vol.109 「世界リレー」
4月を迎え、トラックシーズンが始まりました。
私たち法政大学は、東京六大学対抗戦からシーズンインです。東京六大学対抗戦は、日吉の慶應義塾大学で開催され、好天にも恵まれ良い大会となりました。ちなみにギリギリでしたが、法政大学が早稲田大学を抑え、総合優勝を果たしました。
さて、来月5月11日(土)から12日(日)まで、横浜国際総合競技場(日産スタジアム)で世界リレー選手権が開催されます。今回は世界リレーの見どころを紹介します。
世界リレー選手権は国際陸上競技連盟が主催するリレーの世界選手権で、世界のトップスプリンターが国の威信をかけてバトンをつなぎます。今回で4回目の大会となり、日本は今までの3大会すべてに参加しています。
大会参加には参加標準記録が設けられていて、4×100mリレーの男子は39秒10、女子が44秒20で、4×400mリレーが男子3分05秒00、女子3分34秒70です。4×100mリレーの女子は参加標準記録を突破していないのですが、自国開催枠で出場できることになりました。
リレーは別の俗称があります。4×100mリレーは4継(よんけい)、4×400mリレーはマイルリレー(合計1600mなので)と呼ばれています。4×200mリレーは8継です。
4×100mリレー、4×400mリレーのほかに、今年のドーハ世界選手権で初めて開催されるミックスリレーや、正式な大会では開催されませんがシャトルハードルリレーも実施される予定で、国別の総合得点も競われます。
4×100mリレーと4×400mリレーでは、この大会の上位10位までに入ると、今年9月にカタール・ドーハで開催される世界選手権の出場権が与えられます。そして、このドーハ世界選手権の上位8位には、2020年東京オリンピックの出場権が与えられることになります。
つまり、この横浜で開催される世界リレー選手権は東京オリンピックにつながる大変重要な大会なのです。近年、世界規模の大会のリレーに出場できるのは16か国と決められています。残りの出場枠は世界ランキングで決まります。
男子4×100mリレーは皆さんもご存知と思いますが、メダルを狙える種目です。2016年リオデジャネイロオリンピックで銀メダル、2017年ロンドン世界選手権でも銅メダルを獲得しており、今回も入賞はほぼ確実でしょう。あとはメダルを獲得したいところですが、ライバルは、2017年世界選手権で金メダルを獲得したイギリス、陸上王国アメリカ、ジャマイカ、そしてアジア王者奪還を狙う中国でしょう。
2018年度世界ランキングトップはイギリスで、37秒61です。ちなみに全員100m9秒台の選手をそろえています。ランキング2位は日本で、37秒85です。ジャマイカは4×100mリレーの世界記録を持っていますが、男子100m世界記録保持者のウサイン・ボルト選手が引退していますので新チームをどのような選手で組むのかにも注目です。ジャマイカは100m自己ベスト9秒69をもつヨハン・ブレイク選手を筆頭に9秒台の選手だけでチームを組むことができます。アメリカも人材豊富で9秒台がごろごろいます。中国も9秒台の選手を2人揃えます。中でも9秒91の記録を持つ蘇炳添は世界選手権でも入賞しています。
この3か国が日本のライバルとなる国です。そして、日本を含めた4強に迫るのがトルコ、フランス、カナダあたりです。し烈なメダル争いになりそうです。
【来日してほしい!世界のトップ選手】
- ●アメリカ
ジャスティン・ガトリン 自己ベスト9秒74(世界歴代5位・20017年世界選手権優勝)
クリスチャン・コールマン 自己ベスト9秒79(世界歴代7位タイ・2017世界選手権2位)
ノア・ライルズ 自己ベスト9秒88(2016年世界U20優勝(21歳の新鋭))
- ●ジャマイカ
ヨハン・ブレイク 自己ベスト9秒69(世界歴代3位・ロンドンオリンピック2位)
- ●カナダ
アンドレ・ドグラス 自己ベスト9秒91(リオオリンピック3位)
- ●中国
蘇炳添 自己ベスト9秒91(アジアタイ記録保持者)
- ●トルコ
ラミル・グリエフ 自己ベスト9秒97(2017年世界選手権200m優勝)
女子4×100mリレーも男子と同じく、アメリカ、ジャマイカ、イギリスの力が抜け出ています。記録は41秒台の戦いです。そこにオランダ、ドイツが絡みます。日本チームには43秒39の日本記録に迫る記録で走ってもらいたいものです。
今年日本女子短距離は、ナショナルリレーチームを編成し、強化しています。日本記録に迫る記録で走れれば決勝に引っかかるかもしれません。また、ランキングで16チーム以内に入る記録も見えてきます。最低でも43秒台に期待したいですね。
【来日してほしい!世界のトップ選手】
- ●アメリカ
トリ・ボウイ 自己ベスト10秒78(2017年世界選手権優勝・リオオリンピック2位)
- ●ジャマイカ
エレイン・トンプソン 自己ベスト10秒70(リオオリンピック100m、200m優勝)
シェリー=アン・フレーザー=プライス 自己ベスト10秒70(北京オリンピック、ロンドンオリンピック優勝)
- ●イギリス
デイナ・アッシャー=スミス 自己ベスト10秒85(20017年世界選手権200m4位)
