vol.33「ランニングの生理」
12月2日(日)第32回横浜マラソン大会が開催されました。この大会は山下公園をスタートし、横浜のベイエリアを駆け抜ける横浜の名所を満喫できるコースとして知られています。部門は、ハーフマラソンの部、10キロの部、車いす12.7キロの部があり、参加者は合わせて約1万人(9563人:完走9089人)という規模の市民大会となっています。
各部門優勝者以下となります。
登録ハーフマラソン男子 清谷 公紀(横浜市陸協):1時間7分51秒(3連覇)
登録ハーフマラソン女子 岸 有紗(1994海老名) :1時間24分2秒
一般ハーフ男子 田中 康二(TOPGEAR):1時間10分45秒
一般ハーフ女子 風見 節子(ミツバチRC):1時間23分20秒
10キロ男子 金箱 浩史(横浜ウインズ):31分45秒
10キロ女子 高野 涼夏(白鵬女子高) :35分11秒
車いす男子 伊藤 尚弘 :38分25秒
車いす女子 緑川 まり子 :46分29秒
皆さん、おめでとうございます。いつか私も走りたいですね。
さて、ロードシーズン真っ盛りですが、以前ランニングに関して、動作に関したコラムを書きました。vol.11
今回は、ランニングを続けることによって、身体にどのような変化や効果が表れるのか、ということについてお話したいと思います。
ランニングをする目的は、個々に異なると思います。記録を伸ばしたい、将来はマラソンを目指したいという方もいらっしゃるでしょうし、運動不足解消やダイエットなどを目的とされている方も多いでしょう。
ランニングを続けていると身体には様々な変化が生じます。脂肪の燃焼もその一つです。ランニング、ジョギングを愛好している皆さんが、身体の変化、効果を正しく理解することは、より効率よくその効果を得ることに繋がります。
あまり詳しく書き過ぎると逆に分かりづらくなりますので「知っておくべきランニングの効果」を簡単に紹介します。
図1
1.心肺機能、循環機能(有酸素能力)の向上(図1)
1)心拍出量が増える
心臓が一回に出す血液の量(1回拍出量)が増える。
心臓が大きくなる。
2)酸素利用効率が上がる
肺での酸素の取り込みが多くなる(呼吸機能向上)。
呼吸筋が鍛えられる。
血液がより多くの酸素を運べるようになる(酸素を摂取できる量が増える)。
酸素と二酸化炭素の交換(ガス交換)の効率が上がる。
毛細血管が増える。
⇒持久力が上がります。
3)心拍数減少
酸素利用効率が上がり、拍出量も増えるので心拍数が少なくて済むようになる。
4)血行促進
筋ポンプ作用(図2)により、血液循環が良くなる。
老廃物の除去。
※これは運動時ですね。
図2
2.脂肪燃焼による体脂肪率減少
運動の強度や時間にもよりますが、ランニングによって脂肪が燃焼されます。
また、筋肉量が増えますので多少は基礎代謝が増えると思われます。基礎代謝が増えると脂肪の燃焼効率も上がります。ただしゆっくりとしたランニングでの筋力肥大は太く大きな筋で、ということではないので基礎代謝については、そこまでの大きな増加は望めないと思われます。
※運動強度などは、心拍数などを利用すると良いと思います。vol.23
良く事づくめではありません。デメリットも覚えておきましょう。
1.障害
オーバーユース(使い過ぎ)による慢性的な痛み。特に膝などの関節を痛める方が多いです。
⇒正しいフォームで走ることが関節への余計な負担を減少します。
2.赤血球の破壊
ランニングの着地時にその衝撃によって赤血球が破壊(溶血)されてしまいます。ランニングではスピードや体重などにもよりますが、歩行の数倍の衝撃が足裏にかかってきます。この衝撃によって足裏の毛細血管内の赤血球が壊れてしまいます。さらに発汗によって鉄分も失われがちなのでスポーツ性の貧血(溶血性貧血)になってしまう可能性があります。
⇒十分な栄養補給や正しいシューズの選択が必要です。
ランニングの効果は、運動強度や時間で変わってきます。まずは無理のない強度・時間で行うのが良いと思いますが、より効率よく効果を得るためには強度・時間を目的に合わせて調整していくことが大切です。
また、ランニングは脳や精神にも良い効果があるともいわれています。逆にストレスによって悪い傾向を示すこともありますので、それぞれの目的に合わせて行うのが良いでしょう。
栄養をしっかり摂って、楽しく健康的にランニングを楽しみましょう。
1969年5月8日生まれ、横浜市南区出身。
元オリンピック陸上競技選手。横浜市立南高等学校から法政大学経済学部、富士通、筑波大学大学院で競技生活を送る。
現在は法政大学スポーツ健康学部教授 コーチ学(スポーツ心理学) 同大学陸上競技部監督 法政アスリート倶楽部代表 日本陸上競技連盟強化委員会ディレクター兼オリンピック強化コーチ(ハードル)。
2007年から日本陸上競技連盟強化委員会の男子短距離部長を務め、世界選手権(2007大阪、2009ベルリン、2011大邱、2015北京、2019ドーハ)、オリンピック(2008北京、2012ロンドン)に帯同。
また、2014年には日本陸上競技連盟の男子短距離部長へ復帰し2016リオデジャネイロオリンピックに帯同し、日本短距離男子チームの責任者として同行した。
1990年代を代表する陸上競技者として活躍。1996年のアトランタと2000年のシドニーオリンピックに出場、世界室内陸上競技選手権大会400mで銅メダルを獲得するなどの活躍を見せた。元400mハードル日本記録保持者。
ブログ
※タイトル・本文に記載の人名・団体名は、掲載当時のものであり、閲覧時と異なる場合があります。