vol.134「負けは多いが期待は出来るビーコル」
11月だと言うのにまた温かくなるとか、、、
さて、横浜ビーコルセアーズは11月5日現在、3勝9敗と大きく負け越しています。
情けないと思われるかもしれませんが、先月号(vol.133)で書いた通り、メンバーの半数以上の7人、それも外国人が全取っ換えの状態では、簡単にチームの体をなし得ませんし、ディフェンス主体、それもゾーン・ディフェンスとなるとそのシステムを身に付けるまで、時間がかかると思っています。
その代わりディフェンスが機能し始めたら強いチームになりますよ!!
写真提供:横浜ビー・コルセアーズ
それでは3勝9敗の内訳を簡単に振り返りましょう。
①②ゲーム(10/6.7)
アウェー富山グラウジーズ戦については、vol.133で書きました。
③④ゲーム(10/12.13)
アウェー京都ハンナリーズ戦。80-84、81-87で連敗。
⑤ゲーム(10/17)
またも富山戦。84-88で敗戦。
⑥⑦ゲーム(10/20.21)
滋賀レイクスターズ戦。80-76、72-70で今シーズン初勝利及び連勝。
⑧ゲーム(10/24)
新潟アルビレックスBB戦。72-88で完敗。
⑨⑩ゲーム(10/27.28)
アウェー、サンロッカーズ渋谷戦。84-79、73-77で1勝1敗。
⑪⑫ゲーム(11/3.4)
またも新潟戦。72-79、63-87と連敗。
確かに負けが多いのですが、その相手は富山と新潟で各3戦・計6敗と言う事になっています。⑤ゲームの富山戦は4点差の接戦です。ゲーム⑪の新潟戦も72-79で一度は逆転もしています。②③ゲームの京都戦も勝てそうな展開を落としたもので、まるっきりダメと言うわけではありません。
それでは、負けゲームについて詳しく解説していきましょう。
負けゲームの特徴は、相手の巨漢にインサイド(ゴール下近辺、以下I/S)でゴリゴリと身体を当てながら、押し込まれてのシュートを決められることです。
開幕戦の富山戦ではゾーン・ディフェンスが機能せず、と言うよりやり方が徹底してなかったために、簡単にI/Sへボールを入れられ負けてしまいました。主力に変動が少ないチームの優位性が発揮され、パスを上手く回されましたね。ジョシュア・スミスに2ゲームで64点取られました。
ゲーム②ではスミスにディフェンスを集中させ過ぎ、外から大塚裕士、船生誠也、水戸健史やもう一人の外国人レオ・ライオンズに得点されました。
接戦した京都にはI/Sにデイヴィッド・サイモンがいますが、ゴリゴリ・タイプではないため、そこそこ抑え、ジュリアン・マブンガと言うアウトサイドの選手も抑えたものの、晴山ケビンと岡田優介の3Pシュートにやられてしまいました。
シーズン開幕当初で、12人の登録メンバー中6人、そしてプレータイム合計200分中109分が新加入選手という、まるで新チームになったと考えると、チームが全然出来ていない状態で接戦、もしくは勝てたかも、と言うところまで行ったわけですから、大健闘と言って良いのじゃないでしょうか!!
