「神奈川スポーツサミット2009」開催レポート
by :スポーツ情報センター:yoko
プロスポーツ・行政・企業・大学などの垣根を越えて、神奈川のスポーツについて考える初の「神奈川スポーツサミット」が3月7日パシフィコ横浜で開催されました(神奈川大学主催。神奈川県、横浜市、川崎市、平塚市、神奈川県体育協会、横浜市体育協会ほか後援)。
記念すべき第1回目の「神奈川スポーツサミット」が開催され、会場のパシフィコ横浜は熱気に包まれました
松沢県知事の「神奈川力」
当日はサミットの開催を記念して、松沢成文神奈川県知事による基調講演が行われました。知事は神奈川の魅力を、「素晴らしい歴史と伝統を持ちながら、産業と技術の地域でもある。そして都会と自然両方の多様性がある。これらすべてを含んで、“神奈川力”です」と分析しました。
スポーツサミットとあって、知事は自身が学生時代ラグビーに打ち込んだエピソードを披露。「自分の体は自分で管理すること。私はジョギングを行い、年に1〜2回は市民マラソンに参加しています。神奈川県では、3033(さんまるさんさん)運動〔※1日30分、週3回、3ヵ月間継続して運動を行う〕を推進しています。健康で長生きが一番の幸せ。運動する習慣を身につけましょう」とメッセージを送りました。
県民主体のスポーツ振興の推進など、今後の展望を熱く語った松沢県知事
企業の地域に根差したスポーツへの取り組み
サミットの核となるシンポジウムは2部構成で行われました。第1部では「スポーツによる地域戦略」をテーマに神奈川にゆかりが深い企業3社の代表者と、プロサッカークラブJ1所属の横浜F・マリノスから中村勝則取締役が登場。それぞれの地域に根差した活動を発表しました。
株式会社明治スポーツプラザは、国内で24店舗のスポーツクラブを経営しています。石原良太郎代表取締役は、「明治製菓と共同開発により、スポーツクラブで運動と栄養両方のサポートを行うシステムを開発しました」と食とスポーツの融合について話しました。
神奈川県を基盤とする旅行会社の相鉄観光では、「プロスポーツ観戦ツアーや高校野球の甲子園など、アマチュア応援ツアーを実施。その他にハイキングなど地域の同好会向けツアーや、スポーツクラブとの合同企画で子どものスキーツアーなど、参加型の企画にも力を注いでいます」と飯田重行取締役社長が発表しました。
第1部シンポジウムで「スポーツによる地域戦略」について討論した4人のパネリスト
また横浜銀行ではCSR活動(企業の社会的責任)の一環で、スポーツを通じて子どもの育成に力を注いでいます。山下明良広報IR室長は、「元Jリーガー、元プロ野球選手を講師に招いた少年サッカー・野球教室を開催しています。横浜YMCAチャリティーラン(毎年秋に開催)には発足当初から参加し、11年間で約300人の銀行関係者が走りました。この参加費は障害を持つ子どもたちを支援するために寄付されます」と話しました。
各企業のスポーツへの取り組みを受け、横浜F・マリノスの中村取締役は「ふれあいサッカープロジェクト」を紹介。「サッカー食育キャラバンでは、年間約200校、20,000人の生徒にサッカーや食教育の指導を行っています。また社会人向けに横浜市内のスポーツセンターでふれあいサッカー教室を開催しています」と話しました。
4人のパネリストは子どもたちの未来のためにも、さらに連携を深めていくことを誓い合いました。
横浜F・マリノスの中村取締役は、プロサッカークラブの地域への取り組みを紹介しました
分野の垣根を越えたネットワーク化を
第2部は「神奈川モデル構築」を目指して各分野の代表者が集結。現状とこれからの可能性について討論しました。
第2部に登場した5人のパネリスト【左】 コーディネーターは箱根駅伝でおなじみ、神奈川大学の大後栄治陸上競技部・駅伝チーム監督【右】
プロ野球12球団で親会社の企業名が名前に付かない唯一の球団、地元の横浜ベイスターズ。佐々木邦昭代表取締役社長は、「県民の好きなプロ野球チーム調査で、神奈川の1位は『好きなチームがない』(42.2%)という結果でした。この結果は全国で神奈川だけ。ベイスターズを選んだ人は17.4%でした。1998年に日本一になった時は39.2%だったので、今年は勝って魅力あるベイスターズを見せていかなければなりません」と力を込めました。
佐々木社長はベイスターズの取り組みとしてNPO法人の設立や、選手会の小学校訪問授業などを紹介しました
一方プロサッカークラブJ2所属の湘南ベルマーレの眞壁潔代表取締役は、1999年親会社の経営撤退から、市民球団として定着するまでの道のりを話し、「ドイツのスポーツクラブを参考に、地元団体(平塚青年会議所、平塚商工会議所青年部)と一緒に取り組んだことが大きかった」と振り返りました。指定管理者制度を受けた「湘南ベルマーレオープンフィールド」では、平塚市内の幼稚園と保育園にグラウンドを無料開放。Jリーガーが練習している横で幼稚園の子どもたちが遊んでいる姿は、ヨーロッパ型の地域交流が実現したと言えます。
行政からは、阿部守一横浜市副市長の話がありました。「スポーツ実施率の向上のためにハマピックの開催など、障害者スポーツの振興に取り組んでいます。また市の目標として、子どもの体力がピークだったと言われる昭和60年頃の水準に近づけることを目指します」。現在横浜市内9区13クラブある総合型地域スポーツクラブの育成や、開港150周年を記念した世界卓球選手権横浜大会、横浜国際トライアスロン大会の開催も紹介されました。
横浜市は開港150周年!市の取り組みについて語る阿部横浜市副市長
横浜市体育協会が紹介されました【左】 横浜のスポーツ情報満載!「SPORTSよこはま」です【右】
シンポジウムは「スポーツを通じたネットワーク化が必要」という提案にたどり着きました。神奈川大学では日本サッカー協会と連携して「JFAこころのプロジェクト」に参加し、地域教育への貢献を目指しています。このような活動が少しずつ広がっていくための第一歩、サミットはそんな余韻を残して幕をおろしました。「神奈川スポーツサミット」は今後も毎年開催される予定です。
神奈川の、そして横浜のスポーツを盛り上げるために神奈川大学【写真・中島三千男学長】に注目が集まります
☆番外編☆
会場はたくさんの来場者で熱気が漂いました。その中には神奈川大学の学生の姿も。熱心に耳を傾けながらメモをとる姿が印象的でした。関東大学サッカー1部リーグ所属の神奈川大学サッカー部主将で、人間科学部3年生の吉田一樹さんは、「現在チームは日本一を目指して、日々練習しています。サッカーと同時に学業、社会貢献も大切なのだと改めて思いました」とこの一日で学んだことを語りました。サッカー部では週に一度、「中山トラッシュ・バスターズ」の活動に協力。サッカー部の練習拠点がある中山駅周辺で、地元商店街の人たちと一緒に清掃活動を行っています。「以前に市民の方から、神大の皆さんが笑顔で掃除をしてくれていたので私も参加したい、と大学に電話をいただきました。人と人とのつながりを感じて嬉しかったですね」と笑顔の吉田さん。もう既に地域との連携は生まれていますね!
日本一を目指すと同時に社会貢献を誓う、サッカー部の小池翔副主将(左)と吉田一樹主将(右)
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