vol.167「セカンドユニット」
明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
今シーズンのビーコルは強いと何度も書いていたが、本当に強い!
昨年のお正月時の成績と比べてみると一目瞭然。
2022年1月1日 8勝16敗(.333)東地区9位
2023年1月1日 15勝11敗(.577)中地区2位
ざっと振り返ってみよう。
10月26日の信州戦勝利以降 天皇杯・青森戦、天皇杯・川崎戦に勝利。
11月20日アルバルク東京ゲーム②にNo.23キング開(185㎝)とNo.5河村勇輝(172㎝)の活躍で83-77と勝利。11月26-27日新潟2連戦に連勝。
30日の川崎ブレーブサンダース戦は連戦疲れもあり60-98で連勝も小休止。
そして12月に入り快進撃が始まった。
3日、4日強豪・宇都宮ブレックスとの2連戦。87-77勝利後のゲーム②
No.5河村勇輝のほぼブザービーター・スリー(3点シュート)で73-72と逆転勝利し、宇都宮から初の2連勝で自信を深めた。
ちなみにこの宇都宮②で河村勇輝は34得点し、リーグでの自己最高得点を記録。さらに天皇杯・三遠戦で36得点している。
【ハイライト】残り0.5秒 河村勇輝の逆転3Pシュートで劇的勝利!宇都宮にアウェーで連勝! 2022.12.4|宇都宮 72vs73 横浜BC
その勢いのまま7日の天皇杯では三遠ネオフェニックスを95-85で下し、さらに週末のBリーグ・三遠2連戦も93-73、80-67と連勝。この時点で11月19日以来の22日間で8勝2敗と大健闘。
しかしさすがに22日間で移動ありの10ゲームは身体にキツイ。
翌週水曜日のシーホース三河戦に65-69で敗れ、週末の仙台89ERSゲーム①も53-72と落としてしまった。
となるとゲーム②は落とすわけにはいかない。No.9森川正明(191㎝)、No.14大庭岳輝(184㎝)が欠場しNo.1パトリック・アウダ(206㎝)もプレーせず選手は8人となったが、第2Qにひっくり返し88-61と大勝。
24日、25日大阪エヴェッサ戦も86-77、88-76で連勝。
さらに中地区のライバルで3位サンロッカーズ渋谷にはアウェーながら95-82と下し、年末を迎えた。
30日、東地区3位の強豪・群馬クレインサンダーズを迎え、天皇杯を含め3連戦の初日となる。
得点力は高いが失点も多い群馬(直近8ゲーム88.3失点。ビーコルは72.1失点)に95-82で勝ったものの、翌日のゲーム②はシュートが入らない日となってしまった。普通のシュートどころか簡単なゴール下のシュートすらポロポロと落としてしまう。このようなゲームは年に数回あるもの。それでも75得点しているから凄が、75-81で敗れ6連勝はならなかった。
しかしこの敗戦は悪くはないと考えていた。強豪相手に2連勝ですら厳しいのに3連勝は到底無理!
となると何処で1敗するかが大事。それがゲーム②だったので、正月4日の天皇杯は勝てると確信し、実際に3Qでの20点差をひっくり返し80-77で勝ちベスト4進出を決めた。
そして準決勝の相手はその週末2連戦の相手、琉球ゴールデンキングスとは笑うしかない。
年が明けた2023年1月7日、新年初のホームゲームは前述のとおり琉球戦。
1月7日、得意の強いディフェンスで直近8ゲーム平均得点78.4点の琉球に、67-51とロースコアで勝利し新春の門出を祝った。
しかし翌8日のゲーム②39-29と10点リードして迎えた後半、あの琉球相手に1勝を挙げ、さらにこのゲーム前半で10点差をつけ「あれっっこのまま行けるのでは?」と一瞬気が緩んだ様に見えた。リバウンドの飛び込みやルーズボールへの執着が緩くなって、よく言われる「フワッとゲームに入った」と感じた。
逆に琉球とすれば2連敗は絶対に避けたいところで、前半の倍ほどの気力とエナジーで向かってきて、2分半ほどで43-39と詰められ、最終Q立ち上がりに逆転され差を広げられたが、ビーコルは最後に必死のプレスで追い上げ、70-76で敗れたものの、その差はたったの6点!!
11月19日のアルバルク東京戦から1月8日琉球戦まで50日間に21ゲーム、15勝6敗という成績は立派だと思う。しかしながら平均で2.38日に1ゲームはきつ過ぎ、疲労が原因の故障者が増えそうだ。
来期はBリーグおよび日本バスケットボール協会が、スケジュール調整をシッカリやって欲しい!!
