vol.72「石垣島合宿」
2月24日から沖縄県石垣市に来ています。石垣島で日本陸上競技連盟の男子短距離の強化合宿にコーチとして参加しています。2016年はリオ・オリンピックの年です。このオリンピックに向けた強化練習を温暖な地で集中的に行うのが目的です。このコラムが皆さんの目に触れる時にはもう横浜に帰っていますが、合宿の休日に海からの風にあたりながら書いています。
3月1日にこの合宿の練習を公開したので、ニュースなどでご覧になられた方もいらっしゃると思います。公開練習では40社50名以上のテレビ、新聞社、専門誌、雑誌社などの取材が入りました。さすがにオリンピックイヤーは注目度が違いますね。
石垣島入りした24日は雨でした。そして思ったより寒い。練習時はいつも雨が止んでくれたので練習に支障はありませんでしたが、気温は少し低かったです。合宿に入って数日はそのような天候が続きましたが、合宿中盤になって天気も回復してきました。今日の休日が最高の練習日和です。明日からもよい天候のようなので残り数日、よい練習が消化できそうです。
男子短距離は石垣島で合宿をするのは初めてです。多少風は強いですが、十分な練習環境です。そして、石垣島のみなさんのサポートもありがたく、小学生の陸上クラブ、石垣島アスリートクラブの歓迎を受け、選手たちも気持ちよく練習ができています。
この合宿の目的は、日本の男子短距離トップ選手が温暖な地で合同の強化練習をすることと4×100mリレーと4×400mリレーの専門的な練習を行うことです。特に4×100mリレーは日本式バトンパスワークを習得してもらうこととその精度を高めていくことが目的です。リレーチームは所属先がそれぞれ違うので、こうした合宿を利用しないとパスワークの練習ができません。今回の合宿のあとはリオ・オリンピックの代表が決まるまではバトンの練習はできないのです。
リオ・オリンピック代表は日本選手権後にその多くが決まります。4×400mリレーに関してはまだ出場権を獲得していないので、日本選手権後は候補選手として出場権獲得後正式に日本代表となります。4×100mリレーはすでに出場権を獲得しているので、日本選手権後に選手が決定します。
マラソンでオリンピックの代表をどう決めているのか理解が難しいと感じているかたもいらっしゃると思いますが、そのほかの代表選考もなかなかややこしいものです。
男子短距離のみですが、整理してみましょう。
まず、日本陸上競技連盟が設定した派遣標準記録というものがあります、これは世界ランク12位相当の記録です。
100m 10秒01 突破者0名
200m 20秒28 突破者2名(藤光謙司20秒13、高瀬慧20秒14)
400m 44秒89 突破者0名
そして、オリンピックの参加標準記録があります。
100m 10秒16 突破者2名(桐生 祥秀10秒09、高瀬 慧10秒09)
200m 20秒40 突破者4名(藤光 謙司20秒13、高瀬 慧20秒14、ハキーム サニブラウン20秒32、飯塚 翔太20秒42、)
400m 45秒50 突破者1名(金丸 祐三45秒22)
各種目3名まで出場できます。
6月24日から26日に開催される日本選手権で選手の多くは決まるのですが、レース後すぐの内定条件は
①派遣標準記録を突破して日本選手権8位入賞の日本人最上位
②参加標準を突破して日本選手権優勝
です。
その次に日本選手権後に選考されるのは以下となります。
①派遣標準記録を突破して日本選手権8位入賞
②参加標準記録を突破して日本選手権3位以内
③参加標準記録を突破して2016年織田記念、静岡国際、川崎ゴールデングランプリの日本人トップ(日本選手権には出場しなければならない)
④参加標準記録を突破して強化委員会が推薦する競技者
個人種目はこのような感じです。リレー種目はリレーの特性を考慮して選考されます。リレーの選手ですが、ただ単に速い選手を4人集めればいいという簡単なものではないので、選手の適性やバトンパスワークなど総合的に考えて選考します。ただし、強化委員会が好き勝手に選んでいるわけではありません。厳正なる審査がなされます。選手選考は大変デリケートな問題です。選手、コーチそして世間に混乱をきたすことのないようにしなければなりません。マラソンは我々のところの日本選手権にあたる選考レースが3つもあるのでややこしくなるのですよね。おっと、これ以上は…。
これからシーズンに入っていきますが、リオ・オリンピックの代表選考がどのように決まっていくのか少しお分かりになったかと思います。
オリンピックイヤーで陸上界も盛り上がっていくと思います。ぜひ注目してください!!
1969年5月8日生まれ、横浜市南区出身。
元オリンピック陸上競技選手。横浜市立南高等学校から法政大学経済学部、富士通、筑波大学大学院で競技生活を送る。
現在は法政大学スポーツ健康学部教授 コーチ学(スポーツ心理学) 同大学陸上競技部監督 法政アスリート倶楽部代表 日本陸上競技連盟強化委員会ディレクター兼オリンピック強化コーチ(ハードル)。
2007年から日本陸上競技連盟強化委員会の男子短距離部長を務め、世界選手権(2007大阪、2009ベルリン、2011大邱、2015北京、2019ドーハ)、オリンピック(2008北京、2012ロンドン)に帯同。
また、2014年には日本陸上競技連盟の男子短距離部長へ復帰し2016リオデジャネイロオリンピックに帯同し、日本短距離男子チームの責任者として同行した。
1990年代を代表する陸上競技者として活躍。1996年のアトランタと2000年のシドニーオリンピックに出場、世界室内陸上競技選手権大会400mで銅メダルを獲得するなどの活躍を見せた。元400mハードル日本記録保持者。
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