vol.172「どうしたビーコル」
いやー、ビーコル今シーズンは波が高いなー!
8月から9月上旬にかけて行われたFIBAバスケットボールワールドカップ2023で大活躍の「うちの子」河村勇輝が戻ってきて期待されている横浜ビー・コルセアーズのBリーグ2023-24シーズン。
しかし蓋を開けてみると思うような成績を残せていない。
何故?
今回はそのことについて掘り下げてみようと思う。
10月7日(土)の京都ハンナリーズ戦から始まった2023-24シーズン。
連勝となり「幸先いい開幕スタート」かと思われたが、次節の群馬クレインサンダーズ2連戦は逆に2連敗。その後は強豪相手に勝利を挙げることもあったが、11月12日(日)vsサンロッカーズ渋谷(以下SR渋谷)ゲーム②後のバイ・ウィークに入るまで6勝8敗と負け越し、中地区5位となっている。
今シーズンと昨シーズンのメンバーの比較をすると、日本人選手と外国籍選手がそれぞれ2人ずつ計4人入れ替わり、簡単なスタッツ比較を前々回vol.170「ビーコル新シーズンとIH予選」で簡単に説明しているので読んで欲しい。
シーズン初期の不調の現因の一つにこの入れ替えも絡んでいるのではと推察し、数字で比較してみる。
前回は4人まとめて比較しているが、今回は日本人と外国籍選手を分けて比較してみよう。
◇リバウンド部門
・日本人選手
<OUT>森川1.4本+赤穂2.2本=-3.6本
<IN>No.9杉浦佑成(196cm)1.9本+No.12西野曜(199cm)1.5本=3.4本
シーズン前比較 -0.2点 ←森川+赤穂の数字と比較(以下同様)
今シーズン中の比較 杉浦1.3本+西野1.6本=2.9本⇒-0.7本
・外国籍選手(カッコ内のORはオフェンス・リバウンド(以下OR)。)
<OUT>アウダ4.1本(OR1.4本)+ジャクソン10.7本(OR4.2本)
=-14.8本(OR-5.6本)
<IN>No.1ジュロード・ユトフ(206cm)8.9本(OR2.0本)+No.40ジョッシュ・スコット(210cm)10.0本(OR2.8本)
=18.9本(OR4.8本)
シーズン前比較 +4.1本(OR-0.8本) ←アウダ+ジャクソンの数字と比較(以下同様)
今シーズン中の比較 ユトフ7.9本(OR1.6本)+スコット7.5本(OR2.0本)=15.4本(OR3.6本)⇒+0.6本(OR-2.0本)
リバウンド部門では両外国籍選手、特にユトフが頑張っているがOR、特にスコットのORが下回っており、これは不振の一因になる。
◇得点部門
・日本人選手
<OUT>森川6.8点+赤穂7.4点=-14.2点
<IN>杉浦4.0点+西野5.1点=9.1点
シーズン前 -5.1点
今シーズン 杉浦3.5点+西野3.2点=6.7⇒-7.5点
・外国籍選手
<OUT>アウダ9.9点+ジャクソン15.9点=-25.8点
<IN>ユトフ17.2点+スコット11.7点=28.9点
シーズン前 +3.1点
今シーズン ユトフ13.0点+スコット5.9点=18.9点⇒-6.9点
得点だけ見ると、-14.4点となり、大幅に下がっている。
昨シーズン、チーム全体としての平均得点が82.2点だったのに対し、今シーズンは76.9点で5.3点減っている。
現状では杉浦も西野も完全にフィットしているとは言えない状態なので、これから伸びてくると思う。さらにスコットのオフェンス・リバウンドが増えてくれば彼自身の得点も伸びて来ると思うし、チームの得点増加が期待できる。
比較してみると得点およびリバウンドでのユトフの功績は大きい。
一方スコットは期待されているような数字(11.7点、10.0リバウンド)を上げていないが、膝の故障が回復すれば数字は上がって来るはずだ。
話をチーム全体の昨シーズンとの比較に戻そう。
得点部門で云うとNo.23キング開(185㎝)とNo.30須藤昂也(186㎝)の若手コンビに期待したが開が-0.6点、須藤が-0.9点それぞれ微減している。数字的にはたいした問題ではないが、須藤の平均得点が4.9点と期待外れなことが心配である。
スリー(3点シュート)のスペシャリストNo.14大庭岳輝が怪我で欠場中なので、なおさらスリーで頑張って欲しいところだが、確率では35.2%から39.1%へ上がったものの試投数が3.6本から3.3本と下がっている。もう少し積極的に撃っても良いのではないだろうか。
今シーズンのビーコルのスリーは試投数及び確率が上昇している。試投数…簡単に言うと撃っている本数が1ゲーム平均27.6本だったものが今シーズンは30.9本と3本以上増えて、さらに確率も31.7%から35.3%へと大幅に良くなっている。ちなみに今シーズンのBリーグの平均3P成功率は33.1%なので、2.2ポイント程高く、リーグでは8位となっている。
また試投数部門では4位、成功数では10.9本で同じく4位となっていて、今シーズンのビーコルはスリー中心のチームになっていることがわかる。それだけにオフェンス・リバウンドを多く獲りたいものだ。
とはいうものの一番気になるのはNo.5河村勇輝(172㎝)のスタッツ(記録)。
11月12日vsサンロッカーズ渋谷戦ゲーム②終了時までの得点、3P成功数、アシスト、ターンオーバーの数をグラフにした。
今シーズン個人最高得点は群馬ゲーム②の40点。25得点オーバーのゲームは7回あり今シーズン平均は25.6点と驚異的な数字。
得点ランキング2位富樫勇樹(千葉ジェッツ)を4.9ポイント離しBリーグ1位。そういえば得点部門は今まで外国籍選手に占められていたが、今シーズンは3位に安藤誓哉(島根スサノオマジック)が入り、トップ3を日本人で占めていて、うれしい!
