vol.130 男子日本代表も頑張った!
サッカーのワールドカップで、日本は、頑張りましたね!!
でもバスケット男子日本代表も、頑張ったことを知ってください。
◆FIBA男子バスケットボールワールドカップ2019 アジア地区 1次予選
昨年11月からスタートした「FIBA男子バスケットボールワールドカップ2019 アジア地区 1次予選」。少なくとも、ここを突破しないと2020東京オリンピックの出場は見えてきません。
この予選は従来と異なり、ホーム&アウェー方式で行われます。つまり自国で1ゲーム、相手国で1ゲームと言う方式です。これまでは、リーグ戦の最中に開催と言う変則的なもので、チームとしての練習時間が少なく、組織立ったバスケットが得意の日本にとって、良い条件ではありませんでした。
5月末時点でオーストラリアとチャイニーズタイペイの2戦が残されてましたが、Bリーグも終わり、合宿に入り、やっと本格的なチーム作りができきました。
日本代表チームは5月末時点、4戦全敗で「グループB最下位」と厳しい状況に立たされており、次の2次予選に進出するためには、残り2戦でグループ4チーム中3位に入ることが絶対条件でした。
【5月末時点グループB順位表】
1位:オーストラリア(勝ち点8/4勝0敗)
2位:フィリピン(勝ち点7/3勝1敗)
3位:チャイニーズ・タイペイ(勝ち点5/1勝3敗)
4位:日本(勝ち点4/0勝4敗)
※勝ち点は、勝ち=2点、負け=1点
6月29日、日本がオーストラリアに負け、なおかつ同時刻に行われるチャイニーズ・タイペイvsフィリピン戦にチャイニーズ・タイペイが勝つと、その時点で予選敗退が決まります。この両ゲームで、日本とフィリピンが勝つと、最終ゲームの日本vsチャイニーズ・タイペイの勝者が勝ち残ることになり、いずれにしても2連勝が求められてました。
そして迎えた6月29日、世界10位のオーストラリアを千葉ポートアリーナに迎えての戦いです。アジア最強で、NBAに何人も送り込んでいるオーストラリアに対して、昨年11月27日に行われたWindow1では58-82と大敗しているうえ、今回オーストラリアは更に、現役NBA選手2人追加してきました。ガードのマシュー・デラベドバ(191cmミルウォーキー・バックス)とソン・メイカー(216cmミルウォーキー・バックス)です。
デラベドバはご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、身体を張ったディフェンスをするガードで、相手からすると汚いプレーと言われる、ファールギリギリのディフェンスで相手から嫌がられる選手です。また、オフェンスではシュートに積極的で、なおかつ勝負どころで決められる力を持っています。13-16年まで、クリーブランド・キャバリアーズで活躍しており、15年のNBAファイナルで、ステフィン・カリーにマッチアップして苦しめたのを、思い出した方も多いと思います。
一方、メイカーは機動力を持ち、細身なのでインサイドより外でのプレーも多く3Pも打てるセンターで、ディフェンスでのブロックが強みです。ビーコルにいたハシーム・サビート・マンカに近いですね。
日本には、ご存知の通りBリーグ川崎ブレイブサンダースのポイントゲッターで、日本に帰化したばかりの新加入ファジーカス・ニック(210cm32歳)。シュート・タッチが柔らかく、ゴール下はもちろん、ペイント・エリア外や3Pシュートも得意な元NBAの大型シューターで、なおかつディフェンス・リバウンドが強い選手です。
そしてもう一人「日本の希望の星」八村塁(はちむらるい・203cm20歳)。TV等でかなり取り上げられているのでご存知の方も多いと思います。ペナン人の父と日本人の母の間に生まれ、身体能力が高く、仙台の明成高校からアメリカの名門ゴンザガ大に進み2シーズンを過ごし、主力になりつつあるフォワードです。パワープレーやフェードアウェーなどのインサイド(以下I/S)での攻撃ばかりではなく、ミッドレンジ(3Pライン以内でFTレーンの外、中距離シュート)や、時には3Pも打てるようになりました。どこからでもシュートできる選手です。