⑤富山グラウジーズ戦
⑤ゲームはまたも富山戦で、負けはしましたが4点差と接戦でした。
I/Sのスミスを19点に抑えしっかりと守り、攻めては#8アマンゼ・エゲケゼ(203cm、以下アマンゼ)の3Pが決まり、#21田渡凌(180cm、以下リョウ)の活躍も光りましたが、最後まで追いつけなかった感じです。しかし、前2ゲームの得点差が2ゲームで36点と大差だったことを考えると、大進歩と言えます。
このゲームは、アマンゼ+チャールズ・ガルシア(208cm、以下チャック)+#32エドワード・モリス(203cm、以下エド)とオン・ザ・コート・スリー(外国人+帰化選手で3人が一緒にプレーすること)でスタートしました。
「ビッグ・ラインナップは良い面もあったし、ゾーン・ディフェンスについてはある程度成功したものの、ファールが多くなったという悪い面も出てしまった」と、トーマス・ウィスマンHC(以下コーチ・トム)はゲーム後に反省していました。
⑧ゲーム、初の新潟戦。ここにはスミス以上の元祖巨漢のダバンテ・ガードナー(203cm、132㎏)がいます。現在、平均得点29.0でリーグ得点王です。
彼を抑えることが勝利に繋がりますが、大変です。と言うのは、富山と違い外からの得点力が高く、I/Sのガードナーばかりにディフェンスが集中すると、外から五十嵐圭を筆頭に上江田勇樹やベテラン池田雄一が3Pを撃ってきます。
このゲームのティップ・オフ(ゲーム開始のこと。サッカーはキック・オフ、ホッケーはフェイス・オフと言う)時に、センター・ジャンプしたラモント・ハミルトンが着地時に足を捻り、その場で退場となるアクシデントが起こりました。元々外国人2人登録の新潟は、外国人がガードナー1人となったわけです。
ビーコル・メンバーは「やった!!」と思ったでしょうね。
なにしろ外国人はビーコルが3人に対し新潟は1人だけですからね。一方新潟はと言うと、それほど焦っては無いようでした。元々ビーコル用にゾーン対策はシッカリしていて、その上I/Sの攻撃が弱くなるとみて外からの攻撃中心にして、更に体力消耗を防ぐためスロー・ペースに持ち込む作戦に切り変えました。
やったと思ったビーコルですが、これが間違いの始まりでした。多くのチームが起こしやすい間違いです。
よくあることですが、ゲーム途中で相手外国人がファールアウト(5反則退場)などで一人も外国人がいなく日本人だけとなり、相手チームの身長が低くなった時にも起こるのですが、I/Sが弱いと思って無理やりI/Sを攻めようとすることです。練習通り自然にI/Sを攻めるのであれば良いのですが、そうじゃないとオフェンス・リズムが崩れ自滅することが多々あります。その上、相手チームも奮起してフル・パワーでディフェンスに来るため、攻撃リズムが崩れることがあります。
正にそれが当てはまりました。
そのうえ、それまで柏木真介と上江田の二人合わせても平均で2本も入ってなかった3Pを、合計7本も決められる誤算があり、敗れてしました。
写真提供:横浜ビー・コルセアーズ
そしてアウェー渋谷戦。ここはゴリゴリ系の外国人はいません。ロバート・サクレ(八村塁の大学の先輩)という能力の高いセブンフッター(7フィート。213cm)がいますが、ボールは主に、もう一人の外国人ライアン・ケリー(211cm)が持つ事が多くなっています。ケリーはシュート能力が高いため、I/Sよりミッド・レンジと呼ばれる中長距離のシュートは得意です。
ただ、このチームはこの二人で平均35点近く取ります。しかし、二人以外は3番手のベンドラメ礼生ですら平均8.5点と少なく、対戦時のチーム平均得点は66.2点と低く、得点源が偏っていて守りやすい相手ではありました。本来は、素晴らしい得点力を持っている選手ばかりなのですがねーー!!
ちなみに、サクレとケリーはNBAロサンゼルス・レイカーズで3シーズン一緒にプレーしていました。NBAで3シーズンもプレーすることって、大変なことなのですよ。NBAの選手生命は2年未満だと、以前聞いたことがあります。
前日84-79と勝利後、ゲーム②は敗戦でした。
いつも通りオンザコート・スリーでスタートし、アマンゼも#36ジャボン・マックレア(206cm、以下ジャボン)もリョウも好調で、ゾーン・ディフェンスも効いていて、更に第2Qは#0細谷将司(173cm、以下マーシー)がゾーンに入り、スリーを連発し51-36で前半を終了しました。
前日も勝ち、今日も大差をつけた、となると弱いチームはすぐ油断して気が緩むものです(汗)。
10月21日の対滋賀②では24点差をひっくり返し大逆転勝ちしましたが、逆に前シーズンの1月28日、名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦で24点差をひっくり返されたことは記憶に新しいことです。滋賀は、勝ったと思い逃げに入りました、パスが多く積極性が無くなり、ATB(Attack The Basket。リングに向かってドリブルで突破すること)をしなくなりました。ビーコルの名古屋戦も同じでした。そしてこの日も、、、。
前半5本も打っていたマーシーなのに、1本しかスリーを撃っていません。他の選手もATBしません。それでズルズルと差を詰められ逆転されてしまった、というわけです。
完全に油断して気が緩んだことによるもので、バカみたいな負け方で、大きな反省点ですね!!