話を河村に戻すと、1ゲーム最高得点は群馬②での40点。スリー成功数も6本(確率50%)とシーズン最高で、チーム得点の半分入れている。これは異常と考えた方が良いのだろうか? それとも河村勇輝のスタンダードと考えた方が良いのか?
残念ながらこのゲーム、80-81の1点差で負けている。
グラフを見ると気が付く人も多いと思うが、河村の得点と勝敗の関係性は、勝ったゲームでの平均得点が26.3点で、負けた時は25.1点と1.2点差が付いている程度で、スリーの成功数もそれ程連動していない。たとえば群馬戦ではゲーム①30点、ゲーム②40点入れているが連敗し、翌週の琉球ゲーム①ではスリーが2/7(29%)17点でも勝ったが、ゲーム②ではスリー4/8(50%)23点でも負けている。
強いて関連性を探ると、スリーの成功率が少し関連するかもしれない。
10月21日の琉球ゲーム①(2/7、29%)を除けば、勝ったゲームでは40%を越している。また40%を越したゲームは6ゲーム在り、その内4ゲーム67%の確率で勝利している。
もっとも、河村の魅力はそのような統計的数値ではなく、重要な時(クラッチ・タイム等)にシュートを決められるか否かだと思う。
たとえば残り19秒に72-75とリードを広げられた11月5日(日)仙台戦ゲーム②。スリーを決めるしかない状況の残り10秒に撃ったスリーはリングに弾かれた。しかし杉浦が仙台の外国籍選手2人相手に競り合いながら大きく外へティップアウトすると、スリーポイント・ラインの外にいる河村の所へ。そのボールを取って左側へワン・ドリブルし大きくジャンプして肘を目いっぱい伸ばし手首のスナップだけで撃ったスリー。
ボールはそのままネットに吸い込まれ、2秒を残し同点に追いつきオーバータイム(延長戦)に持ち込んだ。クラッチ・タイム(終盤の勝負所)に決めた、いかにも河村と言うシュート。
https://twitter.com/i/status/1721364279226732739
バスケットLIVE( @BASKETLIVE_JP )公式Xより
11月5日(日)vs仙台戦ゲーム②ハイライト動画
ただ、クラッチ・シュートは河村といえども同一ゲーム内で何回も決められるわけではない。
たとえばこの仙台戦ゲーム②でもオーバータイムに持ち込むビッグ・ショットは決めたが、さすがにオーバータイムの終盤での最後のシュートは外している。
これは相手のマークがきつくなるうえ、当人に「俺が決める!」という気負いが生じるためだと思う。
クラッチ・タイムでなくても昨シーズンから河村へもマークはきつく、相手チーム全員が河村の一挙手一投足を見ている。当初はドライブからのアシストだけを警戒していたが、その後河村がシュートを積極的に撃つように転換すると、ディフェンスはドライブ時のシュートに対して圧力をかけながら、そこからのパスも警戒するようになった。
それを受けた河村はその場その場で対応するようになり、進化してきた。
河村の頭の中には「最後は自分が決めなくてはいけない、なぜならチームのエースだから!」と言う気持ちがある。これは河村がゲーム後の記者会で良く口にする言葉だ。他の選手が言うと嫌味っぽく聞こえるが、河村が言うと「そうだよな!!」と感じさせられる説得力がある(笑)。
■田中力選手 B.LEAGUE2023-24シーズン 特別指定選手登録
ビーコル・ユース出身(U15に在籍)で練習生としてチームの練習に参加していた田中力(186cm)を、10月27日付けで2023-24シーズンの特別指定選手として登録した。
横須賀の坂本中時代から注目され、ビーコル・ユースにも所属し、U16アジア選手権大会日本代表等に選ばれている。
フロリダ州のIBGアカデミーに進学後ハワイ州の高校、ミネソタ州の大学を経てビーコルの練習生となった田中が特別指定選手として登録され、早速ロースター入りし10月29日vs広島ドラゴンフライズ戦ゲーム②第4Q残り3分41秒 須藤と交代で登場し、残り2分01秒には速攻から初得点を決めた。
得点力とパスの力も持っており、これから楽しみな選手。
1946年生まれ。
月刊専門誌「バスケットボール・イラストレイテッド」の編集長を経て、バスケットボール用品のデザイナーとして活躍。特にキャラクター「あんたかベイビー」のTシャツは一世を風靡した。日本初のバスケット・ユニフォームデザイナーとしても活躍。当時強豪と言われる殆んどのチーム<実業団-大学-高校>に関して何らかのデザインを手掛けている。またスポーツ界では唯一のファッションのコラムを持っていた。
現在は自身のユニフォーム・ブランド「305」を立ち上た。
NBAに関しては「月刊バスケットボール・イラストレイテッド」編集者時代の1966年から連載を執筆。TV解説はNHK BS以前にも東京12チャンネルで1985年から行っており、日本最古のNBA解説者と言われている。
過去にはスポニチウェブサイトのNBAコラムを担当。月刊バスケットボール及び月刊バスケットボール・マガジン等に連載を持っていた。
横浜の中学・高校バスケの指導者、関係者とのつながりが深く横浜及び神奈川県のバスケ事情に精通している。
現在は横浜をホームとするBリーグ「横浜ビー・コルセアーズ」の名誉広報として情報発信やプレス対応などチームの広報活動に力を注いでいる。
また(社)神奈川県バスケットボール協会広報顧問も務めている。
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