Vol.117「ビーコルB1残留!!」
勝ちましたー!!
ビーコルB1残留です!!
2月の#42Jウォッシュ(ジェイソン・ウォッシュバーン)の足首捻挫以来、怪我人が続出して勝てなくなったビーコル(横浜ビー・コルセアーズ)は、シーズンを16勝44敗(中地区6位、全体17位)で終わり、B1下位4チームで行われる、残留プレーオフへ出場となりました。
※このシステムについては、前号Vol.116「崖っぷちのビーコルと高校関東大会予選」で軽く説明していますのでそれをご参照下さい。
残留プレーオフ1回戦の相手は、東地区5位(全体16位)の秋田ノーザンハピネッツとなりました。
秋田とは、#42Jウォッシュが怪我をした直後の2月18日・29日に秋田戦で対戦しており、ゲーム①60-84、ゲーム②68-74と連敗しています。
5月13日(土)CANアリーナ★あきたで行われたゲーム①は#1タク(川村卓也)と#4JP(ジェフリー・パーマー)の活躍で、ゲーム①78-75で勝ち、翌日のゲーム②は追い上げ叶はず、64‐65の1点差で負けてしまいました。
同勝敗数のためゲーム③は、旧bjリーグと同じルールで、直後に5分ゲームとして行われました。
ゲーム②③は、都筑区の「港北みなも」ショッピングセンターでパブリックビューイングを行っており、500人ほどの方がビーコルを応援していて、6階の駐車場まで響くような大歓声を上げていました。
秋田(秋田ノーザンハピネッツ)の#3安藤に3P2本を含む10得点を許し、5‐12と大ピンチで迎えた後半、#4JPのFT(フリースロー)で徐々に追い上げ、#1タクのシュートで12-14とし、更に#42JウォッシュがFT2本を沈め、残1分04秒には14‐14と追い付きました。
その直後、秋田にシュートを決められ14‐16とリードされ、残32秒に#4JPが3Pをミスし窮地に立たされます。
残り時間30秒で2点リードの秋田は、ゆっくりボールを回しショットクロック(24秒以内にボールから手が離れ、かつリングに当たるか入るシュートをしなければならないルール。24秒バイオレーションとも言う)ギリギリにシュートして、上手くリバウンドに絡めばタイムアップになる筈なのですが、前半5分間で10得点と好調だった#3安藤が、ショットクロックを4秒ほど残してトップからシュートしました。
後半は、シュートを外している#3安藤のシュートは落ち、#42Jウォッシュがリバウンドを獲り、直ぐに、#1タクへパス。
#1タクは、自分でそのままボールを運び、左ウイング(通常45度と言われるトップとコーナーの中間地点)まで行くと、当然秋田は3人で止めに来ました。
それを見て左足をピボット(軸足)に、ほぼ1回転ターンの苦しい体勢となったが、それでも撃つのが#1タク。
身体はしっかりとリングに向いていて、綺麗なアーチでボールリングへ向かって行きます。ボールが、リングに吸い込まれる直前に試合終了を告げるブザー!!ボールはそのままリングの中央を通過して、劇的ブザービーター逆転勝ち!!
動画:B.LEAGUE
この瞬間、「港北みなも」のパブリックビューイング前のブースターさん+通行人多数は、大歓声とともに一斉に立ち上がり、後ろに居た私は画面が見えなくなりました(笑)
これは、ベストプレーにもタフショットにも選ばれ、Bリーグ今シーズン最高のシュートと言っても過言ではありません!
