「vol.160 追い風のビーコル」
<11月12日寄稿>
Bリーグ開幕したぞ!!
首を長くして待っていた開幕から一カ月経ちながらも横浜ビー・コルセアーズは6勝5敗で強豪が集まる東地区で6位と順調に航行を続けている!
振り返ってみると昨シーズンの今頃は3勝12敗、東地区最下位で強い向かい風にあえいでいた。キャプテンNo.46 生原秀将は膝のケガで開幕戦から欠場し、No.1パトリック・アウダは第4節の10月21日から合流で、メンバーが揃っていなかったことが大きな原因となっていた。
ところが今シーズンはコロナ禍の影響を大して受けず、外国籍選手が早くからチームに合流し、キッチリと一緒に練習できている。そして新コーチ青木勇人が練習日初日からコート上で練習を見ている。昨シーズンとは大違いだ!
開幕は「神奈川ダービー」として川崎ブレイブサンダースと2連戦。しかしながら64-82,73-90と大差の連敗で今シーズンもいつも通りか!?
と感じた人も多かったと思う。しかし、vs川崎戦は別と考えた方が良さそうだ、と勝手に解釈したが、この時はチームとして準備ができてなかったと感じた。なぜなら新メンバーが13人中6人もいるからだ。そしてそのほとんどが発展途上の若いメンバーでは、まだ気持ちもプレーも揃わない。
翌週は開幕戦と同じくアウェーで信州ブレイブウォリアーズ2連戦。信州は岡田を筆頭にアキノ、熊谷、前田と良い選手を補強した強敵。しかしNo.1アウダとNo.7レジナルド・ベクトンのI/S(インサイド。ゴール下近辺)攻撃に加え、No.30須藤昂矢とNo.9森川正明のスリー(3Pシュート)で84-75と先勝し、ゲーム②では信州の激しい追い上げをかわし、70-66と今シーズン初の2連戦連勝。
第3節は、I/Sに強いマカドゥとスリーを含め何処からでも得点できるハレルソンと日本代表選手ベンドラメ礼生のBig3に加え、スリーの得意な石井がいる強豪サンロッカーズ渋谷。平均得点81.8点と得点能力が高いチーム。
ゲーム① 後半の立ち上がり、SR渋谷の強いプレス・ディフェンスを攻められず38-45と離され、終盤はSR渋谷のスリー攻勢で77-89と敗れた。
ゲーム② No.9森川、No.1アウダが積極的にATB(ドリブルで攻め込む)してリードし、第2QにはNo.14大庭岳輝のスリーが爆発し、前半42-29とリードして終了。後半は、ディフェンス職人No.8古牧昌也が石井を徹底マークしいらつかせオフェンス・ファウルを取るという大活躍もあり、No.2レイトン・ハモンズのシュートも好調で80-73でリベンジし、3勝目を挙げた。
第4節は、日本代表選手の金丸晃輔、安藤誓哉とオーストラリア代表選手のニック・ケイを新規加入したニューパワー島根スサノオマジック。
ゲーム① 立ち上がりから島根の強いプレスに圧倒され0-13までリードされ心配したが、第2Qを11-28からスタートし、No.7ベクトンのI/S攻撃で徐々に差を詰め、36-40で前半を終了。第3Q6分にはNo.9森川のATBでついに45-44と逆転、No.7ベクトンのFT(フリースロー)などで62-55とリードして最終Qへ繋いだが、ビーコルが常に一歩リードして進み何度も追い付かれそうになるが、決して逆転される事なく83-80で逃げ切った。
ゲーム② 第3Qまで互角に進んだものの最終Qでビュフォード、トラビスに得点されOTO(オフィシャルタイム)時に69-81と12点差にされてしまった。
今までならここで集中力を無くしてズルズルと離されたものだが、今シーズンは違った!
