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あんどうたかおのバスケにどっぷり

vol.136「ビーコルに追い風が吹いてきた」

 

 遅くなりましたが、あけましておめでとうございます!!
 読者の皆さん及び横浜ビー・コルセアーズ(以下ビーコル)にとって、良い1年になりますように!
 
 

 ご存知の方も多いと思いますが、低迷を続けていたビーコルが、年末年始の4ゲームで2勝しました。それも西地区の首位と2位チームからです。

 その勝因は何でしょうか?

 良い外国籍選手が取れたことと、メンバーが固定されたことと、ディフェンスが良くなったことです。
 
 

 先ず外国籍選手について書きましょう。

 シーズン開幕時は、フォワードのアマンゼ・エゲケゼ(203㎝、アメリカ・ベルモント大)とインサイド(リング近くや、そこでプレーする選手のこと。以下I/S)のチャールズ・ガルシア(208㎝、アメリカ・シアトル大)とジャボン・マックレア(206㎝、アメリカ・ニューヨーク・ステート大)の3人でした。
 
 

 10月末にガルシアが契約解除になり、代わりに同じくI/Sに強いNo.11プリンス・イベ(Prince Ibeh208cm アメリカ・テキサスステート大、以下プリン) が新加入となり、11月末にはエゲケゼが契約解除になり、12月始めにNo.33アーサー・スティーブンソン(Arthur Stepheson203㎝、アメリカ、ノースカロライナ大-USC、以下アレックス)と契約し、12月25 日にマックレアを契約解除し、翌26日に外から点の取れるNo.34ブランドン・コストナー(Brandon Costner,206cmアメリカ・ノースカロライナ・ステート大。以下BC) と契約しました。

 I/Sで得点力のあるアーサーとディフェンスの良いプリン、外からの得点力を持ったBCが加わり、バランス良い布陣になりました。

 多分これでメンバーは落ち着くでしょう。そうなればディフェンスも良くなってくると思います。
 

 

 今回の補強の第一は、以前からトム・ウィスマン・ヘッドコーチ(以下コーチ・トム)が欲しがっていた「外からの得点力」と言う点で、BCが大きな鍵となっています。

 これまでBig Manばかりを重視して、I/Sで得点を重ねてきました。しかし、Big Man中心の攻撃でもある程度得点できるのですが、相手にI/Sを重点的に守られると苦しくなります。またI/Sばかり揃えても、I/Sに選手が多すぎてスペース(空間)が狭くなり、ディフェンスも集まるため、逆にお互いを潰し合うことになってしまいます。

 その上I/Sが多いと、自分たちのディフェンス時には重たくなり、外からのシュートへの対応が悪くなります。このリーグでは、ワイドオープン(ノーマーク状態)ならほとんどスリー(3点シュート、3Pとも書く)は決まりますからね。
 
 

 また、I/Sで得点したとしても、簡単にスリーを決められると、差は1点ずつ離れていきます。3Pの力は大きいですからね。その上、NBAでも最近は3P重視となってきています。ゲームとして面白いか、そうでないかは別として。

 だから、外からの攻撃は大事になるのですが、リーグ内でスリーの成功数は13位で、確率も30.4%の15位と低迷しています。スリーがもう少し入れば、得点も増えると思うのですが。
 

 

 これまでのビーコルで外からの攻撃、主に3Pを得意と自他ともに認める選手と言えば、確率35%(1ゲーム平均アテンプト(試投数)5.4本)のNo.1川村卓也(193cm以下タク)と誰もが思っているかもしれませんが、実はNo.0細谷将司(173cm以下マーシー)の方が36%(1ゲーム平均アテンプト4.6本)で若干高いのです。好不調の波が大きくてそう感じないのかもしれません。もっと積極的に撃てば良いと思うのですが、、、。

 実はもう一人36%の選手がいます。それは超ベテラン40歳のNo.25竹田謙(188㎝以下ケン)なのです。皆さんの感覚ではあまりシュートしない選手、となっていると思います。そうなんですよね、2ゲームで1本程度しかスリーを撃っていませんが、しっかりと決めてくる選手、というイメージがありますね。

 特別指定選手のNo.6中村太地(190㎝以下タイチ)もスリーが好きで、若者らしくベンチからコートへ出るとすぐにスリーを撃ちますね、この積極性が良いです。

 現在平均アテンプトは1.9本、確率は28%ですが、コンスタントにスリーを2本ほど決められたら強くなります。この選手はATB(Attack The basket。リングにドリブルで攻め込むプレー)もできるので、今後が楽しみです。

