vol.162「河村勇輝がビーコル入団を決めた」
調子を上げてきた横浜ビー・コルセアーズ(以下ビーコル)。
その原動力の一つに特別指定選手(以下 特指。詳細は後述)No.5河村勇輝の加入が挙げられる。
昨シーズンから特指としてビーコルでプレーし、ずいぶんと助けられたが東海大の練習もあり、2月いっぱいまでのプレーだった。
今シーズンも12勝12敗の大阪エヴェッサ、18勝10敗の秋田ノーザンハピネッツ、同じく18勝10敗の広島ドラゴンフライズからの勝利やレバンガ北海道に2連勝等に大いに貢献しているため、下位チームとの対戦が多くなる3月以降にいてくれたらと望んでいた関係者やブースターは多かったと思うが、昨シーズン同様2月でお終いと思っていたはず。
◇急展開を迎えたのは3月5日15時だった。
記者会見が行われ、2022-23の来シーズンはプロ選手としてビーコルと契約をしたと発表した。
そして同時に21-22の今シーズン残りゲームを特指としてビーコルでプレーを続けることも発表した。
理由については後述するが、実はバスケに専念するため大学を中退することに。となると気になるのは在学中の東海大のこと。この件に関してはご両親及び東海大バスケ部陸川章監督とも良く話しをし、了解を得ている。
東海大とすれば有望なPG(ポイントガード)を失うことは痛手が大きすぎるはず。
しかし陸川監督からは「自分の人生だから、あなたの意見を尊重したい」と後押しを受けたという。個人を尊重するアメリカの強豪大のコーチなら言いそうだが、日本人としては大変に珍しくなおかつ立派な発言。心の大きな陸川監督ならではの流石の考え!
またこれまでも多くのアドバイスをしてくれた両親からは「自分で責任を取ることができるなら、プロの世界に行きなさい」との言葉をもらったという。
東海大でのプレーのは2年間の短い期間だったが、河村は「バスケットの幅が広がり、プロとしてやっていく上での基礎を学ぶことができました。バスケットだけではなく、大学生活を通じて人間としてもすごく成長することができました。心残りはありません」とも。
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◇それでは何故バスケに専念したいのか?
今回の決断は今年1月に入ってから意識し始めたのだが、理由は「2024年パリ五輪で日本代表としてプレーすることが目標」それが今回の決断の一番の要因になっている。
そのため2年間では短かく「焦りは有るのか?」との質問に対し「焦りとかではないですけど、あと2年という、自分の中では短い期間の中でバスケに打ち込める環境はやっぱりプロバスケのチームに加入することだと思いましたし、プロバスケ選手として活躍するために大学に入学して、この2年間基礎を学ぶことができたので、この決断が正しかったと思えるようにやっていくしかないです」と語っている。
さて河村のプレーについては前回書いた通りパスが上手くアシストが多いが、No.1パトリック・アウダ(206cm)とのピック・アンド・ロール(スクリーンを使い2人で行うプレー)は特に有名だが、ディフェンスでのスティール(ドリブル中のボールを手を伸ばして奪ったり、パスを途中でカットしたりして、相手ボールを自分達のモノにするプレー)も得意で、マッチアップするスピード自慢のPGから何本もドリブルを止めてきた。
◇さて河村加入でビーコルは変わったのだろうか?
それまで司令塔役のPGはNo.46 生原秀将とNo.18森井健太の2人だった。シュート力を持ち高いバスケIQをディフェンスに活かした生原と、攻守共にスピードを生かした森井のコンビだが2人足して1.8人前的な部分があり、さらに、生原は怪我が多く、2人だけ回すのはリスクが大きすぎる。
そこにスピードあるディフェンスで何本もスティールしたり、アグレッシブにリングへアタックし、ペイントへダイブ(飛び込む)してくるアウダや、外で待っているNo.30須藤昂也やNo.14大庭岳輝へのキックアウト、かと思えば苦しい体勢でもシュートを決めるなど、ビーコルに活気をもたらした河村の加入は大きな意味を持つ。
◇それではどれほどビーコルに貢献しているのだろうか?