No.9森川がスリー、No.1アウダがI/Sで、更にNo.2ハモンズがスリーを決め79-90と追い上げると島根は2分56秒にたまらずCTO(タイムアウト・この場合のCTOは自分達のプレーに関する指示が多いもの)。
すると、ビーコルの青木コーチはそれを逆手にとってスローインからのプレスを指示!プレッシャーを掛けNo.18森井が安藤のドリブルを奪いNo.9森川に繋いで81-90と一桁差に。更に島根の攻撃をショットクロック(24秒ルール。簡単に言うとチームはボールを保持してから24秒以内にシュートしなければならない)ギリギリまで追い詰め、ボールを得るとATBしたNo.9森川がシュートに見せかけNo.32エドワード・モリスへ絶妙なアシストで83-90。
次の攻撃で、ビュフォードがドリブルでマークマンのNo.46生原をスピンターンでかわそうとするが、No.46 生原に体勢を崩されたところへNo.18森井が飛び込んでヘルド・ボール。島根ボールとなりビュフォードに返されるが、次の島根の攻撃でボールを運ぶビュフォードにNo.46生原が食らいつき1分29秒ヘルド・ボールに。この時いらついたビュフォードが生原を押したとしてテクニカル・ファウル。
No.46生原はFT1本決め84-92。更に島根のパスミスを誘い、ビーコル・ボールになると、ゆっくり回した後No.18森井がうまく切れ込んでレイアップを決め49秒86-92と、11点差から6点差まで追い上げ島根にCTOを取らせた。
その後FTで2点を与えるが、6.7秒にNo.2ハモンズがスリーを決め89-94と5点差に。
そしてファールゲームに出たが最後は決められず89-95で終了したが、最後まで諦めないばかりかディフェンスの強度を高めたビーコルを見て、会場へ来ていたブースターのみなさん同様「今シーズンのビーコルは違う」と感じた。
敗けたものの5勝5敗で勝率.500と、上々の成績。
3日後の10月27日水曜日。アウェーで秋田ノーザンハピネッツと対戦。秋田の主力デイビスが欠場ということも有り、70-63で勝利し6勝5敗で貯金生活に突入。
しかし、重要なのはその週末のシーホース三河との2連戦だ。なにしろ三河は7勝2敗で西地区2位の強豪チーム。ここには元海賊・細谷将司がいるがこの対戦にはけがで欠場。しかし、三河の主力は巨漢ガードナー(平均得点20.1。以下同じ)、ユトフ(13.9点)、西田(11.6点)の3人だけではなく、新加入の角野(厚木中出身、9.1点)と長野(9.8点)の5人がほぼダブルフィギュア(二桁得点者)で、更にコリンズワース、シェーファーの二人も平均7点以上と穴が無いチーム。更に平均失点74.6点はリーグ平均失点80.1点を大きく下回り、ディフェンスの強さを示している。
11月6日(土)vs三河ゲーム① お互いにシュートが決まらずイライラする展開。第2Qに入ってもビーコルはシュートが決まらず、前半のシュートは9/36(確率25%)と低すぎる内容ながら、後半はNo.9森川に加え若手のNo.8古牧とNo.14大庭のシュートで追い上げ45-51で最終Qへ突入した。第4Qの立ち上がりでもたつく間に45-60と離され51-64でOTOを迎えたが、ここからまたもビーコルの反撃が始まる。No.7ベクトンとNo.1アウダのI/SやNo.30須藤のシュートで、61-64とビーコル得意の終盤の追い上げで3点差まで迫ったものの、63-67で逃げ切られてしまった。
とはいえ、3分で10-0の追い上げは見事だった。
11月7日(日)vs三河ゲーム② 前半は三河にリードを許したものの、34-40のロー・スコアはビーコルのペースとも言える。そして後半、火を噴いたのが元三河のNo.9森川。パス回しから得意のスリーを連発し、更にはユトフへ対しNo.18森井とNo.30須藤でWチームを掛けてボールを奪うなど積極的ディフェンスから3分間で41-40と逆転し更に54-44と差を広げた。最終QもNo.9森川を中心に満遍なく得点し、前日の勝利で西地区1位になった三河を79-67と大差を付けて下し、6勝5敗で勝率5割越を果たした。
《横浜ビー・コルセアーズTwitter 3Q6:28 森川3P》
《横浜ビー・コルセアーズTwitter 3Q7:00 アウダ2P》
この時期に勝ち越しているのはBリーグ加入後初の快挙!