 また、ビーコルでスリーと言ったらこの人、キャプテン#5湊谷安玲久司朱(191㎝以下アレク)は欠かせません。現在は足の状態が万全でないために、要所要所で力を発揮していますが、元気になれば面白いです。

 このほか相手チームをかき回すのが上手いPGのNo.21田渡凌(180cm以下リョウ)は、外からのドライブでフローター(外からI/Sへ入り込み、大きい選手を前にしてボールを浮かせるようなフワッとしたシュート)は絶品ですね。その上スリーだけじゃなく、どこからでも撃てる選手で、アベレージ10点取れる貴重な選手です。
 

 

 3Pだけじゃなく外からの得点に関しても、これまではタクに比重が掛かっているため、他チームは「川村だけ守ればビーコルはちょろいもの」との認識がありました。タクをベタマーク(ボールの保持不保持に関係なく、常に密着したディフェンス)で追い回し、更に他の選手も常にタクの動きをけん制し集中していたため、タクは得点するために大変なエナジーを使っていたわけです。

 そのために、最終盤でガス欠を起こすこともあったわけなのです。
 
 

 ところが、BCが外から入るようになると、相手はタクだけマークすれば良い、と言う訳にはいかなくなります。少しマークが緩くなる可能性も出てきます。そうなれば、タクの得点も多くなるはずです。そしてマーシーやリョウの得点も。

 そのためにも、タクとBCが上手く噛み合わなければなりません。
 
 

 そのBCですが、年明けの名古屋ダイヤモンドドルフィンズ(以下名古屋)2連戦で39点、28点と荒稼ぎしました。BCについて名古屋の梶山コーチはゲーム①後に「事前のスカウティングで、サウスポーで良い選手だと聞いていて、オフェンスマシーンと感じた。フェイクなどで彼独特の巧さがあった。ある程度の得点は仕方がないと考えていたが、あまりに簡単に打たれた。ドライブでコースを抑えてもスピンなどで方向を変える力を持っていて、今日は抑えるのが難しかった。」と得点力の高さを評価していました。

 それを示すのは、12月中BC加入前の川崎+富山+大阪+A東京の7ゲーム得点が平均63.7点だったのが、加入後は69.8点と大きく増えています。
 
 

 またコーチ・トムは「コストナー選手が来たことによって、オフェンスでリラックスできるようになった。オフェンスを任せられる選手が来たことで、ディフェンスに集中できるようになった」とも言っていました。12月中、BC加入前の川崎+富山+大阪+A東京での失点が平均83.0点だったのが、加入後は82.2点と若干ながら低くなっています。

 加入直後の2ゲームを除けば平均得点70.3点、失点78.5点と大幅に改良されています。
 

 

 さてそのディフェンスですが、シーズン前からコーチ・トムはディフェンスを強化したいと言っていましたが、上手くいっていません。理由は簡単です。何度も書いていますが、コーチ・トムが理想とするゾーン・ディフェンス(以下ゾーン)は完成するには時間が掛かります。その上主要な外国籍選手が何人も入れ替わってしまっては、常に振り出し状態のため、完成には程遠いものがあります。

 未完成のゾーンは、逆に相手の餌食になります。パスで態勢を崩され、外からスリーを撃たれるパターンは開幕から非常に多く見られ、それが敗因になっていました。

 当時コーチ・トムは「対戦相手はビーコルとのゲームで3Pの確率が高い」と嘆いていましたが、その原因は、ワイドオープンで撃たれることが多いためでした。
 
 

 そこで、12月初めころからマンツーマン・ディフェンス(以下M2M)を使い始めました。当初はゾーンから移行したため慣れないことも多く、リードされると直ぐにゾーンに戻してしまい、中途半端な時期が続きましたが、12月15日(土)の大阪エヴェッサ戦でM2Mが成功し2勝を挙げました。

 翌週22日(土)は、今シーズン最強の一つアルバルク東京にM2Mで挑みましたが、見事に粉砕され56‐88と大差をつけられました。A東京には田中大貴、馬場雄大、竹内譲次というナショナルチーム(全日本代表チーム)メンバーがいますから、こんなものでしょう。

 しかし翌日は、ゲーム前に長いミーティングを行い、強い気持ちのこもったM2Mで挑みました。68‐89と差はつきましたが、良いディフェンスができ、課題の第3Qに大差をつけられる欠点も無く、良いゲームとなりました。
 
 

