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あんどうたかおのバスケにどっぷり

vol.173「日本女子パリ出場決定」

そして残り49秒…宮崎が仕掛けた。

ガードの宮崎早織(167cm)が馬瓜エブリン(180cm)とピックアンドロールを仕掛ける。これはカナダに対応されて遂行できなかったが、宮崎が仕切り直して単独で素早いATB(Attack The Basket/ドリブルでリングに攻め込むプレー)。そこから中に入って来たエブリンにゴール下からパスを狙ったがこれもディフェンスに阻まれ、左サイドのエルボー(フリースローレーンの上の角)付近へ転がった。
そのボールに山本麻衣(163cm)が素早く反応して拾い上げそのままドリブル、身体は右へ流れて苦しい体勢ながらシュート。
ショットクロック(24秒ルール)ギリギリだったが、ボールはブロックに来た193cm・アレクサンダーが伸ばした手の上を通り、ボードの真ん中に当たるバンクショットとなりリングへ吸い込まれた。このゴールで85-80となり勝利を決定づけるとともに、パリ五輪行きの切符を掌中にした!

FIBA女子オリンピック世界最終予選(パリ2024オリンピック世界最終予選/FIBA Women’s Olympic Qualifying Tournaments 2024)が、令和6(2024)年2月8日~11日の間に中華人民共和国・ベルギー・ブラジル・ハンガリーの4地区で出場16カ国の間で行われた。開催地ごとにそれぞれに4チームのリーグ戦が行われ、各地区の上位3チームがパリ2024出場権を獲得できる。
オリンピック開催国であるフランス、FIBA女子ワールドカップ2019優勝国のアメリカ合衆国もこの16か国に含まれる。
世界ランク9位の日本はハンガリー・ショプロン会場が割り当てられ、パリへの切符を目指した。

FIBA女子オリンピック世界最終予選(OQT)出場チーム
※()内は最終予選前のFIBA世界ランキング
中国開催
・プエルトリコ(12位)/中国(2位)/ニュージーランド(23位)/フランス(7位)
ベルギー開催
・セネガル(20位)/アメリカ(1位)/ベルギー(6位)/ナイジェリア(11位)
ブラジル開催
・ブラジル(8位)/ドイツ(25位)/セルビア(10位)/オーストラリア(3位)
ハンガリー開催
・スペイン(4位)/ハンガリー(19位)/カナダ(5位)/日本(9位)

2月8日開幕戦は世界ランク4位のスペインが相手。日本は持ち味の3P(スリーポイント・シュート)を武器に、林咲希(173cm)6/8、エブリン3/6、山本3/5など計15/40(37.5%)を沈め、86-75で開幕戦を勝ち取った。
翌9日は地元ハンガリーと対戦。大会前の世界ランキングは19位だが地元ということもあり油断できない相手。さらに気になったのは林のスリー。前日は好調過ぎるほど決まったが、2連戦では落とし穴が待っていることが多い。

現在Bリーグ横浜ビー・コルセアーズの名誉広報としてゲーム毎にスタッツを含むデータを出しているが、その中で2連戦の時、ゲーム1でシュートが好調だった選手がゲーム2では決まらないケースが多いことに気が付き、仮説を立てたのが「2ゲーム平均理論」。
Bリーグは土曜・日曜と2連戦が組まれることが多い。普段はスリーが1、2本決まり平均得点10点前後の選手がいたと仮定しよう。その選手が土曜日のゲーム1でスリーがパシャパシャと決まり20得点したら、多くの人…特にそのチームのブースター達はゲーム2ではもっと得点してくれると期待するもの。ところがスリーどころかイージー・ショットも決まらず5、6点しか取れなかったということが多くある。
それが「あんたかの2ゲーム平均理論…(ゲーム1の得点+ゲーム2の得点)÷2=シーズン平均得点」。
つまり土曜日に大活躍した選手は日曜日シュートが決まらない=得点が少ないということだ。7割の確率で当てはまるので覚えておいてほしい。

