vol.131「幼少期のスポーツと身長の関係」
12月、私が事務局長を務める総合型地域スポーツクラブが1年10か月ぶりに再開しました。昨年からのコロナ禍の影響により、多くのスポーツクラブ、スポーツ団体が活動休止となっており本クラブも活動休止となっていましたが、ようやく再開にこぎつけました。
横浜市の公共スポーツ施設も多くの施設で利用が再開されています。感染防止対策はしっかりと、ですね。
横浜市の公共スポーツ施設を調べるにはハマスポのページが大変便利です。ぜひ活用してください!!
横浜市内公共スポーツ施設一覧 / 横浜スポーツ情報サイト[ハマスポ](hamaspo.com)
総合型地域スポーツクラブ・活動のようす
最近、発育発達研究に幼少時のスポーツ活動がアスリートの身長の発育にどう影響したのかという論文(「日本人アスリートの発育にスポーツが及ぼした影響:どのスポーツが身長発育を促進するか」大澤 清二, 下田 敦子,2021)が掲載され、興味深かったので紹介します。
「幼少時に筋肉をつけすぎると身長が伸びない」や「このスポーツは身長が伸びない」、「バレーボールやバスケットをやると身長が伸びる」などと一般的には聞いたことがあると思いますが、スポーツ経験が身長にどう影響するのか興味のあるところです。
この論文のデータ自体は少し古いもの(1980年~1990年)なのですが、20種目以上5,500人弱の日本のアスリートを対象に6歳児からその後17歳までに、どれくらい身長が伸びたかを調査しています。
女子(6歳から17歳まで)の身長の日本人総発育量平均値は43.12cm、アスリートの総発育量平均値は43.6cmで、アスリート群が大きくなっていました。これは、競技に限らず、アスリート群の女子の身長発育にスポーツが影響していることを示しています。
男子はスポーツの影響はそれほど受けていないようで、日本人平均(54.97cm)の発育量よりも低い値(54.6cm)が示されています。つまり、男子はスポーツをしているから身長が伸びるとは言えなさそうです。
スポーツ別でみると、男子はバスケットボール、テニス、バレーボール、ハンドボールが、女子はバスケットボール、陸上競技、ハンドボール、体操(体操競技ではなく)が総発育量の大きい競技でした。
男女ともにバスケットボール(総発育量平均値 男子:56.0cm、女子:44.2cm)は日本人平均値を上回っており、バスケットボールは身長を高くする競技なのかもしれません。
単位(cm)
大澤・下田,発育発達研究(2021)より作成
そのほか、総発育量が比較的大きい種目は、男子が野外活動、水泳、弓道、卓球で、女子がバレーボール、ダンス、サッカー、弓道、野外活動でした。ほかにも発育が平均よりも高い種目はいくつかありますが大きいものをここでは挙げています。
野球やサッカー(ともに男子)は、アスリートの中では日本人の総発育量平均値よりやや小さいようです。総発育量が小さかった競技は、男子は、スキー、バドミントン、体操競技、柔道で、女子が、柔道、剣道、スキー、バドミントンでした。
「幼少期にスポーツをしたら身長は伸びるのか」については、男子はスポーツをしていたからといって必ずしも大きく伸びるとは言えないようです。しかし、競技によっては伸びているものあまり伸びていないものがあり、多少の影響はあるのかもしれません。女子のほうが男子よりはスポーツの影響を受ける可能性が示唆されています。
男子はスポーツをしていなくても身体を動かしている可能性があるからでしょうか。女子はスポーツをしていない人は、運動をあまりしない人が多いかも知れませんから、幼少時の運動は身長の発育に影響しているのかもしれませんね。偏見になってしまいます?
身長は遺伝的影響を強く受けます。遺伝的な影響はどれくらいかということに関しては様々な研究がされており、3割程度という研究者から8割という研究者など一貫していません。残りは環境的な影響を受けています。身長の発育に影響を与える環境的な要因は栄養や運動、睡眠などが挙げられています。
今回紹介した論文の総発育量は6歳から17歳になるまでにどれくらい身長が伸びたかを調べたもので、6歳児時点のもともとの身長を0として算出しています。決して小さい人がその競技をしているということではありません。
論文では、もともとの身長も考慮され、分類がなされています。
女子の柔道の総発育量が低くなってしまったのは対象人数が少ないことと6歳児時点の実際の平均身長がとびぬけて高かったことが影響しています。
対象競技の人数にもばらつきがありますし、あくまで平均値でありますから誤差(±4cmから6cm弱)もあります。ですから、この結果から「この競技はやりたくない!」とかならないようにお願いします。
この論文の結果をどう考えたらよいのかは意見の分かれるところと思いますが、このような調査は興味深いものですね。
1969年5月8日生まれ、横浜市南区出身。
元オリンピック陸上競技選手。横浜市立南高等学校から法政大学経済学部、富士通、筑波大学大学院で競技生活を送る。
現在は法政大学スポーツ健康学部教授 コーチ学(スポーツ心理学) 同大学陸上競技部監督 法政アスリート倶楽部代表 日本陸上競技連盟強化委員会ディレクター兼オリンピック強化コーチ(ハードル)。
2007年から日本陸上競技連盟強化委員会の男子短距離部長を務め、世界選手権(2007大阪、2009ベルリン、2011大邱、2015北京、2019ドーハ)、オリンピック(2008北京、2012ロンドン)に帯同。
また、2014年には日本陸上競技連盟の男子短距離部長へ復帰し2016リオデジャネイロオリンピックに帯同し、日本短距離男子チームの責任者として同行した。
1990年代を代表する陸上競技者として活躍。1996年のアトランタと2000年のシドニーオリンピックに出場、世界室内陸上競技選手権大会400mで銅メダルを獲得するなどの活躍を見せた。元400mハードル日本記録保持者。
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