vol.147 八村やビーコルのこと
NBAが開幕して1か月半、八村塁が頑張っています!!
TVでは毎日のように八村の活躍ぶりをニュースで取り上げ、今日は何得点でダンクを何本しました、と言ってくれます。TVでNBAとかバスケの話題が連日取り上げられるのは、史上初のことです!!
過熱気味といっても間違いじゃないですね。
私が素晴らしいと思っているのは、開幕の10月24日(現地時間23日、以下日本時間)から12月9日のLAクリッパーズ戦までの22ゲーム全てに出場しているだけではなく、連続してスタメンを張っていることです。ルーキーでは珍しいですね。
通常アメリカの大学のゲーム・スケジュールは、水曜日と金・土日の週末いずれか1日で週2ゲームがほとんどですが、NBAは前述の通り10月24日から12月9日までの47日間で22ゲーム、つまりほぼ2日に1回ゲームをしていることになります。かなりタフなスケジュールになっています。
更に過酷なのは、移動距離が長いってことなのです。
開幕週の4日間はアウェー・ゲームばかりで3ゲーム行いましたが、ウィザーズの移動した距離は、ワシントンからの往復を含めると合計約5,000キロに及びます。これは、東京からマレーシア・クアラルンプール間の直線距離に匹敵するそうです。下の地図をご覧ください。緑ラインの日本地図は同縮寸になっています。北海道から沖縄までの距離と、アメリカの南北がほぼ同じです。
NBAでは2日に1ゲーム感覚、それも上の図を見ると分かる通り、同じチームとの連戦はありません。アウェーの場合はゲーム後、すぐに空港へ向かい次のゲーム地へ向かいます。チャーター機なので、ファンや他人の目を気にすることがなく搭乗手続きもないのが救いですが。
かなり昔になりますが、NY州のバッファローへバッファロー・ブレイブスvsボストン・セルティックスのゲームを見に行った時のことです。前日にホテル入りしましたが、たまたま深夜にロビーにいたら、長身者がゾロゾロと入ってきました。何のことかと思ったら、セルティックスの選手たちでした。ゲームが終わり、着替えやインタビューを終えると11時くらいになり、それから飛んできたわけで選手たちはグッタリしていました。それでも、前ゲーム地で宿泊して昼頃に現地入りして夜ゲームするより、現地でゆっくりしたほうが良いとのことです。
そのため、ルーキーは1か月目くらいに疲れが出てくるといわれています。ホーネッツ戦が丁度1か月目に当たりますが、チームも良く考えていて、その辺り数ゲームはプレータイムを少なくしています。勝利したスパーズ戦とホーネッツ戦こそ15得点してますが、他は一桁得点になってますね。
とはいえ、この数字が八村の評価を下げるものではありません。
下のグラフは八村のゲーム毎の出場時間、得点、リバウンドを表したものです。
今のところ八村の数字と勝敗の因果関係は見られません、といってもこの時点で8勝14敗ですから、ビーコルより勝率が低いので関係性は出しにくい所ではあります(^^;
11月最終ゲームのvsレイカーズ戦から、得点とリバウンドが急激に増えました。得点はバラツキがあるものの、15点以上をキープしリバウンドも5個以上獲得しています。
実はこれほど活躍できるとは思っていませんでした。
1か月目辺りで軽いけがをして、数ゲーム休むのじゃないかと思っていましたし、得点も平均7点でリバウンドも4個くらいじゃないかと予想していました。
それが良い意味で予想を裏切られました。
現在1ゲーム平均のスタッツはプレータイム29.6分、14.2得点、5.8リバウンド、FG%(野投確率)48.4%、FT%(フリースロー確率)88.9% ←かなり高いです。誰かも見習ってほしいくらいです。
ただFTアテンプト(試投数)が1.0なのは低いですね。もっとぶつかり合いして欲しいものです。
なぜこれほどの数字を残せるのでしょうか?