…と言うことで林のスリーが前日のように決まるのは厳しいとにらんでいた。
その上前日のスペイン戦を研究してきたハンガリーは、試合に入ると終始スリーを撃たせないように外へ強いディフェンスを敷いて来た。それもあり林のスリーが決まらず戦略が狂い、さらに地元の声援を味方につけたハンガリーに押され75-81で敗れてしまい、この日でのパリ行きチケットを手にすることはできなかった(宮崎15点・3P…1/3、山本15点・3P…3/4、高田真希(185cm)14点、林11点・3P…3/8)。

1勝1敗となったがパリ行きチケットがなくなった訳ではない。ここショプロン会場は世界から「死の組」と言われただけあり上位チームが多く、連勝した国はなく、全チーム1勝1敗と横並びになり、4チーム中3チームがオリンピック出場権得ることになるため、先ずは3ゲーム目のカナダに勝つことに集中すればよい。負けたとしてもスペインvsハンガリー戦で、すでに日本が勝利しているスペインが勝てば上位3チームに残れば、パリへ行ける。

前ゲームで外に張ったディフェンスで日本のスリーポイント攻撃を潰し勝利したハンガリーの戦い方を見て、カナダは外に張りスリーを抑えに来たが、日本もそういう作戦に来ることは予想しており、平均身長で約10センチ上回るカナダに対し、日本の武器であるスピードを前面に打ち出して戦った。
前半は宮崎と山本のガードコンビが積極的なドライブからレイアップに持ち込むATBを選択。日本のお家芸であるスリーを予想してたカナダ選手を抜き去り、着実に得点を重ねた。恩塚亨監督はゲーム後「日本の強みであるドライブと3点シュートの二つは、相手にとってジレンマ。相手がスリーを消しに来るから、ドライブができる。選手たちがいい判断で果敢なドライブにいってくれた」と称えた。
しかし前半はリードしたものの、高さを活かしたオフェンス・リバウンドからのシュート(プットバック)とスリーを決められ徐々に追い上げられ、3Q早々に50-50と追いつかれ逆転されてしまう。しかしすぐに同点とし、さらに3分宮崎がレイアップ、それに高田も続き83-79と4点差を付けた。その後カナダはFTを1本決めて83-80と3点差。
この辺りからはお互いに緊張感がマックスになり自分達のプレーができない。カナダは日本のハイペースに体力を削られ、トラベリング等のターンオーバーが多く、日本はシュートが入らない時間が続く。この展開では先に得点した方が有利になりそう。

そして残り49秒…宮崎が仕掛けた。

■MVP・山本麻衣!!
試合後テレビ局のインタビューで「相手の弱点を理解して攻め続けたのが勝因」と語った山本は2021年に開催された東京五輪では5人制ではなく3人制の日本代表だった。1対1とスタミナには自信がある。
最終予選で3試合ともプレータイムは日本選手最長で、1試合平均17点を挙げて日本のキーマンとなり、今大会のMVPに選ばれた。
山本はスペインとの初戦で15得点3リバウンド4アシスト1スティールを挙げると、ハンガリーとの第2戦でも15得点6リバウンド6アシスト1スティール、カナダとの最終戦では21得点2リバウンド1アシスト1スティールと躍動。

<OQTハンガリーラウンド・日本の結果>
2月8日 日本86-75スペイン
2月9日 日本75-81ハンガリー
2月11日 日本86-82カナダ

OQT直前にFIBAが公開した出場国パワーランキング第1弾で、日本はスペイン、カナダに続く「8位」に格付けされていたが、OQTの結果を受けたパワーランキング第2弾では「6位」に浮上。評価対象となった五輪出場12カ国のなかで唯一の複数ランクアップの評価を受けたチームとなった。


