広がる食教育の輪 〜 関内ホールで食教育シンポジウム2008が開催
by :スポーツ情報センター記者
食教育への関心が高まっている中、「食教育シンポジウム2008」(横浜市教育委員会主催)が8月6日、中区の関内ホールで開催された。横浜市では今年3月に「食教育推進計画」を策定し、横浜市立学校(小・中・高・特別支援学校)での食教育の推進に力を注いでいる。
当日は約800人の参加者が集まり、横浜F・マリノス管理栄養士の橋本玲子さんによる「食とスポーツ」をテーマにした基調講演や、パネルディスカッションなどが行われた。パネルディスカッションに参加したのは横浜マリノス株式会社取締役の中村勝則さん、横浜ガストロノミ協議会委員長の今平茂さん、横浜市PTA連絡協議会副会長の長島由佳さん、保土ヶ谷区食生活等改善推進員会副会長の竹内靜さんの4人。それぞれの食教育へ対する熱い思いをぶつけあった。
パネルディスカッションのコーディネーターを務めたのは、横浜市教育委員会健康教育課の小澤好一さん(中央)
中村さんはスポーツの視点から食教育論を展開した。横浜マリノスと横浜市教育委員会は、5月に食教育を連携して実施する協定を結んだ。これを受けて横浜マリノスが1996年から実施してきたサッカーの巡回指導に加えて、専属管理栄養士の橋本さんを中心にした食教育教室を市内の小・中学校で実施している。中村さんは現在セルティックFCで活躍中の中村俊輔選手の、日産(現・横浜F・マリノス)ジュニアユース時代のエピソードを披露。「彼はプレーはうまいが、体が小さいとコーチに言われてきた。しかし食事面も含めて自分で努力して取り組んだ結果、毎年15センチずつ身長が伸びた」と食事の大切さを強調し、参加者たちも熱心に耳を傾けていた。
またフランス料理店「霧笛桜」のシェフを務める今平さんは、小学校で子どもたちと一緒に調理実習を行う活動を続けている。「ひとりはみんなのために、みんなはひとりのために。このテーマを料理を通じて実現したい」と願いを込める今平さん。調理実習に参加した子どもから、「今日作った料理をお父さん、お母さんに食べさせてあげたい」という手紙をもらい涙したことも。「食事は家族に愛情を伝える手段です」と会場に呼びかけた。
スポーツ界と料理界を代表して…横浜マリノス株式会社取締役の中村勝則さん(左)と横浜ガストロノミ協議会委員長の今平茂さん(右)
そして「小、中、高校生の親代表で来ました」と宣言した長島さんは、「プロと呼ばれる方々に、食教育の現場にどんどん参加していただきたい」と話した。子どもたちにとって憧れのスポーツ選手など、トップランナーとして活躍している人たちの言葉は何よりも説得力があるようだ。「食」のアドバイザー、そして一人の母親でもある長島さん。「アスリートの母になれるように頑張ります!」と力をこめた。
竹内さんは地域でのふれあいを通して健康づくりの普及活動を行う、食生活等改善推進員会に携わり14年目になる。保土ヶ谷区ではお弁当に着目した食教育に取り組み、お弁当レシピを広く公募。それを基にレシピ集を作成し、保護者向けの講習会を実施した。竹内さんは、「今後は中学生に直接お弁当の作り方を学んでいただく機会を作りたい」と抱負を話した。
保護者の目線から食教育を見つめる、保土ヶ谷区食生活等改善推進員会副会長の竹内靜さん(左)と、横浜市PTA連絡協議会副会長の長島由佳さん(右)
生きるために欠かせない食事。当たり前のことが一番大切ということが、あらためて心に響いた時間だった。私たち一人一人が食について意識することが、子どもたちの未来を支えることにつながる。