連携システムがつくられております(スポーツプログラムサービス)。これはいわばスポーツ版人間ドックに相当しますが、経費は市の負担により半額と安価におさえられており(公助)、多くの市民の健康の確保につなげることを目標としております。
このように医療・介護費(互助)、自治体予算(公助)・個人的支出(自助)などをふくめた巾広い財源のもとに「広い意味の医療」を行い、生活習慣病対策や介護予防の効果をあげることができれば、「スポーツ」や「健康・体力づくり」によって高齢社会で問題となっている医療費や介護費用の増大を抑制することにも貢献できることになります。

Ⅱ 超高齢社会に臨んだスポーツによる健康づくり

さて、スポーツといっても青少年の競技スポーツ、一般市民による市民スポーツ、さらに高齢にいたっての健康スポーツなどさまざまな分け方があります。しかし、わが国では省庁の縦割り制度のもとで、子どもの体育や競技スポーツは文科省、介護予防に通じる健康・体力づくりは厚労省の担当となっております。もっとくわしく年代別にみてみますと、発育期(幼児・小・中・高)から青年期にかけての競技スポーツや体力づくりは文科省、中年以後の生活習慣病予防の運動療法や高齢者の健康スポーツや介護予防は厚労省の管轄と分かれているのです。スポーツ医学の立場からは、現在高齢者に行われている転倒骨折予防や介護予防は、発育期の段階でスポーツ活動や運動を通じて安全な転び方や身のこなしとして習得しておくのが望ましいのです。また、体力づくりや競技スポーツも将来の老後を見据えての骨粗鬆症や老年症候群の予防につながるものであってほしいわけです。
結論的には超高齢社会では「スポーツ」を軸として各年代につながり省庁にまたがる政策が必要となります。
国ではこのように分けられてはいますが自治体によってはスポーツ行政と健康政策とが連携して実施されているところもあります。
一例として、横浜市スポーツ医科学センターの事業内容を紹介しますと、1)スポーツ医療部門では、スポーツクリニック(内科・整形外科・リハビリテーション)やメディカルチェックが行われ、2)健康体力づくり部門では、トレーニングジムやアリーナ・プールを利用しての各種健康教室や運動療法が行われております。3)研修室では、年間スケジュールのなかで横浜市中学校スポーツ指導者講習会・体力測定や高齢者のための転倒骨折予防指導者講習会が実施されております。4)その他では、一昨年は市民健康ネットワークプロジェクトが行われました。
さらに横浜市では、昨年4月から横浜市体育協会と横浜市スポーツ振興事業団(横浜市スポーツ医科学センターをはじめ各区スポーツセンターの指定管理者)とが統合されました。今後は、横浜市スポーツ医科学センターを拠点として発育期のスポーツ(教育委員会)からはじまり、生涯スポーツ(市民活力推進局)、さらには高齢者の健康スポーツ・介護予防(健康福祉局)へと一貫してスポーツを通じた健康と体力づくりの「広義のスポーツ医療」が行われば国にさきがけたモデルを横浜から発信することができるでしょう。

図

スポーツ医科学センター 運動とリラクゼーション

横浜市スポーツ医科学センター長 中嶋 寛之

 日本は、すでに65歳以上の高齢者が人口の21%を占める超高齢社会を迎えております。しかし、最近の高齢者は一昔前に比べますと体力的に実際の年齢より10歳ぐらい若いともいわれ、元気な高齢者は社会に大きな活力を与えています。このように元気な高齢者が多くなったことは、近年の医学の進歩や栄養状態の改善もありますが、スポーツや運動を日常的に行う人が増えていることにもよります。
ここではスポーツ医学の立場から「スポーツ」と「健康・体力づくり」に関連した話題について私の考えていることを述べてみたいと思います。

