vol.144「日本室内陸上」
令和6年2月3日(土)から4日(日)に大阪城ホールで開催された「第107回日本陸上競技選手権大会日本室内陸上競技大阪大会」に行ってきました。これは、室内で開催される日本選手権です。この時期に温かい室内で質の高いレースができるのは貴重です。
この大会は、日本のトップアスリートだけでなく、いろいろなジュニアのカテゴリーがあります。日本選手権のカテゴリーに年齢制限はありませんが、ジュニアはU16、U18 、U20という対象の年齢が決められています。
U16は、中学1年生から中学3年生の早生まれまで、U18が中学3年生の4月から12月生まれまでと高校1年生、そして高校2年生の早生まれまで、U20が高校2年生の4月から12月生まれまでと高校3年生、そして大学1年生の早生まれまでです(表参照)。
(公益財団法人大阪陸上競技協会HPより参照)
インターハイや全日本中学は学年で分けられていますので、早生まれの不利がありましたが、この大会ではそれが少し解消されています。逆に今回は4月生まれが不利かもしれませんが、高校生が大学生に挑戦したり、中学3年生が高校生に挑戦したりできるのは面白いですよね。
室内競技会なので実施種目は限定されています。トラック種目は60mと60mハードル、フィールド種目は走高跳、走幅跳、三段跳、棒高跳の合計6種目で、ハードルは年齢カテゴリーで高さが異なります。
男子はU16のハードルの高さは、91.4㎝です。これは一般男子の400mハードルの高さと同じです。U18とU20は高さ99.1㎝で、ハードル間は、一般男子と同じ9.14mとなっています。ちなみに一般の110mハードルのハードルの高さは106.7㎝です。
女子は、U16が高さ76.2㎝で一般女子の400mハードルの高さで、ハードル間は8m、U18が高さ76.2㎝、ハードル間8.5mです。ハードル間8.5mは一般女子と同じです。U20は高さ83.8㎝で一般女子と同じ規格です。
ハードルの高さ106.7㎝は、フィートにすると3.5フィート(106.68㎝)です。なぜ3.5フィートになったかというと、確実な根拠は分からないのですが、イギリスで使用していた牧場の柵が、4フィートから3フィートで、その中間をとったのではと言われています。1864年にはすでにこの高さで競技が開催されていたようです。
ジュニア規格のハードルは、U18、U20が99.1㎝で3.25フィート(99.06㎝)で、U16が91.4㎝で3フィート(91.44㎝)です。これらは、発育発達を考慮した規格となっています。
そのU16男子60mハードルでは、横浜市立港南中学3年生の髙橋和希くんが8秒17の記録で見事に優勝しました。髙橋くんは早生まれの3年生です。そして同種目3位には横浜中川西中学3年の槻田蓮くんが入りました。二人とも今後が楽しみです。期待したいですね。
港南中学校は、2023年の神奈川県中学校陸上競技大会の男女総合で2位に入っている強豪校です。港南中学校は私が中学生の時も陸上競技部がとても強かったと記憶しています。当時は、万騎が原中学校や田奈中学校も強かったですね。
良い指導者がいたり、環境が良かったりするのでしょう。良い指導者や、環境の良い学校の部活動は、特化して強化していくのもよいのではないでしょうか。たとえば、この学校は陸上競技部が強い、サッカーが強い、吹奏楽が名門…とか。
指導者の存在はすごく大きいと思います。部活動の指導者は教員が多いと思います。しかし、教員は、人材育成と組織活性化のために学校の異動が何年かで起きてしまいます。せっかく部活動を強くしても、異動にともない学校は弱くなってしまうことがあります。そして、異動した先の学校では、部を一から強くしていかなければならないこともあるでしょう。その先生に教えてもらいたいから学校を選択したという話はよく聞きます。しかし、先生が異動してしまい…なんてこともよく聞く話です。
異動による効果もよく理解できますが、戦略的に異動を考えることが特色のある学校づくりにつながるのではないでしょうか。すでにそのようなことをしているところや、専門の指導者をうまく回すことで、人事異動を活用できているところもあるようです。
近年、文化的活動も含めて、部活動の外部委託や指導者不足などが問題となっていますが、優秀な教員の指導者はたくさんいます。戦略的な異動によって、部活動問題や指導者問題は多少解決していくかもしれません。必ずしも外部委託に、ということはなくなるのではないでしょうか。学区の柔軟性を高めていくことも良いかもしれません。まったくの私見ですが。
少子化や学校の学費無償化が進むことで、公立学校は岐路に立たされています。多様で特色のある学校づくりのためにもぜひ検討していただきたいですね。
1969年5月8日生まれ、横浜市南区出身。
元オリンピック陸上競技選手。横浜市立南高等学校から法政大学経済学部、富士通、筑波大学大学院で競技生活を送る。
現在は法政大学スポーツ健康学部教授 コーチ学(スポーツ心理学) 同大学陸上競技部監督 法政アスリート倶楽部代表 日本陸上競技連盟強化委員会ディレクター兼オリンピック強化コーチ(ハードル)。
2007年から日本陸上競技連盟強化委員会の男子短距離部長を務め、世界選手権(2007大阪、2009ベルリン、2011大邱、2015北京、2019ドーハ)、オリンピック(2008北京、2012ロンドン)に帯同。
また、2014年には日本陸上競技連盟の男子短距離部長へ復帰し2016リオデジャネイロオリンピックに帯同し、日本短距離男子チームの責任者として同行した。
1990年代を代表する陸上競技者として活躍。1996年のアトランタと2000年のシドニーオリンピックに出場、世界室内陸上競技選手権大会400mで銅メダルを獲得するなどの活躍を見せた。元400mハードル日本記録保持者。
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