それではなぜビーコルはこれ程強くなり 良いスタートダッシュをかけられたのだろうか?
【1.分析力が素晴らしい】
ゲーム②の勝利が多いこと。
信州、SR渋谷、島根、三河と4回の2連戦中、信州、SR渋谷、三河と3回勝利した。ちなみに島根戦はゲーム①で勝利していて判断が難しい(笑)
以前から私が主張していたが、Bリーグなど2連戦では実力に大差が無い場合1勝1敗が多くなるが、その場合はゲーム②の勝者が真の勝者だと思っている。
根拠は、ゲーム①はスカウティングして1週間対策を練って挑むが、弱いチームの方が熱心にスカウティングして対策してくるので、力量にそれほど差が無い場合は弱いチームが勝つ可能性は高い。
しかし、ゲーム②は前日のゲームを分析し修正してゲームに臨むわけだが、正しい分析と対策ができ、なおかつ選手が修正を実行できるチームが勝つ、つまりレベルが高いコーチと選手が集まった強いチームが勝つと思っている。
今シーズンのビーコルはスーパースター不在のチームと言える。まぁ、あえてスーパースターを言えばチェコ代表選手のNo.1アウダか?
それでも上位チームに勝っている。三河は11月6日のゲーム①で勝ったことで西地区の首位になった強豪。それを79-67と大差で下したと言うことは、選手達は、シュートはうまくなくても「クレバーで適応力が高くディフェンスがうまい」と言うことだ。
勝利したゲームを振り返ると、平均得点74.3点(以下対戦前のスタッツ)の信州を66点に抑え、同じく81.8点のSR渋谷を73点に抑え、86.7点の島根を80点に抑え、81.7点の秋田を63点に抑え、81.1点の三河を2ゲームとも67点に抑えた。
凄い分析力と対応力だと思う。
今シーズンのスタッフはGM(ゼネラル・マネージャー)竹田謙、ヘッドコーチ青木勇人、アシスタント・コーチ山田謙治と、現役時はいずれも一流選手だった人間で構成されている。このことは他チームに見られない点で、私はこれこそがビーコルの強さだと思っている。
一流だった選手はそれなりに考えたプレーをして来たはずで、更に優勝などの特別な経験も積んできていて、それが強みになっていると思う。
実は最近まではそうは思わず、若干バカにしていたところもあった(笑)
しかし、実際に話を聞いたりバスケットLIVEの解説を聞いていると、奥が深かったり先が見えていることが多い。これこそ一流選手だった強みで、知識のひけらかしではないことが判る。
これがビーコルに活かされているのだと思う。
そしてコーチの青木の戦略は、想像以上高度だった。
もっと細かく書きたいが、長くなるので、、、
今シーズン絶好調なのがNo.1アウダ。チェコ代表で東京2020オリンピック(7月下旬から8月上旬)に出場したことで、世界の強豪国と対戦し、より多くの経験を積んだこと。そして夏の間、他選手が休んでいる時に身体を動かしていたことも好調の原因で、ビーコルが苦しい時にねじ込んでくれる大魔神。
【2.No.9森川の大躍進】
次に挙げなくてはならないのが、身長191cmのフォワードで今シーズン大躍進のNo.9森川。
そこで、昨シーズン(2020-21)と今シーズン(2021-22)のスタッツを比較してみよう。
出場分数が2分以上、得点が4点強、スリーを撃った本数(3PA)も、入れた本数(3PM)も、確率(3P%)も高くなっている。一番嬉しいのは、ATB(ドリブルで中へ切り込むプレー)が多くなったためI PA(ゴール下付近のシュート数)が増えたこと。
スリーだけしか撃てない選手のことをアメリカでは「チキン(臆病者)」と呼び、それ程評価は高くないがATBが多くI Pでのシュートが多い選手の評価は高い。
更に昨シーズンと大きく違う点は、大事なところで決め切っていること。
例えばvs信州ゲーム②、最終Q63-53とリードしていたが猛追され65-64と1点差に詰められた残1分01秒、FTライン少し手前の微妙な距離のプルアップ・ジャンパー(急ストップ後のジャンプシュート)を決め67-64と離し信州にCTOを取らせ、更に33秒後にNo.46生原からのパスでスリーを決め70-64として勝負を決めた。