Ⅰ 超高齢社会とスポーツ医療

超高齢社会では労働力不足や経済の縮小など社会的にもさまざまなマイナス面があげられています。また医学的な問題点としても医療費の高騰とこれに関連して介護費用の増大が危惧されています。特に医療費の中でも年齢が長じるにしたがって多く費やされるものに、高血圧などの循環器疾患と膝痛・腰痛などの運動器の疾患によるものがあげられます。したがって、高齢になってからの介護予防のことも考え合わせますと、メタボ対策のための運動療法や膝痛・腰痛予防のための筋力トレーニングなどのようにスポーツ医科学的な背景に基づいて、個人個人の条件にあわせた安全なスポーツや身体運動を行うことは、元気で体力のある高齢生活を望むのに欠かせないといえるでしょう。
ところで安全なスポーツ活動を行うには、そのための環境(自治体スポーツセンター・フィットネスクラブ・疾病運動予防施設などを含めたスポーツ施設)、高齢者本人の身体条件(病気の有無)や指導内容(スポーツ指導者・健康運動指導士・理学療法士などのレベル)などが重要となります。
たとえば、病院で行われるリハビリテーションでは、医師の処方に基づいて理学療法士が訓練を行うことはよく知られています。その理由は、リハビリテーションの領域では健康保険による診療報酬という経済的受け皿ができているからです(互助)。最近はフィットネスクラブでトレーニングをする中高年の方々も増えつつあります。特に高齢者は何らかの病気や異常所見を持つ人が多いので、メディカルチェックと医師の運動処方に基づいてスポーツ活動をおこなうほうが安心です。しかし、健康診断は「治療」ではありませんので、「予防」のための費用は健康保険から出ませんので個人のポケットマネー(自助)で高額な診断費用を負担せざるを得なくなります。
高齢者で健康のためにスポーツや運動をしたいと考えている人はますます増えているのに、これでは安心してスポーツ活動に踏み込むことができません。一刻も早くスポーツ指導者と医師との連携による安全な指導体制が必要なのです。
横浜市スポーツ医科学センターでは、高齢者や生活習慣病あるいは膝痛・腰痛などをもつ市民でも、安心してスポーツ活動ができるように、医師とスポーツ指導者との連携システムがつくられております(スポーツプログラムサービス)。これはいわばスポーツ版人間ドックに相当しますが、経費は市の負担により半額と安価におさえられており(公助)、多くの市民の健康の確保につなげることを目標としております。
このように医療・介護費(互助)、自治体予算(公助)・個人的支出(自助)などをふくめた巾広い財源のもとに「広い意味の医療」を行い、生活習慣病対策や介護予防の効果をあげることができれば、「スポーツ」や「健康・体力づくり」によって高齢社会で問題となっている医療費や介護費用の増大を抑制することにも貢献できることになります。

Ⅱ 超高齢社会に臨んだスポーツによる健康づくり

さて、スポーツといっても青少年の競技スポーツ、一般市民による市民スポーツ、さらに高齢にいたっての健康スポーツなどさまざまな分け方があります。しかし、わが国では省庁の縦割り制度のもとで、子どもの体育や競技スポーツは文科省、介護予防に通じる健康・体力づくりは厚労省の担当となっております。もっとくわしく年代別にみてみますと、発育期(幼児・小・中・高)から青年期にかけての競技スポーツや体力づくりは文科省、中年以後の生活習慣病予防の運動療法や高齢者の健康スポーツや介護予防は厚労省の管轄と分かれているのです。スポーツ医学の立場からは、現在高齢者に行われている転倒骨折予防や介護予防は、発育期の段階でスポーツ活動や運動を通じて安全な転び方や身のこなしとして習得しておくのが望ましいのです。また、体力づくりや競技スポーツも将来の老後を見据えての骨粗鬆症や老年症候群の予防につながるものであってほしいわけです。
結論的には超高齢社会では「スポーツ」を軸として各年代につながり省庁にまたがる政策が必要となります。
国ではこのように分けられてはいますが自治体によってはスポーツ行政と健康政策とが連携して実施されているところもあります。
一例として、横浜市スポーツ医科学センターの事業内容を紹介しますと、1)スポーツ医療部門では、スポーツクリニック(内科・整形外科・リハビリテーション)やメディカルチェックが行われ、2)健康体力づくり部門では、トレーニングジムやアリーナ・プールを利用しての各種健康教室や運動療法が行われております。3)研修室では、年間スケジュールのなかで横浜市中学校スポーツ指導者講習会・体力測定や高齢者のための転倒骨折予防指導者講習会が実施されております。4)その他では、一昨年は市民健康ネットワークプロジェクトが行われました。
さらに横浜市では、昨年4月から横浜市体育協会と横浜市スポーツ振興事業団(横浜市スポーツ医科学センターをはじめ各区スポーツセンターの指定管理者)とが統合されました。今後は、横浜市スポーツ医科学センターを拠点として発育期のスポーツ(教育委員会)からはじまり、生涯スポーツ(市民活力推進局)、さらには高齢者の健康スポーツ・介護予防(健康福祉局)へと一貫してスポーツを通じた健康と体力づくりの「広義のスポーツ医療」が行われば国にさきがけたモデルを横浜から発信することができるでしょう。

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