そして11月3日(土)4日(日)に行われたvs新潟2連戦。
ゲーム①では、前回の反省からガードナーがI/Sでボール持つと積極的にWチームへ行き、そこからのパスを難しくさせ、外からのシュートのリズムを崩しましたが、ガードナーはペイント・エリアの外でボールを受けドリブルで攻めてくるようになり、15-18と一歩リードされ第1Qを終了しました。
第2Qはガードナーへのパスを抑え、外へのディフェンスも良く、新潟は攻めあぐんでいたのですが、ベテラン柏木が苦しみながらもスリーを決めるため、32-41と離されて前半終了です。
I/Sを重点的に抑え、外へのディフェンスも良かったのですが、ゾーンなのでパスで回されるとどこかが空く選手が出てきます。そこを柏木にスリーを決められました。第2Qだけで柏木の5本を含む7本のスリーを決められてしまいました。
後半は柏木を抑え、更に立ち上がり#1川村卓也(193cm、以下タク)が積極的に攻め出し57-56と逆転し、その後接戦が続きます。終盤で新潟は、ガードナー自ら攻めると共に、自分は少し外に出てI/Sのハミルトンへアシスト・パスを入れたりし、攻撃パターンを変えておいて、最後はやはりガードナーのI/Sで締められ72-79と惜敗しました。
ここは、新潟の得点力の高さとゲーム巧者ぶりが発揮されたゲームでしたね。
ゲーム② 前半はどうにかついていきましたが、新潟はガードナーの代わりにハミルトンをI/Sに置き、重点的に攻めてきました。そうなるとI/Sで守るところが二か所となってゾーンでは守り切れなくなりました。
更に攻撃ではATBをしなくなって簡単に外からばかり撃つようになり、当然シュート確率も下がり、リバウンドから速攻を出されるパターンに。新潟には珍しい3連続の速攻で、残1分38秒に46-63とされ勝負あり!!
とここまでは、敗戦の悪いことばかり書いてきましたが、敗因は相手に巨漢選手がいる特異なケースでやられると言えます。こんなチームは富山と新潟だけで、今後この両チームと対戦するのは6ゲームだけです。
早いシーズンでこのような強いチームと集中的に対戦できたことは、今後おおいに役立つと思います。
さて時間を10月に戻しましょう。これからは勝ちゲームの話です!!
写真提供:横浜ビー・コルセアーズ
20日(土)21日(日)の滋賀レイクスターズ戦。
ゲーム①は、例によってオンザコート・スリーとタク、そしてPG(ポイントガード、ゲーム・コントロールするポジション)としても、SG(身長は低いが得点力のある選手)としても好調なリョウでスタート。ビーコルはディフェンスが良く機能し、接戦が最後まで続きましたが、残4分のオフィシャル・タイムアウト後にマーシーの2本のスリーで滋賀を振り切り80-76で今シーズン初勝利しました!!
勝ちましたーーー!!
大事なのは、ゲーム②です。
このリーグは、同一チーム相手に連勝出来るほど甘くはありません。思った通り滋賀は、強いディフェンスと主力のガニ・ラワルがI/Sで得点し、キャプテン狩野祐介がスリーを連発し、第3Q残6分37秒には30-54と24点差を付けられ、これで勝負あった、と思ったのですが、、、。
大逆転劇の始まりです!!
この日は、タクとアマンゼが好調で徐々に追い上げ、更にディフェンスではI/Sへのパスを良く止めて失点を抑えると、最終Q残2分には、タクがこの日23点目となるスリーを決め68‐70と追い上げ、更にタクのシュートミスをジャボンがプットバック(オフェンス・リバウンドを取った直後にシュートをすること)を決め70-70と同点にしたのが、終了まで48秒の時点。
ここで滋賀がCTO。
ビーコルはディフェンスです。ハイポストのフィッシャーへのパスをジャボンが横からスティールしビーコルのコートにボールを持ち込むと、リョウが落ち着かせた後、左ウイングのタクへボールを渡します。
そこへジャボンがディフェンスの狩野に対し、セオリー通り彼の左側へブロックを仕掛けに行きます。狩野は当然そこを抜いてくるだろうと(現に2分前は同じ位置から同じように攻めてジャンパーを決めています)。
その意識もあって、タクが左側へドリブルのフェイクを掛け、ディフェンスの体重を左脚にかけさせると、逆側を抜きました。当然滋賀はフィッシャーがカバーに来ますが、それを避けてフワッとした難しいフロートを撃ちました。
入れば逆転!!