 26日(水)アウェーの新潟戦は立ち上がりにペースを掴まれ、そのままズルズルとなり、残念ながら68-97と大敗しました。
 
 

 そして、年末の琉球ゴールデンキングス(以下キングス)との2連戦。水曜日の寒い新潟戦後に、日曜日に遠くて暖かい沖縄行きとなり、体調も万全ではない状態のまま30日(日)を迎えました。3Pを含めたシュート率25%と絶不調のビーコルに対し、スリー40%と好調のキングスには歯が立たず、42-83と大敗を喫してしまいました。惨めなまま年を越すのかと暗くなりましたが、大みそか31日(月)の海賊たちは違いました。
 
 

 ゲーム前にコーチ・トムは「昨日は情けない試合をしてしまった。選手たちにプライドを見せていこう、プライドを取り戻そう」と話し、選手たちも強い気持ちで臨みました。開始早々タクのプルアップシュート(ドリブル等で急ストップしての素早いジャンプシュート。ストップ・ジャンパーとも言う)から始まり、リョウが遠めのスリーを決め、更にタクがジャンパーを決め7得点する一方、強いディフェンスで約4分間無得点に抑えキングスからリードを奪いました。

 その後は逆転され35‐37で前半を終えましたが、課題の第3Qはエアーズの8点だけに抑え、リバウンドで圧倒し、攻めてはBCが7点とり、このQを14‐8で優位に立ち、最終Qには一時55‐45と10点差をつけました。
 
 

 終盤にキングスは、古川の3Pや岸本のATBで猛追を掛け、残59秒に64-61と3点差まで追い上げられましたが、ここでBCがフリースロー(以下FT)を2本とも決め5点差に離したのが大きかったですね。その後攻防の切り替え時に、お互いがメンバーを替える頭脳戦に出ました。残14秒、キングスはそれまで24得点のエアーズがスリーを決め、68‐66と2点差まで迫ってきましたが、次のプレーでキングスがファールゲーム(残り時間が少なく負けているチームはワザとファールして相手にFTをさせ落ちて自分たちのボールになることを期待するギャンブル的プレー)に出ると、予期していたビーコルはFT確率の高いタクにボールを渡し、ファールされます。

 タクがFTの1投目を外しヤバイと思いましたが、2投目はしっかり決め69-66としました。この1点は大きいです。13秒で3点差となると、スリーで同点にするか早めに2点を取りプレスしてボールを奪うか!?

 しかしキングスにはタイムアウト(以下CTO)が残っていません。自陣のエンドラインからのスタートとなり、3Pを撃つまで時間が掛かり、十分な準備ができないまま橋本が打ち外れてゲームセット。

 チームとしてbj時代も含めvs琉球戦初勝利となりました。
 
 

 気持ち良く迎えられたお正月、相手はキングスと同じ西地区2位の名古屋との対戦です。このチームにも勝ったことがありません(汗)。

 この日も立ち上がりからM2Mの強い守りで、名古屋を5分以上野投での得点は許しませんでした。攻撃はこの日もタクのスリーで始まりましたが、その後はI/SのプリンとBCのATBで22-10とリードを奪いました。その後追い上げられましたが、46-42で折り返します。

 考えてみてください。前半だけで42得点です、暮れのキングス戦ゲーム①の総得点と同じです。得点力がついたと感じました。
 

 

 後半は、カミングスに思うままにやられ、37点(このゲーム全体では40点)取られ追いつかれ、97‐97でオーバータイム(延長戦)に突入しました。ビーコルはOTO(オフィシャルタイムアウト)後の追い上げにエナジーを使い切り、オーバータイムでは2点しか取れず、悔しい敗戦となりました。

 勝ち慣れていれば勝てたと思うのですが、、、。
 
 

 翌6日(日)ゲーム②。普段はTip Off2時間以上も前からシューティングしているビーコルの姿がコートにありません。この日はコーチ・トムの長いミーティングで出てこられなかったのですが、日本的に言うと「気合の入ったミーティング」だったようで、重要事項を繰り返し注意されたようです。こんな日はビーコル強いんです!!
 
