vol.98「ヒサとトニーが帰ってきた!!」
ヒサはビーコル最初のシーズンから昨シーズンまで在籍し、イケメンとしてだけではなく、激しいディフェンスや真摯にバスケットに取り組む姿勢が多くのブースターさんから愛されていた183cmのフォワード#73久山智志(29歳)です。昨シーズン終了後に広島ライトニングスへ移籍しましたが戻ってきました。
#73久山智志(29歳)
トニーは昨シーズン途中1月に信州から移籍し、身長は201cmと小柄ながら1ゲーム平均(Avg.)13.5得点し、I/S(インサイド、ゴール下周辺)に強い#22カール・ホール(26歳)のこと。
#22カール・ホール(26歳)
トニーはI/Sの要、強い身体と柔らかいシュートタッチでペイント・エリア(ゴール下周辺の色違い長方形の場所)で、さらに一歩でもリングに近づこうとする姿勢は、身体接触を嫌う選手が多い中、とても貴重な存在である。シュートを堅実に決めるだけではなくオフェンス・リバウンドに跳び込み、214cmのJ.O.(#21ジョーダン・ヘンリケス)の1.3倍もボールをもぎ取ってくる貴重な選手。
2人が揃った10月31日(土)の信州第1戦では、第1Qシュートが入らず6-20と大量リードされた苦しい展開の中、残4分47秒J.O.に替わってベンチから出てきたトニーがゴール下で決めたのがきっかけとなり追い上げが開始され、さらに第2Qでは残7分21-29の場面でコーリーと交代して直ぐにリングに連続してアタックし、そのうえ速攻も決め29-31と追い上げ、その後のリュウイチ(#7堀川竜一)の3Pで32-31と逆転、この5分24秒間13-2のランで6得点し、逆転劇のお膳立てをしている。
I/Sを重視するアメリカン・スタイルを取り入れ、王道のバスケットを展開するビーコルには打ってつけの選手。身長は201cmでI/Sでプレーするには小さい。一方チームどころかリーグでも最長身のJ.O.は、どちらかというとリングの真下より数m離れた距離のシュートの方が得意で、一見逆に思いがちだが、これはこれで個性を生かしたチーム構成として成り立っているといえる。
ヒサはビーコル初年度から在籍していた選手。元々は3Pシューターだった、というと聞こえは良いが3Pしかうてなかった選手。強いディフェンスと確率の高い3Pだけでも下のカテゴリーでは通用するだろうが、bjリーグでは通用しない。2シーズン目辺りから、バスケットIQ(プレーの質の高さ、知識、理解度のこと。「旨さ」と言い換えても良い)を高めるべく努力をし始めた。ドリブルでリングにアタックしたり、味方に良いパスを送ったりと、シュート以外のプレーを覚え始めた。
そうするとシュートに対して積極的でなくなり、オープン(ディフェンスにマークされてない状態)でボールをもらっても、他にもっと楽にシュートできる味方がいるのではないかと雑念が入る。そうなるとシュートの確率は下がってしまう。
[*ヒサの3Pシュート確率推移。11-12(36.2%) 12-13(31.3%) 13-14(28.7%) 14-15(23.1%)]
そうなると本来のヒサじゃなくなってしまうようだが、先のことを見据えると良いタイミングでパスを出すことができたり、ドリブルで攻め込むことはプレーの幅が広がることになる。そのために積極的にアシストパスをし始めアシストの数は3Pの確率と反比例して多くなってきた。
[*ヒサの時間あたりのアシスト数推移 11-12(1.91) 12-13(1.69) 13-14(2.78) 14-15(2.37)。
()内の数字はIF40の数、40分フル出場したと仮定した時の数値。ゲーム数当たりの平均とは違い、プレー時間当たりの数値なので個人能力が判りやすい。]
ヒサのビーコル復帰戦となった10月31日(土)の信州第1戦、15分の出場で5得点、3P-1/5、2P-1/2、5アシストを記録したが、ゲーム後の記者会見で「今日はシュートを多くう撃とうと思ってました。」といっていたように、シュート数が多いのが目立つ。IF40値は13.3で、8.4だった昨シーズンの倍以上もシュートしており、積極性をアピールしたかったようだ。