この2人の加入が日本チームに大きな変化をもたらしました。
それは一番の弱点と言われるゴール下の攻防です。いわゆるペイント・エリア(ゴール周辺の長方形のフリースローレーン。図を参照)の攻防およびリバウンドは勝敗を左右し、長身者およびジャンプ力のある選手が有利です。
一般的に3Pシュートの確率は30%台、2Pシュートは40%台、ゴール下は50%台が平均的シュート成功率だと言われ、当然ですがゴールに近い方がシュートは入る、ってことです。その中でも長身者の方が確率は高くなります。
以上のデータから判る通り、シュートの半分以上が入らない、と言うことですから落ちたリバウンドを獲るのは大事なことですが、これも長身者が有利と言え、昔からバスケット界では「リバウンドを制するチームがゲームを制する」と言われています。
ファジーカスは昨シーズン川崎で1ゲーム平均得点25.5点、10.9リバウンドを獲得し、八村はアメリカの大学で11.6点、4.7リバウンドを記録してます。このゴール下に強力な二本柱ができて、今まではアウトサイド中心にならざるを得なかった日本のオフェンスは、I/Sも加わりバリエーションが増え攻撃の幅ができて強力になり、更にプラスαの力も加わりました。それは日本のエース比江島慎(ひえじますすむ・190cm27歳、シーホース三河)の負担軽減です。
ここまで、得点やゲームメイクなど全てで日本チームをけん引し、これまでの4ゲームで1試合平均18.5得点の比江島は精神的なプレッシャーばかりか相手のマークも強く、終盤には疲労困憊になることが多々ありました。しかし、2人の加入により相手がマークする選手はこの2人に移り、彼の負担が軽くなり、終盤になってもガス欠することなく、第3のエースとして攻撃だけではなくディフェンスでも頑張れ、今回は現役NBAのデラベドバを4得点に抑えました。
そしてもう一人、2人の加入で覚醒した選手がいます。日本を代表する大型Fの竹内譲次(たけうちじょうじ・207cm 33歳、アルバルク東京)です。今までは、相手の最長身選手とマッチアップすることが多く、I/Sでは敵わないためATB(Attack The Basket。ドリブルでリングへ攻め込むこと)せず、どうしても外へ出てミッドレンジや3Pを打つことが多く、消極的なプレーが多かったことは否めません。
ファジーカスと八村のシュートを中心に得点し、1歩リードしていた日本でしたが、第3Qでついに捕まり、残4分にミッチェル・マッキャロンのシュートで52-50と逆転されました。今までの日本なら跳ね返せなかったものを、比江島、ファジーカスそして竹内が決めて、ひっくり返しました。
それだけではなく、このゲームでは積極的にATBを仕掛けたりジャンパーを打ったり、何度かミスはしたものの、今までのイメージと違った、新しい積極的な竹内の姿を見ました。
そして何と言っても第一の勝因は、ディフェンスだと思います。
ゾーン・ディフェンスを中心に、ゴール下に2人の守護神がいれば、ガード陣は抜かれても安心なため、ボールマン(ボール保持者)に強いプレッシャーを掛けることができます。
また、今回の日本は、チェンジング(複数のタイプのディフェンスを頻繁に変える守り方で相手の目先を変えるディフェンス)で、シュートが入るとゾーンにして、入らないとマンツーマン(以下M2M)にして守っていました。
一般的に、M2Mに対しては個人技やピック&ロール(以下P&R。ツーメン・ゲームとも言う)で攻めることが多く、ゾーンに対しては組織立った攻めをすることが多いと言われて、攻め方が違うため、急に変えられると戸惑うことが多くなります。また、ゾーンはペイント・エリアをしっかりと守るために行うことも多く、シュートの距離も違ってきます。
相手のゾーンに慣れてきたと思ったらM2Mに変えられ、更にM2M用のオフェンスをしようとしたらゾーンに変わっていたとしたら、攻めづらいですよね!!