【写真提供(上2枚)】公益財団法人日本バスケットボール協会

女子日本代表12名(氏名の後は年齢/ポジション/身長/所属)
#3 馬瓜 ステファニー (25歳/PF/182cm/MOVISTAR ESTUDIANTES(モビスターエストゥディアンテス=スペイン)
#4 川井麻衣 (27歳/SG/171cm/トヨタ自動車 アンテロープス)
#8 髙田真希 (34歳/C/185cm/デンソー アイリス)
#12 吉田亜沙美 (36歳/PG/165cm/アイシン ウィングス)
#15 本橋菜子 (30歳/PG/164cm/東京羽田ヴィッキーズ)
#18 野口さくら (22歳/PF/182cm/アイシン ウィングス)
#23 山本麻衣 (24歳/PG/163cm/トヨタ自動車 アンテロープス)
#27 林咲希 (28歳/SG/173cm/富士通 レッドウェーブ)
#30 馬瓜エブリン (28歳/PF/180cm/デンソー アイリス)
#31 平下愛佳 (22歳/SG/177cm/トヨタ自動車 アンテロープス)
#32 宮崎早織 (28歳/PG/167cm/ENEOSサンフラワーズ)
#88 赤穂ひまわり (25歳/PF/184cm/デンソー アイリス)
※平均:174.4cm、27.4歳
※所属は2024年2月7日現在
※ポジション(P)=PG-ポイントガード、SG-シューティングガード、SF-スモールフォワード、PF-パワーフォワード、C-センター

■カイ・ソット加入
ビーコル(Bリーグ 横浜ビー・コルセアーズ)からビッグ・ニュースが飛び込んで来た!!
「2023年FIBAバスケットボールワールドカップ2023」フィリピン代表で身長220cmのカイ・ソットが広島ドラゴンフライズから期限付移籍でビーコルに加入した。期間は12月26日から2023-24シーズン終了まで。


【PLAYER HIGHLIGHT】All of #KaiSotto ‘s dunks | 2023-24 Season (23.12.30~24.2.4)
横浜ビー・コルセアーズ公式Youtubeチャンネルより)

攻守ともにインサイドの「高さ」「運動能力」「得点」「リバウンド」でおくれを取っていたビーコルに願ってもない選手が追加された。
現在、河村勇輝(22歳・172cm)というスーパースターとジェロ―ド・ユトフ(30歳・206cm)というシューターを擁しているがI/S(インサイド。ゴール下近辺の四角いエリア)のジョシュ・スコット(30歳・210cm)の膝の状態が万全でなく、攻守ともに今一つだったため勝てるゲームを落としたり、不安定なゲームが多かった。
彼の加入ですべてが解決するわけではないが、得点+アシストの河村、中外どこからでも決められるシュート力を持った長身フォワードのユトフ、ガードもこなせるオールラウンダーのデビン・オリバー(31歳・203cm)の外国籍選手に加え、渋い活躍を見せるキング開(23歳・185cm)、須藤昂矢(26歳・186cm)、杉浦佑成(28歳・196cm)、西野曜(25歳・199cm)、松崎裕樹(23歳・192cm)、田中力(21歳・186cm)、間もなくケガから復帰する3Pシューター大庭岳輝(26歳・184cm)、そしてチームをまとめる森井健太(28歳・178cm)という、ディフェンスが良い若手日本人軍団。
ディフェンスの良いチームではあったものの、ペイント内が今一つ弱く、リバウンド部門ではリーグの平均を大きく下回っていて、これが勝てない要因の一つであった。

