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元オリンピック陸上選手苅部俊二のダッシュ

vol.108 「トラック改修」

 2020年東京オリンピックに向けて、新国立競技場では改修工事が進められていますが、現在、法政大学でも陸上競技場の改修工事を行っています。
 新国立競技場の工期は2016年12月から2019年11月までの予定なので3年近くかかりますが、ウチの大学の工期は2018年12月1日から2019年3月末日の4カ月です。それでも大掛かりな工事です。昨年は日産スタジアムも会場の改修工事をしていましたね。

 グランドを使用できないので、4か月の間、大学内のラグビー場やホッケー場を使用したり、近隣の陸上競技場を使用したりして練習をしています。

 ラグビー場では即席の300mトラックを作成して練習をしています。直線を60mとして曲線を90mにします。作り方は簡単です。使用するのはマーカーとメジャーだけです。マーカーは曲線10mおきくらいに置きます。

 まず、ゴールを設定し、そこからラグビー場のラインを利用して60mの直線をとります。その60mのところから直角をとり57mの地点を作った後、その半分の28m50(28m448)の地点から半径28m50(28m5×π(3.14)≒89m50)の半円を書きます。
 これで300mトラックの半分ができます。同じようにもう半周作成します。即席トラックなのでこれで十分です。このトラックの作成方法は単心円法と言います。最もポピュラーなトラックの作成方法です。

 同じ方法で400mトラックを作成するなら80mの直線で半径38m(37m998)の曲線、200mトラックは32m直線、21m45(21m446)の曲線となります。
 縁石があると半径は少し変わってきますが、縁石は作れませんし、簡単に練習に使用するのであれば誤差範囲でしょう。
 ちなみに縁石のある400mトラックでは、半径37m898です。どこかでトラックを作成しなければならない状況になった時の(あまりないですかね)参考にしてください。

 また、公共の競技場で練習をさせていただくことが多いのですが、競技場によっては1、2レーン使用禁止という場合があります。
 1、2レーンは使用頻度が飛び抜けて高いので消耗が激しいためだと思います。
 1レーンが使用できなくても、400mくらいまでの距離でしたらレーン毎で走れるので問題ないのですが、長距離となると距離が変わってきてしまうので、なかなか不便です。

 一般的な1周400mの競技場は直線が80m、曲線が120mで、レーン幅は1m22(1m25の競技場もあります)です。1レーンと2レーンでみると、ちょうど1周すると、1レーンの距離は400m、2レーンは407m04ほどあります。407m04はラインから20センチのところで算出しています。

3レーンからは1レーンにつき約7m67ずつ距離が増えていきます。つまり、
 1レーン 400m
 2レーン 407m04
 3レーン 414m70
 4レーン 422m37
 5レーン 430m03
 6レーン 437m70
 7レーン 445m37
 8レーン 453m04
 9レーン 460m70
 大体ですが、こんな感じになります。レーン幅が1m25センチですと、また距離が変わってきます。

 1、2レーンが使用できなくて3レーンで5000mをやるとき、12周すると4976m40となります(本来は12周半)。あと23m60進めば5000mとなります。24周して、47m20進めば10000mです(本来は25周)。もしくはその距離後ろからスタートすればよいのです。ラップタイムをとる位置がずれていくので面倒ですが、レーン毎の距離の差を覚えておけばどこでも計算できますね。

 とりあえず、レーン幅1m22では、
  1レーンと2レーンで7m04(半周で3m52)
  2レーン以降    7m67(半周で3m83)ずつ

 レーン幅1m25では
  1レーンと2レーンで7m23(半周で3m62)
  2レーン以降    7m85(半周で3m93)ずつ

 と覚えていればいいと思います(端数があるので多少ずれます)。私は短距離の練習が主なので、1、2レーンでは7m少しくらい、それ以降は7m50くらいずつでやってしまっています。細かい数値は誤差範囲ということで。

 長い距離となると距離がだいぶ変わってきますから、その競技場のレーン幅をみておくとよいと思います。競技場に掲示してあると思います。親切な競技場だと1周の長さがレーン毎に書いてあります。

 競技場が普段の通りに使用できなくても練習は可能です。競技場のルールを守って使用しましょう。

苅部俊二 プロフィール

1969年5月8日生まれ、横浜市南区出身。

元オリンピック陸上競技選手。横浜市立南高等学校から法政大学経済学部、富士通、筑波大学大学院で競技生活を送る。

現在は法政大学スポーツ健康学部教授 コーチ学(スポーツ心理学) 同大学陸上競技部監督 法政アスリート倶楽部代表 日本陸上競技連盟強化委員会ディレクター兼オリンピック強化コーチ(ハードル)。

2007年から日本陸上競技連盟強化委員会の男子短距離部長を務め、世界選手権(2007大阪、2009ベルリン、2011大邱、2015北京、2019ドーハ)、オリンピック(2008北京、2012ロンドン)に帯同。

また、2014年には日本陸上競技連盟の男子短距離部長へ復帰し2016リオデジャネイロオリンピックに帯同し、日本短距離男子チームの責任者として同行した。

1990年代を代表する陸上競技者として活躍。1996年のアトランタと2000年のシドニーオリンピックに出場、世界室内陸上競技選手権大会400mで銅メダルを獲得するなどの活躍を見せた。元400mハードル日本記録保持者。

ブログ

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