vol.134「日本選手権2022」
6月9日(木)から12日(日)大阪のヤンマースタジアム長居で、第106回日本陸上競技選手権大会が開催されました。この大会は、文字通り陸上競技の日本トップを決める大会ですが、この夏7月15日(金)から24日(日)アメリカオレゴン州で開催される第28回世界陸上競技選手権大会の日本代表選考会も兼ねています。
これまでにマラソンで男女3名ずつ、20キロ競歩男子4名女子2名、35キロ競歩男子3名女子1名の16名が、すでに日本代表として決定しています。
この大会で内定するのは、日本選手権3位以内に入賞し、世界選手権参加標準記録を突破した人になります。すでに記録を出していても、この大会で記録を突破しても大丈夫です。
大会は土曜日に少し雨がぱらついたのですが、ほかの日は天候に恵まれ、日本選手権、そして選考会にふさわしいレベルの高い競技会となりました。
そして、今大会で10名が世界選手権に追加内定しました。私の指導する競技者では、男子400mハードルで黒川和樹が48秒89で優勝、すでに参加標準を突破しており、今回さらに記録を更新して優勝しましたので、日本代表に内定しました。
黒川は大会2連覇です。良く頑張ってくれました。そのほかでは、男子3000m障害でホンダの青木涼真選手が2位に入り、標準記録を突破、見事日本代表の座を獲得することができました。青木君は私が監督する大学を卒業した選手で、彼が学生の時、障害の跳び方を指導したことがあります。
すべての日本代表選手がここで決まる訳ではなく、まだ追加があります。6月26日(日)までの記録が有効で、日本選手権3位までに入賞した人は、この期日までに参加標準記録を突破すれば、その時点で追加内定します。
また、参加標準記録を突破しなくても、6月29日(水)に世界陸連(WA)から発表されるワールドランキングで、ターゲットナンバーに入ると出場権が与えられます。こちらも26日までの記録が有効期日です。
ターゲットナンバーとは、その種目の参加人数のことで5レース(試技)を得点化してランキングし、上位からそのターゲットナンバーまでに出場権が与えられるシステムです。
例えば男子100mでいうと、ターゲットナンバーは48です(種目によって異なります)。参加標準記録(10秒05)を突破しているのは32名(1か国3名までで換算しています)、残りは16名となります。
26日までに参加標準記録を突破すれば、その選手に出場権が与えられるため、残りは減っていきます。突破していない人数をランキングで拾っていくわけです。現在日本では、桐生祥秀選手(日本生命)がワールドランキング41位で、ターゲットナンバー内にランクされています。日本選手権男子100mで優勝したサニブラウン選手は、10秒04を日本選手権でマークしていますので既に内定しています。
これから26日までに世界でたくさんの大会が開催されますので、ターゲットナンバー内に今ランクされているからといって、世界選手権に出場できる保証はありません。ですから、標準記録を突破していないターゲットナンバーギリギリの選手は、26日までになるべくグレードの高い競技会(グレードが高いとボーナスポイントが付きます)に参加し、ポイントを稼がなければなりません。
ややこしいので図にしました。少し簡易的にしています。
日本国内でも、26日までに記録突破をするための大会が用意されています。22日(水)には北海道で中距離が、26日には鳥取県布勢で短距離とスプリントハードルが、最後の記録挑戦の場となります。
私の指導する選手でも、男子400mハードルで3位に入った豊田将樹選手(富士通)が、フィンランドの大会へポイントを稼ぎに行きます。フィンランドの大会はグレードが高く、かなりのポイントを獲得(日本選手権と同等)ができます。豊田選手の現在のワールドランキングは39位(日本選手権は未加算)で、ターゲットナンバー40とギリギリです。
グレードの高い大会とは、世界陸連(WA)が決めており、オリンピックや世界選手権を筆頭に、アジアレベル、国際大会、国内選手権、その辺の記録会など、大会の規模などによりグレード分けがされており、グレードの高い大会ほどそのレースの記録に順位ポイントが加算されます。
横浜市関係者では、男子棒高跳で5m60を跳んで日本選手権に優勝した江島雅紀選手(富士通)が、世界選手権代表を狙います。江島選手は神奈川区出身で、横浜市立錦台中学校卒、県立荏田高校卒で日大を経て富士通で競技を続けています。
江島選手はまだ参加標準記録(5m80)を突破できていません。棒高跳のターゲットナンバーは32、江島選手は日本選手権前までのワールドランキングは33位です。今回の優勝でポイントは上がり、ターゲットナンバー内に入ってくると予想されますが、今はギリギリアウトのところにいます。待っていてもしょうがないので、おそらくどこかで参加標準を狙う、もしくは、ポイントを上げに行くことになるでしょう。
私はハードルのコーチとしてオレゴンに行くことが決まっています。ハマスポコラムで、ハードル選手たちと江島選手の活躍をぜひ書きたい。頑張ってほしいですね!!
1969年5月8日生まれ、横浜市南区出身。
元オリンピック陸上競技選手。横浜市立南高等学校から法政大学経済学部、富士通、筑波大学大学院で競技生活を送る。
現在は法政大学スポーツ健康学部教授 コーチ学(スポーツ心理学) 同大学陸上競技部監督 法政アスリート倶楽部代表 日本陸上競技連盟強化委員会ディレクター兼オリンピック強化コーチ(ハードル)。
2007年から日本陸上競技連盟強化委員会の男子短距離部長を務め、世界選手権(2007大阪、2009ベルリン、2011大邱、2015北京、2019ドーハ)、オリンピック(2008北京、2012ロンドン)に帯同。
また、2014年には日本陸上競技連盟の男子短距離部長へ復帰し2016リオデジャネイロオリンピックに帯同し、日本短距離男子チームの責任者として同行した。
1990年代を代表する陸上競技者として活躍。1996年のアトランタと2000年のシドニーオリンピックに出場、世界室内陸上競技選手権大会400mで銅メダルを獲得するなどの活躍を見せた。元400mハードル日本記録保持者。
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