身体能力自体は、ほかのNBA選手と比べると高いわけじゃありませんが、身体の使い方がうまいですね。力でねじ伏せようとするアメリカン・バスケではなく、相手の裏を読む技術とステップワークを使い、スマートなプレーのユーロ・タイプに近いといえます。
そして日本的なところも。アメリカの選手には、数字を上げてサラリー交渉を優位にしようとして、自己的な点取りに走る選手もいますが、しっかりと自分を律してチーム・プレーができている感じがします!!
技術的には素早い動きが多いと思います。ダンクにしても、大きく振りかざして豪快にダンクするのではなく、素早くジャンプしてコンパクトに決めてくるダンクが多いと思いませんか?
ジャンプでは最高点への到着時間が早いと思いませんか、だからディフェンスの手が届く前にダンクできるのです。
話はそれますが、「ダンクが一番安全なシュート」と多くの人は思っているようですが、見方を変えると、リングの手前に手を出しておけば防げるってことです。ダンクの場合、コースは一つしかないのですから!!!
八村のハイライトを見ていて感じた方も多いと思いますが、左手でのシュートが多いと思いませんか?
多くのアメリカ人は右手でしかシュートを撃ちません。ユーロの選手は、右から行けば右手でシュートしますが、左から行けば左手でシュートします。その方がブロックされづらいからです。ダンクにしても右手で来ると想像していたディフェンスは対応できません。身体能力がずば抜けているわけではないので、左手でシュートしたり、ピボットを踏んだりするのです。
つまり八村は、「ユーロ系の技術の高さ+アフリカ系の身体能力+日本人の良い精神構造」を持っているから、NBAで成功しているのだと思います。
どこまで進化するのか楽しみな選手です!!
◆横浜ビー・コルセアーズ◆
10月23日(水)新潟に勝ち、Bリーグになって初めての貯金生活となったビーコルでしたが、名古屋Dに連敗して元に戻ってしまいました。その後、滋賀に1勝1敗、大阪に連敗し5勝8敗となった所までを先月書きました。
翌週16-17日(日)の川崎戦は、ゲーム①で#2橋本尚明(180㎝ハッシー)と#7レジナルド・ベクトン(206cm)が怪我で欠場し、連敗しました。
その後、オールジャパン(第95回天皇杯・第86回皇后杯 全日本バスケットボール選手権大会)2次ラウンドのためのブレイクがあり、12月7日(土)から再開されましたが、#14ジョルジー・ゴロマンと#42ジェイソン・ウォッシュバーンの二人が契約解除となりました。新たに昨シーズン三河でバックアップのフォワードとして活躍していた#00ジェームズ・サザランド(James Southerland、203cm/100㎏)と、2シーズン前ビーコルで活躍し、昨シーズンは三遠でプレーしていたウィリアム・マクドナルド(William Mcdonald、206cm120kg)の2人を獲得しました。
もはや恒例行事となってしまった、ビーコルの外国人メンバーチェンジ劇です。
サザランドはATB(Attack The Basket)もスリー(3点シュート)も撃てる点取り屋で、三河時代の3P%は40.7%と、かなり高い数字を弾き出しています。ビーコルへ来る前は、アメリカのDリーグ(NBAの下部的組織)だけではなくフランス、イタリア、ドイツだけではなくプエルトリコでもプレーしていたということは各種タイプのバスケに適応してきているはずなので心強いです。29歳という年齢はベテランの部類に入りながらも身体能力は衰えていないはずで、これも良いですね。
マクドナルドの身長は低いものの、身体の幅を使ったI/S(インサイド、ゴール下周辺)のプレーとリバウンドが得意で、三遠では全ゲームスタメン出場していました。
サザランドは、ブレイク明けの12月7日(土)vs新潟戦から登場し、ゲームリーダーとなる18得点を挙げ71‐64の勝利に貢献し、更に翌8日(日)の67-63の勝利にも13得点で貢献しており、今後も楽しみな選手です。
勢いに乗って次の11日(水)の川崎戦も、と期待したブースターさんも多いと思いますが、川崎は別格です。
川崎以外にも強豪チームは多いのですが、コンスタントに強豪チームと呼ばれるチームはA東京、宇都宮(元栃木)、千葉くらいでしょうか。渋谷が入るかどうか?!