 

 スタメンはタク、リョウ、ケンの、この数ゲーム固定されている日本人に加え、今日はI/Sディフェンス重視という事でプリンとBCです。

 先制点はタクのスリーでしたが、その後シュートが入らず、残5分53秒5‐7となった時に早くもコーチ・トムがCTOを要求。

 その後BCにボールを集め得点し始め、更にATBを多用し名古屋のファールを誘い、やっとペースを掴み27‐13と大差をつけ第1Qを終了しました。

 第2Qも相変わらずBCがリングにアタックを掛け、更にベンチスタートのタイチがATBして上手いシュートを決める一方、前日40得点のカミングスを6点に抑えて、37‐28で前半を終了しました。
 

 

 しかし後半は名古屋も積極的にATBし、更にBCをマークして得点を抑え、残5分31秒、43‐42と1点差に追い上げられたところでCTO。若干遅いと感じました。

 それでもその後はタクが積極的にシュートに行き、3分後に54‐47と差を開き、逆に名古屋にCTOを取らせました。

 その後もタクがディナイ(ボールを取らせないようにパスする人寄りに位置するディフェンス)してくるマークの逆を突くリバースカット(バックドアとも言う)でゴール下へ切れ込み、BCからのパスを受け得点を重ねると、名古屋は3Pで対抗し67‐66と大接戦でOTOへ。
 
 

 その後、名古屋は笹山がATBを決め、残3分30秒に67‐68と逆転したものの、これが名古屋最後の得点となりました。

 ビーコルは、タクとのスクリーンプレーからBCがゴール下へ入り込み、そこへタクからのアシスト。タクにマークが集中したために、ノーマークになったプレーです。

 そして次は逆に、BCからリバースカットしたタクへアシストし71-68とし、更にディフェンスを頑張り24秒バイオレーション[攻撃側はボールを保持してから24秒以内にシュート(ボールがリングにはいるか触ること)しなければならない]を取ったのが大きい!!

 この時間帯で、ディフェンスが頑張ったという証しなので、チームが盛り上がります。実はバイオレーションを取れないまでも、名古屋にギリギリでシュートさせたことは何度もありました。ディフェンスが良くなった証拠です!

 名古屋は次のポゼッションでも、あのカミングスがプリンの上手いディフェンスで、トラベリングを取られました。明らかに焦っている状態です。

 とは言え、ビーコルもシュートが入らずジリジリした展開になりましたが、ゲームが動いたのは残48秒に取った名古屋のCTOから。

 その後、名古屋はチーム・ファールが「0」だったことから、積極的にファールをして時計を止めますが残18秒、笹山のアンスポーツマンシップ・ファールで、2FT+ボールポゼッションを得ますが、なんとリョウが2本とも外してしまいました。

 しかしボールはビーコルのものです。スローインされたボールはタクの手へ。当然名古屋はファールします。

 そこでタクは2本ともキッチリ沈め、16秒を残して73-68。

 名古屋最後の攻撃は、勝負強い笹山や、この日最高得点で3Pも3/6の安藤ではなく、この日6得点3P0/3の中東に撃たせました。

 ボールはリングの根本に当たり、フロアに落ちたのをリョウが取り、直ぐにBCへ、ここで勝負あり。

 数秒残っていますが、名古屋も諦めて新年1勝をあげました。
 

 

 これで8勝23敗と相変わらず低迷していますが、ディフェンスが良くなったことと、外からも得点できるようになったことで、徐々に勝ち数は多くなると思います。ディフェンスの強さが増し、オフェンスでアイコンタクトができるようになるまでは、1カ月は掛かると思ってます。

 海賊の逆襲は2月から?!
 
 

 面白くなりますよーー!!

あんどうたかお プロフィール

1946年生まれ。

月刊専門誌「バスケットボール・イラストレイテッド」の編集長を経て、バスケットボール用品のデザイナーとして活躍。特にキャラクター「あんたかベイビー」のTシャツは一世を風靡した。日本初のバスケット・ユニフォームデザイナーとしても活躍。当時強豪と言われる殆んどのチーム<実業団-大学-高校>に関して何らかのデザインを手掛けている。またスポーツ界では唯一のファッションのコラムを持っていた。

現在は自身のユニフォーム・ブランド「305」を立ち上た。

NBAに関しては「月刊バスケットボール・イラストレイテッド」編集者時代の1966年から連載を執筆。TV解説はNHK BS以前にも東京12チャンネルで1985年から行っており、日本最古のNBA解説者と言われている。

過去にはスポニチウェブサイトのNBAコラムを担当。月刊バスケットボール及び月刊バスケットボール・マガジン等に連載を持っていた。

横浜の中学・高校バスケの指導者、関係者とのつながりが深く横浜及び神奈川県のバスケ事情に精通している。

現在は横浜をホームとするBリーグ「横浜ビー・コルセアーズ」の名誉広報として情報発信やプレス対応などチームの広報活動に力を注いでいる。

また(社)神奈川県バスケットボール協会広報顧問も務めている。

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