vol.124「日本グランプリシリーズ」
新型コロナウイルス感染症の影響により、停滞していたスポーツ界も完全ではありませんがようやく動き出し、陸上競技でも大会が開催されるようになってきました。8月23日(日)には国立競技場でセイコーゴールデングランプリが開催されました。この大会は本来、海外のトップアスリートを招へいし、世界的にもレベルの高い大会だったのですが、今年は外国人アスリートの入国ができないため、日本人と一部の日本在住の外国籍アスリートが参加する大会となりました。
【写真1】
私は、新しくできた国立競技場の中に、初めて入ることができました。立派な競技場です。驚いたのはスタンドの模様で、無観客であったスタンドにまるで観客がいるかのような錯覚を覚えました。【写真1】を見ても観客がいるように見えますよね。
また、スタンドの空調も良かったです。【写真2】のような大きな機械から涼しい風が出ていて快適です。2018年にドーハで開催された世界選手権にも空調が整備されていましたが、そちらは寒いくらいでしたから、国立競技場の空調はなかなか高機能なのだろうと思います。
【写真2】
国立競技場のトラック(走路)は、イタリア・モンド社の高速トラックが採用されています。走った選手のトラックの感触については、おおむね好意的でしたが、反発が強くて身体への負担が大きいという声も聞かれました。今までのものと構造を変え、高速トラックでありつつも脚の負担を軽減していると発表していますので、慣れないと難しいのかもしれませんね。
10月8日(木)世界陸連(WA)のセバスチャン・コー会長が国立競技場を視察されました。コー会長の新国立競技場への評価は非常に高く、オリンピック後は、世界陸上を開催してほしいとコメントしてくれました。さらに、サブトラックも残してほしいと。個人的には実現してほしいです。
10月1日(木)から3日(土)には新潟で日本選手権が開催されました。
日本選手権は本来6月に開催される予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響により延期されていました。注目の男子100mは桐生祥秀選手(日本生命)が、今季好調ケンブリッジ飛鳥選手(ナイキ)を僅差で破り、10秒27で優勝しました。記録は低調に思えるかもしれませんが、気温も低く、記録を出せる条件ではなかったと思います。なにより日本選手権は勝つことが大事です。
横浜市ゆかりの選手では、男子1500mで館澤亨次選手(横浜DeNA)が3分41秒32で2年ぶりの優勝を果たしました。女子400mHではイブラヒム愛紗選手(札幌国際大)が56秒50の好記録で初優勝しました。館澤選手は、埼玉県の高校に進学しましたが横浜市立中山中学校出身で、イブラヒム選手は磯子高校出身です。今後の活躍に期待したいですね。
まだまだ、新型コロナウイルス感染症の影響は大きく、大会運営は、慎重に行われ、選手やスタッフは、2週間前から検温と自覚症状について、専用の携帯アプリに毎日記入し、そのアプリから入場時に機械で読み取り、確認を受けることで、はじめて入場が可能となります。もちろん事前にIDカードを申請し、認められた人しか入ることはできません。接触確認アプリのインストールも求められます。大会当日の入場時はモニターを利用した検温を実施し、IDにシールが張られます。観客は新潟在住の方に限られ、入場時の消毒、検温が行われます。
日本選手権も観客が少なく、少し寂しいスタンドではありましたが、選手たちは素晴らしいパフォーマンスを見せてくれました。また、大会の様子はライブ配信されました。今までライブ配信はあまり普及していませんでしたが、これからは配信が当たり前の時代になるかもしれませんね。
大会の開催には、日本陸上競技連盟をはじめ、開催地の陸上競技協会、審判や補助員の方々、運営に関わる多くの方が大変なご苦労をされています。大会が無事に開催されたこと、感謝の念に堪えません。今年の大会は特別な思いで参加した選手も多かったと思います。
練習ができない時期もあり、大会も中止や延期を余儀なくされたなか、不思議なことに陸上競技界では好記録が連発しています。世界をみても、つい先日10月7日(水)スペインの大会で、男子10000mと女子5000mの世界記録が更新されました。選手たちの溜まった何かが発散したかのようです。この勢いのまま来年を迎えたいものですね。
1969年5月8日生まれ、横浜市南区出身。
元オリンピック陸上競技選手。横浜市立南高等学校から法政大学経済学部、富士通、筑波大学大学院で競技生活を送る。
現在は法政大学スポーツ健康学部教授 コーチ学(スポーツ心理学) 同大学陸上競技部監督 法政アスリート倶楽部代表 日本陸上競技連盟強化委員会ディレクター兼オリンピック強化コーチ(ハードル)。
2007年から日本陸上競技連盟強化委員会の男子短距離部長を務め、世界選手権(2007大阪、2009ベルリン、2011大邱、2015北京、2019ドーハ)、オリンピック(2008北京、2012ロンドン)に帯同。
また、2014年には日本陸上競技連盟の男子短距離部長へ復帰し2016リオデジャネイロオリンピックに帯同し、日本短距離男子チームの責任者として同行した。
1990年代を代表する陸上競技者として活躍。1996年のアトランタと2000年のシドニーオリンピックに出場、世界室内陸上競技選手権大会400mで銅メダルを獲得するなどの活躍を見せた。元400mハードル日本記録保持者。
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