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元オリンピック陸上選手苅部俊二のダッシュ

vol.6「ヨーロッパ遠征」

 この夏、20日間ほどヨーロッパに行ってきました。陸上競技の大会を転戦するためです。もちろん私が出場するわけではありませんが。
 ヨーロッパでは、春から夏にかけて各国で国際競技会が開催されています。それらの競技会に出場すべく、男子短距離の選手の引率とコーチングをしてきたのです。選手8名、コーチ2名、トレーナー1名で行動し、数試合こなしました。私はイギリス、ドイツ、ベルギー、イタリア、そしてクロアチアに行きました。2012年ロンドンオリンピックが開催されるイギリスを拠点として、そこから競技会に移動します。出場する競技会が選手によって異なるので、数名で行動します。選手のみで競技会に行かせる場合もありました。まあ、武者修行みたいなものです。


イタリア


クロアチア


ドイツ

 この時期、ヨーロッパ各国では、国際陸連(IAAF)が主催するダイヤモンドリーグという世界のトップ選手が集結する競技会や草大会まで多くの競技会が開催されます。とある国の小さな村でも、年に一度のお祭りのように人々が集結し、競技会が開催されています。
 それらの競技会の最高峰が「ダイヤモンドリーグ」です。今年から今まで開催されていたゴールデンリーグとスーパーグランプリを統合して、ヨーロッパやアジアを中心に14大会が開催されました。総合優勝者には4カラットのダイヤモンドが贈呈されます。
このダイヤモンドリーグは、オリンピックや世界選手権のメダリストや入賞したレベルのスター選手が出場する競技会で、なかなか出場させてもらえません。短距離はレーン数が決まっているので今のレベルでは出場は非常に困難です。
 その下のランクには同じく国際陸連(IAAF)管轄のワールドチャレンジというカテゴリーのシリーズがあります。これもいろいろな国で数大会開催されています。日本で5月に開催される「大阪グランプリ」がこのカテゴリーです。ご覧になられた方もいらっしゃると思いますが、こちらも世界のトップが集結します。今回の遠征では2名がクロアチアのザグレブで開催されたワールドチャレンジに出場できました。
 他の選手はワールドチャレンジには残念ながら出場できず、さらに下のレベルの競技会にしか出場できませんでした。といっても、なかなかの強豪選手が出場しています。ダイヤモンドリーグのようにスター選手ばかりという訳ではありませんが、各種目に2,3名は世界のトップ選手が出場しています。我々にはちょうど良いレベルの競技会です。

 今回の遠征では、多い選手は4大会をこなしました。日本からの移動も含め20日間で4大会はハードですが、世界のトップ選手は、移動、大会、次の日にまた移動、そして大会を繰り返し、それでも結果を残してきます。慣れない地で、ウォーミングアップ場もないような競技場でも、ある程度は走ってきます。日本の恵まれすぎた環境はここにはありません。こうしたハードな環境での経験は、タフで強い選手を作ります。体力の消耗や精神的負担や疲労は大きいですが、それ以上に得るものがあるのです。
 また、海外の選手の多くは、こうした競技会に出場することで出場料や賞金を獲得します。すべての選手がというわけではありませんが、シューズやウエアの契約を含め、こうした収入が生活の糧となっています。ひとシーズンで年間数千万円稼ぐ選手はざらにいます。おそらくボルト選手は数億単位でしょう。これがプロ陸上競技選手です。生活がかかっているから貪欲でタフなのかもしれませんね。

 話がそれていきそうなので戻しますが、とにかくヨーロッパで競技会に参加してきました。もちろん結果は良いものもあり、悪いものもありました。ただ、最後に参加したクロアチア・スプリットでのコンチネンタルカップという競技会では、アジア・オセアニアの代表として出場した4×100mリレーで、日本チームが2着となりました。このコンチネンタルカップは、4年に一度開催される国際陸連(IAAF)主催の世界規模の競技会で、その名の通り大陸対抗戦です。
アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、アジア・オセアニアの4地域が各種目に2名の選手を出場させ、1着は何点、2着は、というように得点をつけ、総合得点を競います。リレーは大陸対抗なので4チームの出場ですが、アメリカに次いで2着、銀メダルを獲得です。記録が良くなかったので喜びは半減なのですが、一応世界2位です。
 コンチネンタルカップにはアジア・オセアニア代表として多くの日本人選手が参加しました。この競技会の模様は録画ですがテレビ放映されますので、興味のある方は是非ご覧ください。ちなみに解説は私だったりします。

※テレビ放映予定 10月9日(土)27:48〜29:30  TBS系列(録画)

苅部俊二 プロフィール

1969年5月8日生まれ、横浜市南区出身。

元オリンピック陸上競技選手。横浜市立南高等学校から法政大学経済学部、富士通、筑波大学大学院で競技生活を送る。

現在は法政大学スポーツ健康学部教授 コーチ学(スポーツ心理学) 同大学陸上競技部監督 法政アスリート倶楽部代表 日本陸上競技連盟強化委員会ディレクター兼オリンピック強化コーチ(ハードル)。

2007年から日本陸上競技連盟強化委員会の男子短距離部長を務め、世界選手権(2007大阪、2009ベルリン、2011大邱、2015北京、2019ドーハ)、オリンピック(2008北京、2012ロンドン)に帯同。

また、2014年には日本陸上競技連盟の男子短距離部長へ復帰し2016リオデジャネイロオリンピックに帯同し、日本短距離男子チームの責任者として同行した。

1990年代を代表する陸上競技者として活躍。1996年のアトランタと2000年のシドニーオリンピックに出場、世界室内陸上競技選手権大会400mで銅メダルを獲得するなどの活躍を見せた。元400mハードル日本記録保持者。

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