ボールはそのままリングに吸い込まれ、18秒を残して72-70と大逆転で、場内は天井が吹き飛ぶのではないかと思われるほどの大歓声!!
ゾーンに入った川村卓也のプレーをPICK UP❗
動画提供:横浜ビー・コルセアーズ
その後滋賀は3Pを撃ちますが、ボールはリングの手前に当たりルーズボール状態に。この時の両チームのボールへの執念は凄まじいものでした。
この時点で残りたったの1.1秒。
これはヘルド・ボールになり、順番の関係でビーコル・ボールとなり、逃げ切りました。
2連勝です!!
27日(土)の渋谷ゲーム①
前節の滋賀戦では、ゾーン・ディフェンスを敷いていましたが、いきなりマン・ツー・マン・ディフェンス(以下M2M)で意表を突きました。
ライアン・ケリーとロバート・サクレの元レイカーズコンビにI/Sでやられ、第2Q6分22-28とされたところで2回目のCTOを取ると、ディフェンスをゾーンに変更しましたが効果は出ず、23-34まで離されます。しかし、残4分18秒に渋谷が不要と思えるCTOを取りました。
ここで、ビーコルがディフェンスをゾーンからM2Mに変えると、渋谷は得点できなくなる一方、ビーコルは積極的な動きで渋谷のファールを誘い、FTだけで33-36と差を詰めました。
これぞ、トム・マジックです!
後半に入りディフェンスも機能し、攻めては、ジャボンがI/Sで堅実に得点し追い上げ更に逆転し、第3Q残3秒にはマーシーがスリーを決めて、57-54としたのが効きました!
最終Qは、タクとアマンゼのスリーも決まり、残43秒ジャボンがFTを2本とも決め82-74として勝負あり!
滋賀戦から引き続いての勝利で、3連勝です!!
ここまで3勝9敗ですが、上位チームとの対戦が6ゲームで、今後は同じような成績のチームとの対戦が多くなります。ディフェンスは、ゲームを多くするほど良くなるので、今までみたいなフラストレーションが溜まることは少なるはずです。
これからも応援をよろしくお願いします!!
「横浜ビー・コルセアーズ提供」
今後の予定
11月
・10日(土),11日(日)vs大阪エヴェッサ@おおきにアリーナ舞洲
・17日(土),18日(日)vsライジングゼファー福岡@横浜国際プール
・23日(金・祝),24日(土)vs琉球ゴールデンキングス@横浜国際プール
12月
・8日(土),9日(日)vs川崎ブレーブサンダース@川崎市とどろきアリーナ
1946年生まれ。
月刊専門誌「バスケットボール・イラストレイテッド」の編集長を経て、バスケットボール用品のデザイナーとして活躍。特にキャラクター「あんたかベイビー」のTシャツは一世を風靡した。日本初のバスケット・ユニフォームデザイナーとしても活躍。当時強豪と言われる殆んどのチーム<実業団-大学-高校>に関して何らかのデザインを手掛けている。またスポーツ界では唯一のファッションのコラムを持っていた。
現在は自身のユニフォーム・ブランド「305」を立ち上た。
NBAに関しては「月刊バスケットボール・イラストレイテッド」編集者時代の1966年から連載を執筆。TV解説はNHK BS以前にも東京12チャンネルで1985年から行っており、日本最古のNBA解説者と言われている。
過去にはスポニチウェブサイトのNBAコラムを担当。月刊バスケットボール及び月刊バスケットボール・マガジン等に連載を持っていた。
横浜の中学・高校バスケの指導者、関係者とのつながりが深く横浜及び神奈川県のバスケ事情に精通している。
現在は横浜をホームとするBリーグ「横浜ビー・コルセアーズ」の名誉広報として情報発信やプレス対応などチームの広報活動に力を注いでいる。
また(社)神奈川県バスケットボール協会広報顧問も務めている。
※タイトル・本文に記載の人名・団体名は、
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