川崎が凄い点は、チーム・ポリシーが一貫していることです。
2011年からヘッド・コーチに北卓也が就任しましたが、守ってきたのは「ディフェンス」。
いつ聞いても「東芝(川崎)はディフェンスです!!」と北から戻ってくる言葉は同じでした。というのも、東芝時代は今のようにスーパーの付く選手が入ってこなく、ディフェンスの強化がチームの強化に繋がっていたからです。ディフェンスを強くした結果、決勝に進出し、優勝もできたわけです。
それを北が引き継ぎ、今シーズンから佐藤賢次が引き継いでいるのです。選手も大幅に変わっているわけじゃなく、核となる選手は、外国人も残しながら毎シーズン数名だけを入れ替えてきました。だから川崎(東芝)の考え方は、コーチだけではなく選手にも引き継がれ、身をもって次の世代へ受け継がれるのです。
これが伝統というものです。
それに対しビーコルは、今シーズン生まれ変わったばかりです。発展途上のチームですから、負けることが多いと思いますが、一発逆転、アップセットもあるのが魅力なんです!
ビーコルの今後のスケジュールは、東地区2位(14勝5敗)A東京、同4位(12勝7敗)千葉と計4ゲームありタフな12月中旬です。その後同じ地区最下位の三遠ネオフェニックス(1勝18敗)と同4位(5勝14敗)シーホース三河と合わせ3ゲームありますが、勝利で2019年を締めくくってほしいですね!
ホーム・ゲームは年内29日までやっています、スケジュールで確認して下さい。
◆蒲谷「3」 山田「13」が永久欠番に!!
11月16日(土)横浜国際プールのvs川崎ブレイブサンダース戦前に、蒲谷正之と山田謙治の引退セレモニーが行われ、その場で蒲谷の「3」と山田の「13」の永久欠番が発表されました。
花束を受け取る蒲谷(左)と山田(右)
二人ともbjリーグ時代チーム創立時のメンバーで、山田はbjリーグのドラフト1位で、蒲谷はFAで入団しました。
蒲谷は初代キャプテンで、勝負強いシューターとして知られ、bjリーグ・ファイナルでの3P5/5を含む35得点は未だにブースターさんの脳裏に焼き付いているはずです。
詳しくはVol.69「ビーコル優勝」
一方山田は、蒲谷からキャプテンを引き継いだ横浜市出身の選手で、高校バスケの名門・秋田県立能代工業校に進んだバスケIQが高いPGです。
二人についてはvol.46「ビーコル選手発表」のコラムで書いていますのでご参照ください。
ちなみに、他チームの永久欠番を調べてみました。
ライジングゼファーフクオカ 11-川面剛
大阪エヴェッサ 44-リン・ワシントン
琉球ゴールデンキングス 50-ジェフ・ニュートン
日立サンロッカーズ東京・渋谷 11-菅裕一
千葉ジェッツふなばし 0-佐藤博紀
以上、5人しかいません。
1946年生まれ。
月刊専門誌「バスケットボール・イラストレイテッド」の編集長を経て、バスケットボール用品のデザイナーとして活躍。特にキャラクター「あんたかベイビー」のTシャツは一世を風靡した。日本初のバスケット・ユニフォームデザイナーとしても活躍。当時強豪と言われる殆んどのチーム<実業団-大学-高校>に関して何らかのデザインを手掛けている。またスポーツ界では唯一のファッションのコラムを持っていた。
現在は自身のユニフォーム・ブランド「305」を立ち上た。
NBAに関しては「月刊バスケットボール・イラストレイテッド」編集者時代の1966年から連載を執筆。TV解説はNHK BS以前にも東京12チャンネルで1985年から行っており、日本最古のNBA解説者と言われている。
過去にはスポニチウェブサイトのNBAコラムを担当。月刊バスケットボール及び月刊バスケットボール・マガジン等に連載を持っていた。
横浜の中学・高校バスケの指導者、関係者とのつながりが深く横浜及び神奈川県のバスケ事情に精通している。
現在は横浜をホームとするBリーグ「横浜ビー・コルセアーズ」の名誉広報として情報発信やプレス対応などチームの広報活動に力を注いでいる。
また(社)神奈川県バスケットボール協会広報顧問も務めている。
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