vsSR渋谷ゲーム②でも、72-60と12点差あったリードを10点差につめられた残3分45秒にプットバック(オフェンスリバウンドを獲って直後のシュート)を決める。
更に30秒後ドリブルで持ち込み、ディフェンスの裏をかいてリングを通過してリバース・ショットを決め、76-62と差を開き80-73と逃げ切っている。
昨シーズンはNo.9森川だけではなく、ビーコル自体大事なところで決めきれず負けたケースが多かったが、今シーズンはそれを決める力が付いたことが、ビーコルが勝ち進んでいる一つの原因だと思う。
他にも強くなった要因は多々あるが、それを書くと終わらなくなるので、ここからは手短にまとめよう。
◆外国籍選手が2人残留したこと。ディフェンスを始めとする連携プレーが積み重ねられること。チームのムードや伝統を理解していることなどの利点が多い
◆シーズン前の練習、合宿も揃ってできたこと。No.2ハモンズ以外全員揃っていたため、有意義な練習ができた。
◆No.30須藤の進化。攻撃も積極的になり、ディフェンスも本領を発揮しだした。
◆No.18森井の活躍。スピードスターがPGの本領であるアシスト5.1本リーグ9位、スティール1.3本、生原と並んで18位。
◆No.7ベクトンの進化。苦手と思われていたFT。確率が46%から68%と急上昇。更に、昨年まで多かったベクトンのファウルが減った(3.7→2.5個)ことで、最後までコートにいること。
◆No.8古牧昌也の相手シューターを阻止するエースキラーとしての活躍と明るいムードメーカー。
◆No.46生原が開幕から出場し続けている。コートに立っているだけで存在感がある。
これから川崎、千葉、琉球という上位チームとの対戦が待っているので、真価が問われる12月になるが、ビーコルは強くなっているので、是非とも会場へ応援しに来て欲しい!
次節以降のホームゲーム開催情報(会場はいずれも横浜国際プール)
◇12月11日(土) vs 川崎ブレイブサンダース
◇12月12日(日) vs 川崎ブレイブサンダース
◇12月25日(土) vs 琉球ゴールデンキングス
◇12月26日(日) vs 琉球ゴールデンキングス
◇2022年1月2日(日) vs 大阪エヴェッサ
◇2022年1月3日(月) vs 大阪エヴェッサ
1946年生まれ。
月刊専門誌「バスケットボール・イラストレイテッド」の編集長を経て、バスケットボール用品のデザイナーとして活躍。特にキャラクター「あんたかベイビー」のTシャツは一世を風靡した。日本初のバスケット・ユニフォームデザイナーとしても活躍。当時強豪と言われる殆んどのチーム<実業団-大学-高校>に関して何らかのデザインを手掛けている。またスポーツ界では唯一のファッションのコラムを持っていた。
現在は自身のユニフォーム・ブランド「305」を立ち上た。
NBAに関しては「月刊バスケットボール・イラストレイテッド」編集者時代の1966年から連載を執筆。TV解説はNHK BS以前にも東京12チャンネルで1985年から行っており、日本最古のNBA解説者と言われている。
過去にはスポニチウェブサイトのNBAコラムを担当。月刊バスケットボール及び月刊バスケットボール・マガジン等に連載を持っていた。
横浜の中学・高校バスケの指導者、関係者とのつながりが深く横浜及び神奈川県のバスケ事情に精通している。
現在は横浜をホームとするBリーグ「横浜ビー・コルセアーズ」の名誉広報として情報発信やプレス対応などチームの広報活動に力を注いでいる。
また(社)神奈川県バスケットボール協会広報顧問も務めている。
※タイトル・本文に記載の人名・団体名は、
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