スポーツは「よい子」を育てるか - 永井洋一氏講演会
by :スポーツ情報センター:sekki.
11月17日(月)、横浜市神奈川区の横浜市立神奈川中学校で、第2回小中家庭教育学級が開かれました。特別講演として同校卒業生の永井洋一氏を迎え、「スポーツは『よい子』を育てるか」と題し、講演を行いました。この講演会は、神奈川中学校区の各小中PTA役員の方が、今後、家庭や地域・PTA・学校等でスポーツに取り組むきっかけや子育ての気づきの場として企画したものです。
特別公演者の永井氏は、総合型地域スポーツクラブ“かながわクラブ”の創設に携わり、現在は港北区を中心に活動する「港北FC」でサッカーの指導をしています。「『仰ぐ紺碧 希望の光 丘はわれらの 夢湧くところ』で始まる神奈川中学校の校歌を今でもすべて歌える、中学生時代はいい先生と仲間に恵まれ、この学校で育ちたくさんのことを学んだ」と永井氏は話し始めました。
サッカーを中心に子どもを指導し始めてから30年、子どもたちがスポーツをすることでいいものをたくさん身につけるが、一方で「こんな形でスポーツをさせていいんだろうか?」と疑問に感じる場面にも多く遭遇したといいます。スポーツに関する不祥事の例を列挙し、「どうして清く正しいスポーツマンがそんなことをするんだろう?」と感じ、「スポーツマンは正しい見本のように世間に思われている、親御さんもそうなってほしいためにスポーツをさせているのに、どうしてこんな風になってしまうんだろう? おかしくないだろうか?」と若い頃からずっとそう思っていたと話します。
永井氏は“自己コントロール”が大切だ、と講演を通して呼びかけました。「“自己コントロール”が、スポーツの指導環境でなかなか育つことがないような気がする」と永井氏は懸念します。「子どもたちが“自己コントロール”を身につけるには、ものすごい時間と忍耐が必要です。なぜなら、失敗をさせなければいけないから。失敗を通じて試行錯誤をさせなければいけない。何故だろう? どうしたらいいんだろう?? それを自分で悩んで戦って見つけ出させなければいけないし、それまで待たなければいけないからです」と自身の指導経験を挟みながら話しました。
「いちばん簡単なのは、答えを与えてしまうこと」と永井氏は言い切ります。その後に続けて「でもそれではいけない。自律させるには忍耐が必要です」。
では“自己コントロール”を育むためには何が必要なのでしょうか。
「“自己コントロール”を醸成するためには、子どもたちに試行錯誤をさせて、自分の頭で考えさせて失敗させて、新しい成功を勝ち取るために自分が何をしたらいいかを、子どもたちがつかむこと。つかませるチャンスを与えるためには時間が必要です」と話しました。子どもの頃から勝つことを求めてスポーツに取り組んでいる現場や雰囲気へ、警鐘を鳴らしているかのように、永井氏は強く訴えました。
講演の最後に、永井氏は「子どもがどういう風に取り組んできたか、どういう風に成長しているのかを、親御さんには見てほしい。誰かと比較するのではなく絶対的な成長を見てあげてほしい」と語りかけました。
2時間にも及ぶ講演となりましたが、参加した保護者は最後まで熱心に耳を傾けていました。講演後には質疑応答に続き、有志の保護者が集まり、永井氏を囲んだ座談会も行われるなど、非常に有意義な時間となりました。「こどもの成長」をみんなで考えた神奈川中学校区小中家庭教育学級でした。