
Vol.151「春の甲子園・東京六大学対校陸上競技大会」
第97回選抜高等学校野球大会は、横浜高校が2006年の第78回大会以来の19年ぶり4回目の優勝を果たしてくれました。横浜市民にとって春から嬉しいニュースでしたね。
私にとっても、ダッシュVol.149で紹介させていただいた、私がお世話になった先生のご子息が出場していたので、今大会は特に注目していました。陸上競技をやっていたこともあって、足も速く、肩も強い。そして守備も鉄壁でした。楽しませていただきました。
走攻守とも言いますが、野球選手にとって足が速いのは大きな武器です。プロ野球のチームでも陸上競技の専門家が指導者として迎えられることも少なくありません。実際にプロ野球選手になってしまった陸上短距離選手もいます。
日本ハムファイターズで侍ジャパンでも活躍する五十幡亮汰選手は、100mの中学チャンピオンです。その当時、陸上競技短距離のサニブラウン ハキーム選手(東レ)と走っていたようでいつもその話題になります。
うちの大学でも、陸上競技部のある学生にプロ野球のスカウトがきたことがあります。走塁専門なのでしょうが、需要があるのですね。
かなり前の話ですが、盗塁のことで、元ヤクルトの名捕手古田敦也さんに、お話を伺ったことがあります。私は、速く走るには、「重心を進塁方向に向けた方が良いのでは」とか、「リードするときに後ろでクロスするのはなぜなのか」などと速く走ることばかり考えて勝手なことを話していましたら、「けん制がくるかもしれないから、戻ることも考えないと」とおっしゃられ、丁寧にいろいろと教えていただきました。「ああ、自分は前に進むことしか考えていなかった」と自分の浅はかさに気づかされたことをいつも思い出します。
盗塁は、投手の動きや癖を見抜き、絶妙なタイミングでスタートを切らねばなりません。我々のように音が鳴ったらバーンと前だけ見てという訳ではありません。ご指摘をいただいてからは野球を見る目が変わりました。今ならもう少しましなことを言えそうです。古田さん、ありがとうございました。
野球の話しはこれくらいにしまして、4月5日(土)陸上競技の東京六大学対校戦が日吉の慶応義塾大学で開催されました。いよいよ陸上競技のトラックシーズンの開幕です。
この大会は、今までの陸上競技の大会にはない画期的な大会を目指しています。もちろん通常の競技を実施するのですが、観せるということにも重点を置いています。陸上競技の大会を多くの方が楽しめるようにということをコンセプトとしています。
観客席は六大学ごとに応援席が決められていて、各大学の最前列には大学の応援団、リーダー部、ブラスバンドが構えています。応援のプロフェッショナルが楽器や太鼓で自分の大学を応援します。時にはほかの大学にもエールを送ります。
陸上競技の大会では、通常、音のなるものは禁止されています。スタート時など、太鼓などたたかれてしまっては、スタートを切れませんし、集中できませんからね。
今大会では、鳴り物OKなのですが、スタート時などはもちろん静かになります。レースが始まる直前までは、ドンドンと太鼓をたたいて、音楽を鳴らし、歌い、エールをおくりますが、スタート前にはシーンと静まり返ります。そして、号砲と同時に大声援となります。
また、子どもたちが選手たちと触れ合うということも実施しました。ゴールした選手を並んで迎えたり、エスコートしてくれたりしました。
大会には、協賛企業を多く募って、企業とのつながりも形成しています。スポンサー様には種目に命名権が与えられて、好きな名前を付けることができます。商品名を入れて宣伝しても構いません。種目スポンサーとして商品もご提供いただきました。
ほかにも様々な付加価値をつけ、新たな陸上競技大会として、これからの競技会の先駆的な大会としていくことを目指しています。
この大会は学生が中心となって運営しています。学生の行動力、発想力は無限であり、これからも彼らとともに陸上競技会のみならず、興行としてのスポーツ競技会発展のために、様々なことに挑戦し、発信、提案できればと考えています。
野球はスポーツの興行としては、完成形に近いと思います。野球の試合をお手本に陸上競技の大会も、選手、指導者や観客、そして関係している全員が楽しめる大会にしていきたいですね。
1969年5月8日生まれ、横浜市南区出身。
元オリンピック陸上競技選手。横浜市立南高等学校から法政大学経済学部、富士通、筑波大学大学院で競技生活を送る。
現在は法政大学スポーツ健康学部教授 コーチ学(スポーツ心理学) 同大学陸上競技部監督 法政アスリート倶楽部代表 日本陸上競技連盟強化委員会ディレクター兼オリンピック強化コーチ(ハードル)。
2007年から日本陸上競技連盟強化委員会の男子短距離部長を務め、世界選手権(2007大阪、2009ベルリン、2011大邱、2015北京、2019ドーハ)、オリンピック(2008北京、2012ロンドン)に帯同。
また、2014年には日本陸上競技連盟の男子短距離部長へ復帰し2016リオデジャネイロオリンピックに帯同し、日本短距離男子チームの責任者として同行した。
1990年代を代表する陸上競技者として活躍。1996年のアトランタと2000年のシドニーオリンピックに出場、世界室内陸上競技選手権大会400mで銅メダルを獲得するなどの活躍を見せた。元400mハードル日本記録保持者。
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