このビーコルの快進撃の主役といえば、もちろん河村。
河村といえば直ぐにアシストが上手く多いといわれ、実際にアシストは1月12日現在1試合平均9.3個で2位齋藤拓実(名古屋D)の7.6個を大きく引き離しリーグNo.1になっている。
アシストだけでなく得点においても16.6点で日本人の1位となっている。
先シーズンまで千葉ジェッツのコーチで天皇杯優勝もしている三遠ネオフェニックスの若き知将・大野篤史コーチは絶好調の河村に対し、得点よりもアシストを防ぐ守り方を選んだ。しかし「実際は30点以上の傷を彼に負わされた」と言わしめた。
アシストだけではなく得点も出来るPG(ポイントガード。コート上の司令塔)となれば対戦チームは河村を止める作戦を中心に考え、河村の抑え方を工夫する。
多くのチームは、シーズンの前半はアシストに的を絞りパスコースを抑えに来てたが、宇都宮戦のように32得点、34得点すると、アシストに絞るか得点させないディフェンスに絞るか、さらには両方を止めるか、どのチームも河村対策を立てて来るようになり、ゲーム後の記者会見ではどちらに的を絞ったのかを質問することが当たり前のようになった。
そんな中、12月末のゲーム後の記者会見で某チームのコーチに「河村のアシストを止める作戦だったのか得点を止める作戦だったのか?そしてそれは成功したと思うか?」という質問がなされた時、そのコーチは「2ゲームで25点15アシストという数字が証明してるだろう」と少しイラついて返事した。確かに数字的には河村ひとりを抑えたつもり(そのゲーム前の8ゲームスタッツを見ると、河村は1ゲーム平均22.3点8.4アシスト)なのだろうが、チームとしては2ゲーム合計174-153と大きく離され、さらにチーム得点でいえば当時のビーコル直近8ゲームの平均得点74.9を大きく上回っていた(笑)
河村に勝ち(?)ビーコルに敗れた!!
そのため多くの人には「ビーコルは河村を中心に回り、彼無しにはこの様な快進撃は無くビーコルは河村のチーム」と思われている。
ところが当人はそう思っていない。
アルバルク東京に勝った後、記者会見においてその様な質問が出た時「横浜は自分のチームではない。見てもらったらわかると思いますが、勝った試合は全員がステップアップし、全員が得点をとって、全員がバスケットをしている。横浜は全員が戦って勝つチーム。みんなに感謝をしながら、僕も勝利に貢献できるようなプレーを頑張りたい」と河村は語り、さらに森川やNo.18森井健太(178㎝)等先輩たちへのリスペクトを忘れていなかった。
つまりこれがビーコルの強さ!!
ビーコルのスタメンは12月頃から河村、No.6赤穂雷太(196㎝)、No.10チャールズ・ジャクソン(208㎝)、No.15デビン・オリバー(203㎝)、No.23キング開(185cm)に固定されている。
これに対しNo.1パトリック・アウダ(206㎝)、森川、森井、11月までスタメンだったNo.30須藤昂也(186㎝)とベテランNo.32エドワードモリス(203㎝)がセカンド・ユニット(Second Unit。第二班、B班とも訳す。映画では主役や主要な俳優が登場しない場面を撮影するためのチーム。メーン・ユニットとは別に行動する)と呼ばれる。
15年か20年ほど前だったか、NBAサンアントニオ・スパーズのグレッグ・ポポビッチという名将が第1Q(クォーター)の終盤にスタメンを下げベンチメンバーで第2Q中盤まで戦い、主力選手を温存し、勝負所で力を発揮できる体制を作り、優勝したことから「タイム・シェア」という言葉が流行った。スタメンの替わりに出てきたのがセカンド・ユニット。
そのためにはセカンド・ユニットとはいえディフェンス力や得点力が求められたが、短時間なので全力を投入できるため効果は高かった。
スパーズはこのシステムで優勝を続けたことからこのシステムは世界中に普及し、Bリーグでも用いられている。さらにいえば、ビーコルが強いのはモリスを除けば全員がビーコルでのスタメン経験者だということ。
良い例が森川で、11月中旬までスタメンを張っていた力を持っており、琉球戦までの8ゲームで平均得点は9.6点ながら、単位時間当たりの数値を示すIf40では21.0でビーコル内では5位となるエース・シューターである。青木コーチはその森川をセカンド・ユニットに回すことでセカンド・ユニットの得点力が上がり、スタメン選手が楽になった。
森川正明選手
No.1パトリック・アウダは、東京オリンピック・チェコ代表メンバーのサウスポー。ドリブルでATB(Attack The Basket ゴールに攻め込むプレー)や、ピックアンドロール(Pick and Roll.スクリーン・プレー後にリングに向かって走り込むプレー)からゴール下へ飛び込み、河村からのパスで得点するのが上手く、1ゲーム平均は8.7点だがIf40は23.1点でかなり高い。
