vol.94 ビーコルコーチ
ジメジメとした気候はまさしく梅雨ですね。その鬱陶しさを晴らすようにバスケットを楽しみましょう。
【話題その1】
最初の話題は、横浜ビー・コルセアーズのヘッド・コーチが決まったことについてです。
ビーコル初代コーチは、アメリカの名門アリゾナ大出身のレジー・ゲーリー氏でした。NBAで2シーズン過ごし、その後はマイナー・リーグや海外のチームでプレー、2004年からコーチとしてのキャリアを積み、母校アリゾナ大でアシスタント・コーチを務めたあと2011年に初代ビーコルのコーチに就任しました。
ご存知のように2シーズン目でリーグ優勝を果たしたのも、このゲーリーコーチの力によるものでした。
優勝後はアシスタント・コーチを務めていた勝久マイケル氏が繰り上がるようにしてヘッド・コーチに就任、そして2シーズンを経て三代目ビーコルのヘッド・コーチになったのが、マイケルの元でアシスタントをしていた青木勇人です。
初代コーチ レジー・ゲーリー氏
二代目コーチ 勝久マイケル氏
三代目コーチに就任した青木勇人ヘッド・コーチ
身長193cmのコーチはあまり見かけませんが、体格同様ユニークな経歴を持っています。
バスケットは藤沢市本町ミニバスを小学生の時に始めましたが、全国大会などに出場するようなチームではありませんでした。藤沢市立第一中から鎌倉学園高に進学したものの、両校とも県内で強豪チームとは呼ばれませんでしたし、選手として有名だったわけではありません(笑)。
それでも関東大学リーグの強豪・専修大に進み、1年生時インカレ4位、3年生時関東リーグ4位、インカレ3位、4年生時で関東リーグ2位となっています。とはいうものの私の記憶にはそれ程残っていません(汗)。
そして193cm92kgの体格とシュート力をかわれ、日本リーグ(現NBL)大和証券へ入社。当時は実業団と呼ばれ、仕事半分バスケット半分という環境だったため、証券会社社員としての仕事をしていましたが、コレがその後にも良い影響を与えたと私は考えています。
その大和証券が不景気の煽りを受け2000年で休部となり、大和証券チームの受け皿となる企業としてJリーグのアルビレックス新潟のメインスポンサー企業である新潟県の学校法人「NSGグループ」が受け入れ、実質的なプロチームとして発足しましたが、青木も当初は出向という形で「新潟アルビレックス」へ移籍しました。
2部リーグからのスタートだったものの、翌シーズンには1部(日本リーグがスーパーリーグへと名称変更)へ昇格しました。ところがプロリーグ問題で新潟は「さいたまブロンコス」と共に脱退し、「bjリーグ」を設立しました。青木は初シ―ズン「東京アパッチ」でプレーをし、2005-2006年シーズンには3Pシュート・ランキング2位になりました。
その後、「大分ヒートデビルズ」へ移り、さらに「琉球ゴールデンキングス」へ移籍し、2008-2009年シーズンの優勝に貢献し、2010年からは大分へ戻るというジャーニーマン(NBA用語で、多くのチームを渡り歩く有能な選手)となりましたが、2011年に地元神奈川県にbjリーグのチームが出来る事になり、最後のチームとしてビーコルを選び、選手として契約しました。
真面目な性格で練習熱心、ビーコルで最年長ながら「練習に一番早く来て最後に帰る」という選手のお手本となる行動と、次回対戦するチーム対策として、相手チーム主力選手になりきって練習相手となるスカウティング・チームになったり、数字に表れないところで頑張っていました。
2シーズン前、ゲーリー氏から勝久氏にコーチが変わった時、専修大の後輩に当たる勝久氏をサポートするアシスタント・コーチに任命されたのは、小川ゼネラルマネージャー(以後GM)の意向でした。将来ビーコルのコーチ候補として、どうせなら早めに勉強させた方が良いだろうと、選手に未練を残す青木を説得してコーチング・スタッフにしたのです。
面白い経歴でしょ!