河村が加入する前21ゲームと加入後15ゲーム(3月7日現在)のチームスタッツを比較する棒グラフを作ったのでみて欲しい。
*3PM=3点シュート成功数、3PA=3点シュート試投数、3P%=3点シュート確率 2Pは2点シュート。IPはゴール下シュート、下記参照。FTはフリースロー、ORB=オフェンス・リバウンド、DRB=ディフェンス・リバウンド、TRB=リバウンド総数、AST=アシスト、STL=スティール、BLK=ブロックショット、シュートを叩いてミスさせること、TO=ターンノーバー、ミス。PF=ファール
得点は75.1→77.4点と2.3点上昇している。河村の得点力が昨シーズン6.0点だったのが倍近い10.5点に増えているので当然であろう。
興味あるのは3PとIP(In The Paint,ゴール下四角部分内のシュート)の割合が大きく変わったことだ。
加入前のビーコルは3P攻撃が得意だったが、加入後はゴール下のシュートが多くなった。それが判るのはIPA(IP Attempt、ゴール下シュートの試投数)が31.3→37.2と2割近く増えていることだ。
これは河村自らのATB(Attack The Basket。ドリブルでリングにタックすること)でのシュートと共に、前述のようにATBしてディフェンスを引き付けておいてアウダ等へのアシスト・パスをすることが多いうえ、チーム全体としてATBが多くなっている。
FT(フリースロー)の確率が若干高くなっているのも河村のおかげ。尤も宇都宮2戦では2/6と散々な数字だが、ベクトンが足を引っ張ていたFT確率を彼の74.2%が高めている。
◇そんなことよりも、河村の代名詞といえるアシストとスティールについて
加入前は森井が毎ゲーム6.2本でリーグのアシスト・ランキングに名を連ねていたが、その森井と肩を並べて5.9本で、チーム内でアシスト数を競っているのは大きな強みだ。
ちなみに3月8日現在チーム内でアシスト5.5本以上を記録する選手が2人もいるのはビーコルだけ。
スティールに関しても色々と見せてくれる。
最近で言えば、宇都宮ゲーム①第4Q残6分38秒、宇都宮・鵤から渡邉のパスを読み切って見事にカットして悠々と速攻へ持ちこみ、後ろから走り込んできた生原へアシスト。
宇都宮ゲーム②第4Q残5分02秒 渡邉からフィーラーへのパスをスティールしそのままワンマン速攻で得点したが、相手のプレーを読む力とそれに跳びつく瞬発力は見事だった。
現在のビーコルの成績は13勝23敗と決して良いとはいえないが、強豪が揃う東地区所属ということと、スーパーAクラス(22勝以上)の千葉、A東京、川崎、宇都宮、琉球とは既に3/4ほど対戦したため、ブースターさんには悔しい思いをさせた敗けゲームが多かったと思うが、スーパーAクラスとの対戦は残りたった3ゲーム。
Aクラス(20勝以上)の秋田、広島、渋谷とは各1ゲーム残しているが、今シーズンは各チームから1勝以上あげており、Bクラス(15勝以下)とは5ゲーム、Cクラス(8勝以下)とは11ゲーム残している。つまり下位チームへ行くほど対戦数が多い。
今のビーコルの力ならAクラスとは互角の勝負ができ、Bクラスには7から8割の勝負ができるはず。
ということは勝ゲームが多くなるはず!
ぜひとも横浜国際プールや横浜武道館でビーコルの後押しをして欲しい!!
◆今後のホームゲーム・スケジュール
4月6日(水)vs新潟アルビレックスBB @トッケイセキュリティ平塚総合体育館
4月20日(水)vs広島ドラゴンフライズ @トッケイセキュリティ平塚総合体育館
4月27日(水)vsサンロッカーズ渋谷 @横浜武道館
4月29日(金)、30日(土)vs茨城ロボッツ @横浜武道館
詳細は 【観戦ガイド】4月度 ホームゲーム開催情報 | 横浜ビー・コルセアーズ
Go B-Cor!!