だからといってアシストが少ない訳じゃない。昨シーズン2.4だったIF40値がこのゲームは13.3なので、5倍以上になっている。印象深いのは信州第1戦、第2Q、トニーのブロック(相手シュートを叩いて不成功にさせること)からの速攻で、ローポストにトニーを置き、左エンドライン沿いにドライブを仕掛けると、トニーをマークしているウィザースプーンがカバーにきた。それを見たヒサは、ノーマークになったトニーにバウンドパスを送った。
さらに次の攻撃ではリングへ大きくジャンプした後、逆のゴール下にいたコーリーへ上手いバウンドパスを送り、コーリーのイージー2(ノーマークのレイアップシュートやゴール下シュートのこと)の手助けをした。今までに見たことのなかったアシストパスに、大きく成長して帰ってきたヒサを見た。
とはいえヒサの本領はシュートやアシスト等の攻撃ではなく、昨シーズン中盤に行ったようなディフェンスといえるだろう。自分より10cmも20cmも大きい外国人へのマークは、まさに「魂のディフェンス」と呼ぶに相応しかった。これについてはこのハマスポ内でも熱く書かれているので、それをお読み下さい。〈埋められたONE PIECE~海賊の逆襲はここから始まる〉
トニー、ヒサの加入について青木勇人コーチは次のように語っている。
「二人の加入で練習ムードが変わりました。チーム内で競争が起こり、良い意味でピリピリして、それが良いムードになりました。二人ともディフェンスでハッスルしてくれ、数字に出ない良いプレーが出ました。」
実は二人の加入は、数字にもハッキリ出ている。加入前(BTH)の8ゲームと、加入後(ATH)の4ゲームを比較してみよう。
まず一番変わったことは得点力。BTHはAvg. 71.1点なのに対しATHは80.3点と大幅にアップしている。その要因の一つはトニー分のプラスだが、もう一つの要因はケンジ(#13山田謙治)の得点が倍近くになっていることだろう。
そして変わったのは3PA(3Point Shoot Attempt。3P試投数)。
BTHは17.3本、ATH18.0本。が若干増えただけだが、確率が29.7%から40.3%へ大きく飛躍した。
3PAに関しては悲しいことにイースタンで最下位のAvg.17.5本(今シーズン12ゲーム、11月8日終了時)だった。
(ちなみに最多は福島の29.5本、イースタン平均では23.0本。確率の平均は31.6%となっている。)
撃った本数はそれほど変わらなくても確率が大幅に高くなったことで得点が増えたという事。
個人的にはカバ(#3蒲谷正之)が25%→40%と上げればケンジは32%→58%、セイジ(#37河野誠司)は23%→45%と大幅にアップさせていて、さらにコーリーは27%→55%と倍以上も高くなっている。オフェンス・リバウンドを獲れるとわかると、シューターの確率が高くなるという定説は間違っていない。
そんな中、確率こそ下がったものの注目したいのがリュウイチの試投数、IF40では4.8→11.8と2.5倍近く増えている。信州第1戦前半29-31での負け場面で決めた逆転3Pのように大事なところで決めてくれ、191cmの3Pシューターは相手にとって脅威となる。
トニーの加入で増えたのがI/Sを含む2PA数、確実なI/Sのシュートが増えることは得点が増えることであり、勝つ要素でもある訳だ。昨シーズン優勝したNBAゴールデンステート・ウォリアーズは例外として、基本的には当たり前のシュートを堅実に決めるチームは、強豪チームに多い。
シュート関連で特筆すべきはAvg.で2.4本も増えているFTA(フリースロー試投数)。FTはI/Sでのプレーに対してのモノが多いので、FTAが多いのは良いチームの証でもあるが、コーリー、カバの増加は果敢にリングへアタックする数が多くなった証拠だろう。と共にトニーがゴール下で暴れまわったからでもあるハズ。
面白いことに確率も高くなっていて、チームとしては66%→78%と12ポイントも高くなったけど、何故なのか(笑)
このようにチームとして良くなり、ケミストリーが生まれつつある証拠として、集中的に得点したり、クラッチ・シュート(土壇場に強く、ここ一番でショットを何度も決める事)が多くなっていることが挙げられる。