さて6月3日、TKbj合同トライアウトが開催され、翌4日のドラフト会議2015と続きましたが、今回のドラフト会議でビーコルは昨年同様指名しませんでした。
そして5日、ビーコルは青木のヘッド・コーチ就任を発表!!!
青木ヘッドとしての最初の公式行事は、28日のチーム・トライアウトになりました。
ビーコル・ファシリティー(練習場)であるたきがしら会館で10時から行われたトライアウトには、下は19歳から上は吉本に所属する芸人の浅井優37歳までの36人が参加して、熱のこもったプレーを見せてくれました。今年は例年に無くレベルが高いと感じました。その点は小川GMも「個人能力は上がっていて、良い選手が多いですね。」と言っていました。また「教育されてない(シッカリと技術を教えてもらってない)選手が多いですね、ハンドリングとか走るタイミングだとか・・・」とも言っていました。コレは今回に限ったことではなく、日本バスケット界の課題でもあります。
それはさて置いて、今回は8人が候補に挙げられ、トライアウト後に小川GMからインタビューを受けました。バスケットや人生に関しシッカリとした考えを持っているか、条件面は、等々を話し合いました。
そのシーズンだけを考えるのではなく、育成ということも頭に入れ、育て上げ長くチームに居られる選手を採用するのがビーコルの考え方、プロ野球で「育成のカープ」といわれる「広島カープ」と同じ考えです。
さて何人が選手及び練習生として契約するのでしょうか?
トライアウト動画
Posted by Ando Takao on 2015年7月8日
◆選手のトライアウトに当たるのがB-ROSEのオーディションです。昨シーズン11人だったB-ROSEですが、契約延長というシステムはなく、新たに受け直す事になります。さすがB-ROSEは厳格です。
27日に行われたオーディションには少数精鋭の14人が受験し、12名を採用予定とのこと。今回はユース・チームからかなり優秀な子が受けた、との情報を受けています。
こちらも発表が楽しみです!
◆2015-2016年シーズンのカードが発表されました。今シーズンの開幕は、待望の横浜文化体育館で10月3日(土)です!
詳しいカードはこちらをクリック
ここで寂しいお知らせが。
チーム発足時のオリジナル・メンバー6人の内の1人、久山智志選手が退団することになりました。
イケメンとしてだけじゃなく、チーム一の頑張り屋としても知られ、「Vol.86」で書いたように、チームの外国人選手が怪我の時は相手の大きな外国人選手にマッチアップして身体を張って抑えた技術と精神力は、誰もが認めるところでした。
入団前は#13山田や#3蒲谷のような華々しい実績は無いものの、3Pシューターとしてスタートし、翌シーズンにはドリブルで切り込むことを覚え、アシストパスも多く出せるようになり、持ち前の身体能力の高さでリバウンドへも積極的に跳ぶようになり、バスケットIQを高めつつありました。
しかしその一方で看板だった3Pの確率が徐々に下がっていったのも事実で、表裏一体ということでしょうか。そんなこともあり気分一新のためにビーコルを離れたのかもしれません。新しいチームで一皮むけたヒサを見せて欲しいものです。
【話題その2】
この時期は多くの高校生が最後の大会を迎えます。インターハイ(全国高等学校選手権大会、以下IH)県予選で、京都で行われる本大会には神奈川県から男女共に2校が出場できます。
各地区大会を勝ち進んできた32校が4ブロックに分かれトーナメントを行い、その勝者4チームでリーグ戦を行ない上位2チームがIH出場となります。今年から11月に行われるウィンターカップ(以下WC)県予選には8チームのみ出場のため、他のチームにとってはこの大会が引退試合になります。
◆男 子
A・B・Cブロックに関しては順当に勝ち上がってきましたが、Dブロックで第5シードの法政二高がノーシードの湘南工大附高に破れるという波乱がありました。第4シードの横浜清風高(以下清風)は、ヒヤヒヤの73-71の2点差でその湘南工大附高を破り、ファイナル4入りをしました。
アレセイア湘南高(以下アレセイア)、桐光学園高(以下桐光)、県立厚木東高(以下厚木東)、清風で争われた決勝リーグ第1日目で、関東大会県予選2位の桐光が同3位の厚木東に68-80という大差で敗れるという波乱が起こりました。この2チームの力の差はそれ程ないため接戦すると思われていましたが、これほど大差がつくとは想像できませんでした。これは今後の展開次第で桐光に大きなハンデとなります。