- ●オランダ
ダフネ・シパーズ 自己ベスト10秒81(2017年世界選手権200m優勝)
日本男子4×400mリレーチームも女子4×100mリレーと同じく厳しい戦いです。優勝争いは普通にやればアメリカ1強です。そこにトリニダートトバコ、イギリス、ベルギーがからみます。ボツアナも力があります。日本が入賞するには3分00秒台が必要です。日本記録は3分00秒76で、決して狙えない記録ではありません。
実はこの日本記録、私が入っているのですが、今の日本のメンバーは私たちのメンバーの個人タイムより良い記録を持っています。もう長く破られない記録になってしまいました。2分台を出して入賞してほしいものです。
【来日してほしい!世界のトップ選手】
- ●アメリカ
マイケル・ノーマン 自己ベスト43秒61(世界歴代6位・2016年世界U20選手権200m優勝(日本人の母を持つ21歳の新鋭))
- ●ボツワナ
アイザック・マクワラ 自己ベスト43秒72(世界歴代9位・2015年世界選手権5位)
バボロキ・テベ 自己ベスト44秒02(2017年世界選手権4位)
- ●南アフリカ
ウェイド・バンニーキルク 自己ベスト43秒03(世界記録保持者・リオオリンピック優勝)
- ●ジャマイカ
スティーブン・ガーディナー 自己ベスト43秒87(2017年世界選手権2位)
アキーム・ブルームフィールド 自己ベスト43秒94(急成長の新鋭)
女子4×400mリレーも日本チームの決勝進出は厳しい状況です。優勝候補は男子と同じアメリカで、圧倒的に強いです。追うのがジャマイカ、イギリス、ナイジェリア、ポーランドなどです。
日本は、日本記録である3分28秒91を出しても決勝進出は難しい位置にいます。ただ、3分28秒を出せばランキングに入る可能性がありますし、10位に食い込む可能性もあります。こちらも日本記録の更新が目標となるでしょう。
【来日してほしい!世界のトップ選手】
- ●アメリカ
アリソン・フェリックス 自己ベスト49秒26(ロンドンオリンピック200m優勝(オリンピックで6個の金メダルをもつスーパースター))
フィリス・フランシス 自己ベスト49秒92(2017年世界選手権優勝)
- ●バハマ
ショーナ・ミラー 自己ベスト48秒97(世界歴代10位・リオオリンピック優勝)
- ●ジャマイカ
シェリカ・ジャクソン 自己ベスト49秒83(リオオリンピック3位)
日本は、男子4×100mリレー以外は、なかなか厳しいレースになることが予想されます。
日本チームはホームの大会ですから多少は有利に働くことが予想されます。それでもぎりぎりの実力です。皆さんの声援が選手の背中を押してくれます。ぜひ日産スタジアムに足を運んで、選手に熱い声援を送ってください。また、名前を挙げたトップ選手が来日するとは限りませんが、世界のトップスプリンターが横浜に集結します。世界の走りを体感してください!!
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IAAF世界リレー2019横浜大会 概要
期日:5月11日(土)~5月12日(日)
場所:横浜国際総合競技場(日産スタジアム) 横浜市港北区小机町3300
種目:9種目(男子3種目、女子3種目、男女混合3種目)
男子3種目(予選・決勝):(1)4x100mR (2)4x200mR (3)4x400mR
女子3種目(予選・決勝):(1)4x100mR (2)4x200mR (3)4x400mR
男女混合3種目(予選・決勝):(1)4x400mR (2)シャトルハードルR (3)2x2x400mR ※(3)は、決勝のみ
チケットについては、大会公式サイトチケット情報でご確認ください。
主催:国際陸上競技連盟
主管:日本陸上競技連盟
共同主管:横浜市
運営協力:神奈川陸上競技協会
大会事務局:【日本陸上競技連盟事務局内】
〒163-0717 東京都新宿区西新宿2-7-1 小田急第一生命ビル17階
1969年5月8日生まれ、横浜市南区出身。
元オリンピック陸上競技選手。横浜市立南高等学校から法政大学経済学部、富士通、筑波大学大学院で競技生活を送る。
現在は法政大学スポーツ健康学部教授 コーチ学(スポーツ心理学) 同大学陸上競技部監督 法政アスリート倶楽部代表 日本陸上競技連盟強化委員会ディレクター兼オリンピック強化コーチ(ハードル)。
2007年から日本陸上競技連盟強化委員会の男子短距離部長を務め、世界選手権(2007大阪、2009ベルリン、2011大邱、2015北京、2019ドーハ)、オリンピック(2008北京、2012ロンドン)に帯同。
また、2014年には日本陸上競技連盟の男子短距離部長へ復帰し2016リオデジャネイロオリンピックに帯同し、日本短距離男子チームの責任者として同行した。
1990年代を代表する陸上競技者として活躍。1996年のアトランタと2000年のシドニーオリンピックに出場、世界室内陸上競技選手権大会400mで銅メダルを獲得するなどの活躍を見せた。元400mハードル日本記録保持者。
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