須藤も少し前までスタメンで、スリーが得意の上ディフェンスにも定評があり、186㎝ながら2mの外国籍選手に付くことが多い。
そしてキャプテン森井は河村の陰に隠れているが、クレバーでスピードが有りディフェンスが得意な選手で、マークが厳しくなった河村に代わってパスを配給する。直近7ゲームではアシストIf40は河村の12.9に次ぎ11.4本となっていて、チームにおいて陰の中心選手になっている。
No.32エドワード・モリスはプレータイムこそ短いが、ディフェンス・リバウンドや老獪なディフェンスで地味に頑張っている。
ここに東海大からインカレMVPで河村の高校+大学の1年先輩であるNo.24松崎裕樹(193㎝)が加わり、No.14大庭岳輝(184㎝)がケガから戻れば厚みが出来る上、ユースから昇格したNo.31平岡勇人(185㎝)も活躍の場が出来るだろう。
(写真左)松崎裕樹選手 (写真右)平岡勇人選手
セコンド・ユニットを評価する良い数字が有る。
昨年暮れの群馬2ゲームと渋谷1ゲームの計3ゲームだけだが、得点と出場分数の比較が有る
得点
ビーコルスターター | ビーコルベンチ | 相手スターター | 相手ベンチ |
177点 | 88点 | 180点 | 65点 |
33.2% | 26.5% |
出場分数
ビーコルスターター | ビーコルベンチ | 相手スターター | 相手ベンチ |
367.1分 | 232.9分 | 400.2分 | 199.8分 |
38.8% | 33.3% |
上記の通り相手チームのベンチメンバーより出場時間が長く、得点も多いことが判る。
ここまで攻撃面の事しか書いていないが、今シーズンのビーコルの強さは本当はディフェンスにある。
昨シーズンのビーコルの失点平均は81.3点リーグで13番目だったが、今シーズン富山戦までの直近7ゲームの平均失点は75.0点で6点以上も失点を減らしている。これこそが今シーズンの強みだ。
ちなみに得点の比較すると、昨シーズンは76.5点でリーグ20位だったが、得点の少ない琉球2戦を含めても82.3点と上昇している。
今シーズンのビーコルはチケットが取れにくいとか…!これもひとえに河村人気のお陰!!
さあ 河村のプレーを見に行こう!そして応援しよう!!
次回のホームゲームは1月28日、29日vs京都ハンナリーズ戦@横浜国際プール
そして翌週に強豪千葉ジェッツ戦が控えている。ユウキ対決が面白いぞ!
【2022-23シーズン】ホームゲーム 観戦チケット販売情報(京都戦、千葉戦) | 横浜ビー・コルセアーズ (b-corsairs.com)
最後に天皇杯のことも書いておこう。
◆4次ラウンド 12月7日(水) @トッケイセキュリティ平塚総合体育館
ビーコル95-85三遠ネオフェニックス
◆QF(クォーター・ファイナルス)1月4日(水) @太田市民体育館
ビーコル80-77群馬クレインサンダーズ
◆SF(セミファイナルス) 2月15日(水) @沖縄アリーナ
ビーコルvs琉球ゴールデンキングス
1946年生まれ。
月刊専門誌「バスケットボール・イラストレイテッド」の編集長を経て、バスケットボール用品のデザイナーとして活躍。特にキャラクター「あんたかベイビー」のTシャツは一世を風靡した。日本初のバスケット・ユニフォームデザイナーとしても活躍。当時強豪と言われる殆んどのチーム<実業団-大学-高校>に関して何らかのデザインを手掛けている。またスポーツ界では唯一のファッションのコラムを持っていた。
現在は自身のユニフォーム・ブランド「305」を立ち上た。
NBAに関しては「月刊バスケットボール・イラストレイテッド」編集者時代の1966年から連載を執筆。TV解説はNHK BS以前にも東京12チャンネルで1985年から行っており、日本最古のNBA解説者と言われている。
過去にはスポニチウェブサイトのNBAコラムを担当。月刊バスケットボール及び月刊バスケットボール・マガジン等に連載を持っていた。
横浜の中学・高校バスケの指導者、関係者とのつながりが深く横浜及び神奈川県のバスケ事情に精通している。
現在は横浜をホームとするBリーグ「横浜ビー・コルセアーズ」の名誉広報として情報発信やプレス対応などチームの広報活動に力を注いでいる。
また(社)神奈川県バスケットボール協会広報顧問も務めている。
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