清風はアレセイアに77-84で破れ0勝1敗です。
決勝リーグ第2日目、清風は厚木東に79-94と破れ0勝2敗となり苦しい展開。
一方1敗している桐光は、これ以上負けるわけにはいきません。関東大会予選で負けているアレセイア相手にシッカリと対策を練り、エース#4須藤もシュートを決め大接戦となり、オーバータイム(OT、延長戦)の末、アレセイアの主力#7フィリップが疲れた隙を突いて88-80で勝利しました。
この時点で厚木東2勝0敗、桐光1勝1敗、アレセイア1勝1敗、清風0勝2敗となりましたが、まだ全チームに出場のチャンスは残っています。
最終日、桐光は91-65で清風を下し2勝1敗として、首の皮一枚繋げました。最終ゲームでアレセイアが勝てば2勝1敗で3チームが同率になるからですが、同率になった場合の順位決定法等の詳細は省かせて下さい(汗)。
そして最終の厚木東vsアレセイア戦は大接戦でしたが、最後に疲れが出たアレセイアにファールトラブルとミスが出て厚木東が一気に引き離し90-79で3勝目をあげ、2勝1敗の桐光と共にIH出場を決めました。
神奈川県IH予選男子決勝リーグ
神奈川県IH男子決勝リーグ厚木東vsアレセイアTip off
Posted by Ando Takao on 2015年7月6日
厚木東vsアレセイア
◆女 子
横浜勢が出場しない男子に対し、女子は第3シード相模女大高をOTの末55-53で破り決勝リーグ進出した県立市ケ尾高(以下市ケ尾)を始めとして、県立旭高(以下旭)、清風の3チームが決勝リーグへ進出しました。
県立金沢総合高は、ブロック決勝で県立秦野高に62-67で破れ決勝リーグ進出はなりませんでしたが、WC予選の出場権は獲得しました。
その他に、県立希望ヶ丘高も第7シードの県立荏田高を54-52で破りブロック決勝へ進出し、WC予選に横浜勢は5チームが出場となります。
決勝リーグ第1日目、旭は秦野を80-57で下し、清風も市ケ尾を強いプレスからの得点で63-41と破り順当なスタートを切ったと思われましたが、第2日目男子同様波乱が起こりました。第2シードの清風が、秦野に終始リードされ63-66で破れました。
旭vs市ケ尾戦では、シュートが決まらない旭に対し市ケ尾は、#4古畑の3Pやインサイドでの得点でリードを奪うものの、ベンチの層が薄い市ケ尾は疲れからか後半シュートが決まりません。対する旭は#8熊谷のシュートや積極的なATB(Attack The Basketの略。リングを攻める、ということで、積極的にドリブルでゴール下へ攻め込むこと)で逆転し、疲れの出た市ケ尾からミスを誘いさらに引き離し、48-43で逃げ切り2勝目を上げました。
第2日目を終えた時点で、旭2勝0敗、清風1勝1敗、秦野1勝1敗、市ケ尾0勝2敗となり、男子同様全チームにチャンスは残されました。
最終日、市ケ尾vs秦野戦、市ケ尾は絶対に勝たなくてはいけないゲーム。お互いにシュートが入らずロー・スコアの展開になりました。市ケ尾は#16末次、#5舘岡の得点で逆転したものの、秦野にゴール下を攻められ再逆転を許します。市ケ尾は最後に強いディフェンスを仕掛け#12小澤、#9青木のシュートで39-42まで追い上げたもののそこまで、39-44で破れ3敗となりIH出場権獲得はなりませんでした。
こうなると決勝戦ともいえる状態になったのが、旭vs清風戦。このゲームに勝たないとIHへ行けない清風は、気合の入った強いディフェンスでスタートし、#6北本のペイント内でのシュートが良く、旭は#11安彦と#14片野の3Pで対抗しますが、お互いにシュートの確率が悪く前半22-22とロー・スコアな展開です。
後半、清風は#7傳松、#5盛合などの3Pが決まり勢いづき42-30と差をつけ、この間旭はエース#8熊谷がポンポンとシュートするものの当たりが来ません。
残り4分、50-38とされ旭が後半2回目のタイムアウトを取ったあと、先ず#11安彦が3Pを決め50-41として反撃が始ました。#8熊谷がやっと目を覚まし、スティールからの速攻、そして外からも決め残28秒51-52と1点差まで詰めましたが、その16秒後に清風はこのゲーム17得点の#7傳松が3Pを決めThe End!