ゾーンは攻めるのも難しいのですが、組織立った守りのため、国際ゲームで通用するような高度なゾーンはかなりの練習を必要とします。そのため全選手が合流してから間もない6月17日に、ゼビオアリーナ仙台で韓国代表を迎えての「バスケットボール男子日本代表国際強化試合2018」では間に合いませんでしたが、それから2週間で仕上げてきました。
元々日本は、ディフェンスに活路を求めていましたが、このチェンジングが上手く行ったことと、元々の個人のディフェンス能力も高いものがありました。
その代表は、横浜市立旭中出身(神奈川県ジュニア・オールスター・メンバー)のポイントガード篠山竜青(しのやまりゅうせい・178cm29歳、川崎ブレイブサンダース)とも言えます。対応の速さとスピードあるフットワークで、何度も相手PGの動きを止め攻撃チャンスを潰しました。第4Qは、メドベドバにマッチアップしてドリブルを止めたりし0得点に抑え、その後もガードのキャリーのドリブルを止め、ミスを誘ってます。
その篠山が、攻撃でもビッグプレーを見せました。
終盤、お互いに疲れが出てシュートが入らなくなり進展がないまま75-74で迎えた残28秒、オーストラリアは左コーナーのニコラス・ケイがジャンパーを打ちました。これが入れば逆転。
しかし、ボールが右に外れると、たまたまハイポストにいた篠山のところへ、リバウンド争いで弾かれたボールが飛んできました。オーストラリアは全員がリバウンドに参加しており、セーフティーがいません。篠山とリングの間には誰もいない状態です。
篠山は躊躇せずドリブルをスタート、それをミッチェル・マッカロンが追いかけてくる。必死に走る篠山、そして逃げ切った!!!
篠山は「一瞬迷った、追いつかれるんじゃないかなと思い、どうしようかな?という気持ちになりましたけど、そこからギアを上げて何とかシュートに持っていくことができました」とゲーム後の記者会見で話してました。
その後は、八村の速攻からのDUNKも出て、79-78で逃げ切り、オーストラリアから初の勝利をもぎ取りました!!
同時刻に行われたフィリピンvsチャイニーズタイペイ戦は、93-71でフィリピンが勝ち、日本はチャイニーズタイペイと勝ち点「6」で並び、予選勝ち抜きは、7月2日の直接対決へと持ち込まれました。
そして3日後、台北和平籃球館でのチャイニーズタイペイ戦は、立ち上がりから日本が圧倒して108-68で勝ち、見事、1次予選を突破しました!!
9月から始まる2次予選、日本(世界49位)はグループFとなり、ここにはオーストラリア(同10位)、イラン(同25位)、フィリピン(同30位)、カザフスタン(同68位)、カタール(同61位)の計6チームで行われます。
今後ともバスケットの日本代表の応援を、よろしくお願いいたします!!
◆Bリーグチャンピオンシップ
レギュラーシーズン最多勝利チームの三河が、セミファイナルでアルバルク東京に敗れ、そのアルバルクは、琉球を下した千葉を圧倒し85-60で勝ち、初のチャンピオンとなりました。
写真提供:B.LEAGUE
写真提供:B.LEAGUE
得点等は下記のサイトをご覧ください。
https://www.bleague.jp/2017_18/postseason/championship/
1946年生まれ。
月刊専門誌「バスケットボール・イラストレイテッド」の編集長を経て、バスケットボール用品のデザイナーとして活躍。特にキャラクター「あんたかベイビー」のTシャツは一世を風靡した。日本初のバスケット・ユニフォームデザイナーとしても活躍。当時強豪と言われる殆んどのチーム<実業団-大学-高校>に関して何らかのデザインを手掛けている。またスポーツ界では唯一のファッションのコラムを持っていた。
現在は自身のユニフォーム・ブランド「305」を立ち上た。
NBAに関しては「月刊バスケットボール・イラストレイテッド」編集者時代の1966年から連載を執筆。TV解説はNHK BS以前にも東京12チャンネルで1985年から行っており、日本最古のNBA解説者と言われている。
過去にはスポニチウェブサイトのNBAコラムを担当。月刊バスケットボール及び月刊バスケットボール・マガジン等に連載を持っていた。
横浜の中学・高校バスケの指導者、関係者とのつながりが深く横浜及び神奈川県のバスケ事情に精通している。
現在は横浜をホームとするBリーグ「横浜ビー・コルセアーズ」の名誉広報として情報発信やプレス対応などチームの広報活動に力を注いでいる。
また(社)神奈川県バスケットボール協会広報顧問も務めている。
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