SPORTSよこはまvol.34(12月号)横浜スポーツ栄誉賞受賞者インタビュー ゴールボール欠端瑛子選手
by :スポーツ情報センター:なかむら
欠端 瑛子(かけはた えいこ 1993年2月19日生まれ)
神奈川県横浜市金沢区出身 横浜美術大学在学
2012年ロンドンパラリンピックゴールボール女子競技で中国との決勝戦に勝利し金メダルを獲得した。
父親は元プロ野球選手で横浜ベイスターズに所属していた欠端光則さん
ゴールボールは3人の選手が目隠しをし、鈴の入ったボールを転がすように投球し、相手のゴールを狙う球技
2012年ロンドンパラリンピックゴールボール女子競技で中国との決勝戦に勝利し金メダルを獲得した横浜市金沢区出身の欠端瑛子選手にお話をうかがいました。
■ゴールボールを始めたきっかけ
小学校や中学校の時は体育が嫌いで、好きなのはマット運動と跳び箱ぐらい。生まれつき視力が弱かったので、向かってくるボールが目の前で急に視界に現れてビックリしてよけたりしていたぐらい球技は本当に嫌いでした。
父親や兄と公園で軽くキャッチボールはしていたのですが、ジャングルジムなどの遊具で遊ぶ方が好きでしたね。
高校から盲学校に行ったんですけど、体育の授業の時までゴールボールを知らなくて、目隠しをして速くて重いボールを体全体で防いだりするのが最初は怖くてできませんでした。
でも2年生の時に友達が入っていたゴールボールのチームに人数が足りないからと誘われて参加したのですが、実際にやってみたら「あ、こんなもんか」と思って意外と楽しくできてそこからハマりました。
■ロンドンパラリンピックに向けて
ロンドンへは初めから「金メダルを取ろう」という気持ちで挑んでいました。
チーム内でも今までコミュニケーションや自分の気持ちを伝えていくということで何回もミーティングをしていたし、コーチと選手間の信頼関係を築くために合宿中やパラリンピックの期間中でも報告や連絡を密にするようにしていたので雰囲気はすごく良かったです。
試合を勝ち進んでいくごとに「いけるんじゃないか。次の中国戦(決勝)は絶対に倒すぞ」という感じで雰囲気はさらに高まっていて、決勝戦はこの勢いでいけば必ず勝てると思っていました。
■金メダルを獲得!
試合終了のブザーがなった瞬間はすごくうれしさがこみあげてきて、みんなで抱き合ってうれし泣きしたり観客に気持ちを込めてお礼をしたりしました。
金メダルを取れたのはチームで心を一つにできたことだと思いますし、スタッフやコーチの方々が他のチームの特徴などを分析して作戦を練ってくれるなど、コーチ、スタッフ、選手全員で勝ち取った金メダルでした。
パラリンピックから帰ってきてメディアの方に取り上げてもらえるようになってゴールボールの知名度は上がったなと感じています。
学校でもそうなんですけど「ゴールボールってなんだろう」「やってみたい」という人がたくさん増えているというのを実感したし、女子の大会でちょっとした体験会をやったんですけどそこでもたくさんの人が来てくれたので本当に嬉しかったです。
最初は知名度が低かったゴールボールが、金メダルを持って帰ってきたことでこんなに広がるのはうれしいなと思いました。
■パラリンピックに向けての準備で苦労したところ
ゴールボールという競技は1チーム目隠しをしたプレーヤー3人で対戦しますが、目隠しをして指示を出すというのは相手の足音だったり、ボールの中の鈴の音だったりそういう状況を感覚的に把握して指示を出してます。
自分のポジションはセンターなんですけど、センターはウイングに指示を出したり、ベンチとコート内をつなぐ声をやコート内を盛り上げる声だったりとか、いろいろ声を出すことが多くて難しいんです。
私としてはそこが苦手としていることで、毎回のようにコーチやチームメイトからも声を出すように言われていたので、練習から意識して声を出すようにしていました。
試合中の声はただ出すのではなくて指示の声なので試合のテンポが速かったりするとタイミングが遅くなってしまうのでそのあたりが難しかったですね。
■両親に感謝
今は通っている美術大学の自主制作や就職活動などで忙しくなってきました。
もともと物づくりが好きで盲学校の時に作業学習というのがあって陶芸だったり紙漉きではがきを作ったりするなどモノづくりをしているうちに楽しく感じるようになり、大学でも工芸品を作っていて、就職もその方向で考えています。
進学の時に両親には自分がやりたいことを何でもやらしてもらっていて美術大学に行きたいって言ったら、「目が悪いのに何でいくの」とか言われると思っていたら「やりたいことは今のうちにやっておきなよ」と賛成してくれたり、強化選手に入りたいといったら「じゃあ受験終わったら考えようか」と言ってくれたりして、やりたいことを何でもやらしてもらっているので本当に両親に感謝してます。