信州第1戦第3Q、47-43と追い上げられたとき、コーリーとトニーがI/Sで連続得点し、3分弱の間に8-0のランで信州を突き放した。
第2戦では、第2Q立ち上がり16-21のビハインド、ヒサのドライブからのリバースショットをJ.O.がプットバック(リバウンドしてシュート)、セイジのパスをトニーがダンク、さらにセイジ自身がトニーのスクリーンで3Pを決めると、次はヒサも速攻でトニーからパスを受け3Pを決め、2分強の間に10-2のランで26-23と逆転からリードする展開に。ベンチ・メンバーが逆転したのだ、これも強さの一つ。
今までフワーっとした入り方で問題が多かった後半の立ち上がり、ヨースケ(#32前田陽介)が珍しくドリブルからのストップ・ジャンパーを決め、相手のパス・ミスを速攻に持ち込みカバが3Pを決める。次はカバが相手のパスをカットしてボールを得ての攻撃で、ヨースケからペイント内でボールをもらったJ.O.が左フックショットを決め、さらにカバが元ビーコル斎藤のボールを弾いて転がったボールをJ.O.が拾い、そのまま走ってダンクを決めた。
開始1分21秒間で10-0のランで逆転からさらに突き放し勝利に導いた。
勝負所でシュートを決める、所謂クラッチ・シュートといえばビーコルではカバと相場が決まっていたが、信州第1戦、70-71の1点ビハインドの残19秒、果敢にドライブして206cmのベルのブロックをかわし、レイアップを決め逆転したのはケンジだった。
さらに秋田第2戦、第4Q残30秒、76-75と追い上げられての攻撃。早いタイミングでシュートすると、外れた時は相手に時間的余裕を与え、シュートを決められ逆転される恐れがあるため、24秒ギリギリまでシュートしないのがセオリー。
しかし時間が経つほど相手のマークがきつくなり、攻め所を探している間にショットクロックも残り4秒となった。
その時、ドリブルでボールをキープしていたケンジが一瞬のスキを見つけ3Pアーチの外からシュート。
ボールは奇麗にリングを通り抜けた!!
79-75とリードして最後は81-75で逃げ切った!!
まさに強い勝ち方!!
駒が揃ったビーコル、海賊の反撃が始まるぞ!!
「キュッ」っていう摩擦音が気持ちの良い!キレのある中央突破からレイアップを決める横浜ビー・コルセアーズ#13山田謙治#bjyokohama #bjleague #basketball #sports #sportscast bj-league(bjリーグ) 横浜ビー・コルセアーズ
Posted by SportsCast Basketball on 2015年11月5日
謙治残19秒のペネトレイト
11月21日(土)、22日(日)は海老名運動公園体育館で、青森とホーム・ゲームを行います。応援に来て下さい!
詳細はこちらをクリック〈ビーコル公式サイト〉
1946年生まれ。
月刊専門誌「バスケットボール・イラストレイテッド」の編集長を経て、バスケットボール用品のデザイナーとして活躍。特にキャラクター「あんたかベイビー」のTシャツは一世を風靡した。日本初のバスケット・ユニフォームデザイナーとしても活躍。当時強豪と言われる殆んどのチーム<実業団-大学-高校>に関して何らかのデザインを手掛けている。またスポーツ界では唯一のファッションのコラムを持っていた。
現在は自身のユニフォーム・ブランド「305」を立ち上た。
NBAに関しては「月刊バスケットボール・イラストレイテッド」編集者時代の1966年から連載を執筆。TV解説はNHK BS以前にも東京12チャンネルで1985年から行っており、日本最古のNBA解説者と言われている。
過去にはスポニチウェブサイトのNBAコラムを担当。月刊バスケットボール及び月刊バスケットボール・マガジン等に連載を持っていた。
横浜の中学・高校バスケの指導者、関係者とのつながりが深く横浜及び神奈川県のバスケ事情に精通している。
現在は横浜をホームとするBリーグ「横浜ビー・コルセアーズ」の名誉広報として情報発信やプレス対応などチームの広報活動に力を注いでいる。
また(社)神奈川県バスケットボール協会広報顧問も務めている。
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