*特別指定選手―満22歳以下のバスケットボール選手を対象に、連盟の垣根を越えて、個人の能力に応じた環境を提供することを目的とする。つまり学生連盟等に籍を置いた状態でBリーグでのプレイが可能になる。ロスターの12枠を使わずに済むメリットがあり、経費等は出るが連盟登録者は無給が基本。
◆河村勇輝の経歴
#5 河村 勇輝(Yuki Kawamura) ポジション PG
生年月日 2001年5月2日
身長/体重 172cm/68㎏
出身地 山口県柳井市
出身校 柳井中学校→福岡第一高等学校→東海大学 在学中
【経 歴】
2016年8月 第46回全国中学校バスケットボール大会in福井 ベスト16
2018年4月 FIBA U16アジア選手権大会2017 日本代表 第6位
2018年8月 FIBA U18アジア選手権大会2018 日本代表 第5位
2018年8月 平成30年度 第73回国民体育大会バスケットボール競技 少年男子の部 優勝
2018年12月 SoftBankウインターカップ2018
平成30年度 第71回 全国高等学校バスケットボール選手権大会 優勝 ベストファイブ
2019年8月 令和元年度全国高等学校総合体育大会バスケットボール競技大会 優勝
2019年12月 SoftBankウインターカップ2019
令和元年度 第72回 全国高等学校バスケットボール選手権大会 優勝 ベストファイブ
2020年1月-3月 三遠ネオフェニックスに特別指定選手として加入(11試合出場)
【1試合平均スタッツ】 得点:12.6、アシスト:3.1、3P%:36.3% 出場時間:22分13秒
※1/25のデビュー戦でBリーグ(B1)史上最年少出場、最年少得点記録(18歳8カ月23日)を更新
2020年5月 「B.LEAGUE AWARD SHOW 2019-20 」新人賞ベスト5
2020年10月 オータムカップ2020(リーグ戦代替大会) 優勝
2020年10月 Forbes JAPAN「30 UNDER 30 JAPAN 2020」選出
2020年10月 第72回全日本大学バスケットボール選手権大会 優勝 3ポイント王
2020年12月 横浜ビー・コルセアーズに特別指定選手として加入(-2021年2月)(16試合出場)
【1試合平均スタッツ】 得点:6.0、アシスト:3.4、3P%:20.5% 、出場時間:21分16秒
2021年7月 第70回関東大学バスケットボール選手権大会 準優勝 優秀選手
2021年11月 第97回関東大学バスケットボールリーグ戦 優勝 優秀選手 アシスト王
2021年12月 第73回全日本大学バスケットボール選手権大会 準優勝 アシスト王
2021年12月 横浜ビー・コルセアーズに特別指定選手として加入
2022年2月 「第19回アジア競技大会(2022/杭州)」男子日本代表候補選手 強化合宿参加メンバー選出
代表歴 U16男子日本代表/U18男子日本代表/U20男子日本代表/U22男子日本代表/国体福岡県代表
1946年生まれ。
月刊専門誌「バスケットボール・イラストレイテッド」の編集長を経て、バスケットボール用品のデザイナーとして活躍。特にキャラクター「あんたかベイビー」のTシャツは一世を風靡した。日本初のバスケット・ユニフォームデザイナーとしても活躍。当時強豪と言われる殆んどのチーム<実業団-大学-高校>に関して何らかのデザインを手掛けている。またスポーツ界では唯一のファッションのコラムを持っていた。
現在は自身のユニフォーム・ブランド「305」を立ち上た。
NBAに関しては「月刊バスケットボール・イラストレイテッド」編集者時代の1966年から連載を執筆。TV解説はNHK BS以前にも東京12チャンネルで1985年から行っており、日本最古のNBA解説者と言われている。
過去にはスポニチウェブサイトのNBAコラムを担当。月刊バスケットボール及び月刊バスケットボール・マガジン等に連載を持っていた。
横浜の中学・高校バスケの指導者、関係者とのつながりが深く横浜及び神奈川県のバスケ事情に精通している。
現在は横浜をホームとするBリーグ「横浜ビー・コルセアーズ」の名誉広報として情報発信やプレス対応などチームの広報活動に力を注いでいる。
また(社)神奈川県バスケットボール協会広報顧問も務めている。
※タイトル・本文に記載の人名・団体名は、
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