しかし、リバウンド獲得数が多くなれば、チームとしては大きく前進できる材料がそろうことになる。
そのソットは加入当時ファールが多いのが欠点と言われていた。長身選手にありがちな反射能力の低さなのにボールに手を出す悪い癖があり、何度もファール・トラブル(ファール数が多くなること)となり大事な時間帯にベンチに座っていることも多々あった。
しかしスタメンに起用された1月28日vs島根スサノオマジック戦ゲーム2からファールが少なくなった。ただゲームでは相手に合わそうと気を使い過ぎ、結果には出なかったが。
それでもスタメンに定着した2月7日アウェーでのサンロッカーズ渋谷戦からファールが少なくなり、リバウンド数が2桁になった。そしてバイウィーク前の千葉ジェッツ戦ゲーム2、最長となる27分32秒の出場で26点、5オフェンス・リバウンドを含む11リバウンド、そしてわずか1ファールという成績で12連勝中の千葉ジェッツを90-85で破る勝利に大きく貢献した。
後半戦に向けて良い結果を出せ、プレーオフ進出に向けて期待を持たせるゲームとなった。

■次節ゲームは神奈川ダービー!
バイウィーク明けとなる次節の試合は、3月2・3日アウェー・川崎市とどろきアリーナで川崎ブレイブサンダースとの神奈川ダービーとなる。

■令和5年度 神奈川県高等学校バスケットボール新人大会
県内各地区男女365校から勝ち抜いて来た男女各52校で争われた新人戦は令和6年1月8日から21日まで横須賀アリーナをはじめとする県内14会場で行われ、男子-桐光学園高(以下桐光高)、女子-鵠沼高の優勝で幕を閉じた。

<男子決勝> 桐光高83-69横浜清風高(以下清風高)
清風高はATBを仕掛けるが桐光高の堅い守りにゴール出来ないが、桐光高はシュートが決まらないもののセカンドチャンスをモノにして着々と得点しリードを広げる。終盤清風高がプレスを仕掛けるが効果なく逃げ切られた。
敗れたものの清風高は面白いチームなので関東大会予選、IH予選が楽しみだ。

<女子決勝> 鵠沼高88-51星槎国際高湘南(以下星槎高)
主力がそれ程欠けてない鵠沼高はリングへの走り込みの合わせが上手い。星槎高は高さを活かせず得点できない。終盤になり星槎高はようやくディフェンスからの速攻とI/S攻撃で反撃に出たが、時遅く88-51で鵠沼高が貫録の勝利。
星槎高がインターハイ予選までどう作り上げて行くか楽しみ。

大会結果はこちらから(一般社団法人神奈川県バスケットボール協会HP内・PDF)

男女上位2校は2月3・4日、埼玉県深谷市で行われた「令和5年度第34回関東高等学校バスケットボール新人大会」へ出場した。
男子・桐光高は、2回戦で優勝した山梨県代表・日本航空高に、清風高は1回戦で栃木県代表・文星芸術大附高に敗れた。
女子・鵠沼高は2回戦で優勝した千葉代表・昭和学院高に、星槎高は1回戦で茨城県代表・明秀学園日立高に敗れた。

あんどうたかお プロフィール

1946年生まれ。

月刊専門誌「バスケットボール・イラストレイテッド」の編集長を経て、バスケットボール用品のデザイナーとして活躍。特にキャラクター「あんたかベイビー」のTシャツは一世を風靡した。日本初のバスケット・ユニフォームデザイナーとしても活躍。当時強豪と言われる殆んどのチーム<実業団-大学-高校>に関して何らかのデザインを手掛けている。またスポーツ界では唯一のファッションのコラムを持っていた。

現在は自身のユニフォーム・ブランド「305」を立ち上た。

NBAに関しては「月刊バスケットボール・イラストレイテッド」編集者時代の1966年から連載を執筆。TV解説はNHK BS以前にも東京12チャンネルで1985年から行っており、日本最古のNBA解説者と言われている。

過去にはスポニチウェブサイトのNBAコラムを担当。月刊バスケットボール及び月刊バスケットボール・マガジン等に連載を持っていた。

横浜の中学・高校バスケの指導者、関係者とのつながりが深く横浜及び神奈川県のバスケ事情に精通している。

現在は横浜をホームとするBリーグ「横浜ビー・コルセアーズ」の名誉広報として情報発信やプレス対応などチームの広報活動に力を注いでいる。

また(社)神奈川県バスケットボール協会広報顧問も務めている。

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