55-51で清風が勝ち、2勝1敗が3チームとなったのです!
そうなると3チーム間でのゴール・アベレージで順位が決まります。ゴール・アベレージとは、【総得点÷総失点】で計算されます。
ここで秦野戦において23点差をつけた旭が優位になります。
旭 (51+80)÷(55+57) =1.169
清風(55+63)÷(51+66) =1.008
秦野(57+63)÷(80+63) =0.839
ということで優勝が旭、準優勝が清風となり、この横浜の2校がIH出場となりました。
神奈川県IH予選 女子決勝リーグ
神奈川県IH予選 女子決勝リーグ清風vs旭
Posted by Ando Takao on 2015年7月6日
清風vs旭
なお最終日のゲームは先月書きましたが、神奈川のケーブルTV6局で7月に録画放映されます。
ぜひ見て下さい。そして各局へ電話やメールで感想等を伝えて下さい。
反響が多ければ、次回IH予選やWC予選の放映も実現します。皆さん次第ですよ!!!
◆桐光vs清風 11日(土)12時 YCV(10ch)、12日(日) 14時30分SCN(11ch)CATV(002ch)、29日(水)20時AIC(11ch)
◆厚木東vsアレセイア 9日(木)J:COM、11日(土)20時YCV、12日(日)17時30分SCN、18日(土)20時AIC
◆秦野vs市ケ尾 11日(土)15時30分YCV,17時iTSCOM(11ch)、20時AIC、12日(日)13時SCN、22日(水)20時AIC
◆清風vs旭 9日(木)20時YCVとSCN、11日(土)17時J;COM、18時30分iTSCOM、12日(日)16時SCN、15日(水)20時AIC、25日(土)20時AIC
AIC 0120-48-5541
iTSCOM 0120-109199
SCN 0120-121-302
YTV 0120-317-230
YCV 0120-595-775
J:COM 湘南 0120-999-000
小田原 0120-914-000
1946年生まれ。
月刊専門誌「バスケットボール・イラストレイテッド」の編集長を経て、バスケットボール用品のデザイナーとして活躍。特にキャラクター「あんたかベイビー」のTシャツは一世を風靡した。日本初のバスケット・ユニフォームデザイナーとしても活躍。当時強豪と言われる殆んどのチーム<実業団-大学-高校>に関して何らかのデザインを手掛けている。またスポーツ界では唯一のファッションのコラムを持っていた。
現在は自身のユニフォーム・ブランド「305」を立ち上た。
NBAに関しては「月刊バスケットボール・イラストレイテッド」編集者時代の1966年から連載を執筆。TV解説はNHK BS以前にも東京12チャンネルで1985年から行っており、日本最古のNBA解説者と言われている。
過去にはスポニチウェブサイトのNBAコラムを担当。月刊バスケットボール及び月刊バスケットボール・マガジン等に連載を持っていた。
横浜の中学・高校バスケの指導者、関係者とのつながりが深く横浜及び神奈川県のバスケ事情に精通している。
現在は横浜をホームとするBリーグ「横浜ビー・コルセアーズ」の名誉広報として情報発信やプレス対応などチームの広報活動に力を注いでいる。
また(社)神奈川県バスケットボール協会広報顧問も務めている。
※タイトル・本文に記載の人名・団体名は、
掲載当時のものであり、閲覧時と異なる場合があります。