先ずは自動降格とならず一安心ですが、まだ残留プレーオフ2回戦が残っています。この2回戦は1戦だけの戦いで、これに勝たないとB2プレーオフ3位チームとの「入替戦」を行はなければなりません。
残留プレーオフ2回戦の相手は、同じ中地区5位(全体15位)で仙台エイティーナイナーズを下して進出した、富山グラウジーズです。
富山とは、シーズンで3勝3敗と五分の星になっていますが、富山に外国人選手が入り強化されたあとのゲームでは、勝っていません。
このゲームは、立ち上がりに富山の強いディフェンスと、#1タクに頼りっぱなしの弊害が出て、一気に0‐15まで離され、後半追い上げ一度は逆転するのですが、その後が続かず、71‐79で敗れ入替戦へ行くことになりました。
入替戦の相手は、B2プレーオフ3位決定戦で群馬クレインサンダースを下してきた広島ドラゴンフライです。5月28日(日)、B1ファイナルと同じ国立競技場代々木第一体育館で5,014人を集めて行われました。
相手チームの外国人の状態を見て、「B1オンザコートルール」の外国人を「2-1-1-2」にするか「1-2-1-2」にするかを尺野コーチは、「広島はI/S(インサイド、ゴール下近辺)が強い訳では無く、#2朝山と#24田中の3Pのチーム」と判断し、「2-1-1-2」として、良いスタートが切れるようにI/Sを重視した攻撃態勢にしました。
富山戦の反省を活かし、良いスタートを切ろうと言う訳です。
◆注目マッチアップ
#42Jウォッシュ(208㎝)←広島#5山田(200㎝)、#4JP(203㎝)←広島#21ラマート(206㎝)
動きが速く3Pを撃てる#4JPに、フォワードタイプの広島#21ラマートを付け、I/Sながら線が細い#42Jウォッシュには、幅のある広島#5山田をマッチアップ(マンツーマン・ディフェンス時に付く相手、又は1組)してきました。
このマッチアップでは、ビーコルは#4JPが3Pラインまで広島#21ラマートを引きずり出せば、I/Sは#45Jウォッシュと広島#5山田との対戦ですから、軽快な動きが戻っている#45Jウォッシュにとっては、やり易いことになります。
ティップ・オフ(ゲーム開始のジャンプボール)でボールを得たビーコルは、外へ出た#4JPからゴール下の#45Jウォッシュへ良いパスを通し、幸先よい先制点。折り返しのディフェンスでは、普段よりちょっと遠めからのディフェンスを敷くビーコルです。
広島は、広島#2朝山がいきなりトップから得意とする3Pを撃って来ましたが、タイミングが早くちょっと強引な感じでした。もしかするとベテラン広島#2朝山でも緊張していたのかもしれません。
その後は、両チームともシュートが入りませんが、ビーコルは3Pが得意な広島対策として「彼らがボールを持った瞬間に、手が顔の前に出ているようなディフェンスをしよう!」と尺野コーチが1週間の練習で指示した通り、常に接近したディフェンスを展開します。
その為、広島のシュート率が下がったのであって、たまたまこの日が不調だった、と言うわけでは無いのです。ちなみに言えば、広島の最新9ゲームでの3P確率は31%ですが、この第1Qは0/6、全体でも2/21(9.5%)でした。
ビーコルの4点目は、まさにこのゲームを象徴するプレーでした。
トップ近辺で、#1タクがドリブルを始め、#45Jウォッシュをブロックに立てて、P/R(ピック・アンド・ロール。スクリーンを使った二人の攻撃)をすると、#1タクにマッチアップしている広島#18鵤は、当然#1タクに付いてきますが、#45Jウォッシュにマッチアップしている広島#5山田が、Wチームか、スイッチして#1タクに付こうとした場面で、広島#5山田は、#1タクの方へ動きました。
それを見た#45Jウォッシュは、リングの方へ走ると#1タクから綺麗なパスが通りダンクへと繋がり4点目となりました。
その次は、I/Sのシュートをファールされた#4JPがFTを1本決め5点目、更にI/Sの#45Jウォッシュをおとりにして、ショートコーナー(FTラインとエンドラインが繋がる辺り)でノーマークになった#25ケン(竹田謙)へ、#0マーシー(細谷将司)から良いパスが渡り、#25ケンが手堅く決め7点目。
更に、シュート・ブロック(相手シュートを叩き不成功に終わらせること)から#1タクが、ドリブルで真ん中を行き、ディフェンスの注目を引き付けてパスを繋ぎ、最後は#0マーシーが3Pを決め、10点目を挙げたのが残5分16秒。その間広島は、広島#5山田の中距離シュート1本のみです。
そして、ここまで#1タクの得点はゼロ、それどころかシュートを撃ってません!!
と言っても、チームの作戦として「#1タクはシュートするな!」と指示を出したわけではありません。
「I/Sが有利だからそこで勝負しよう!シュートが無く、I/Sからのパスが出たら、これはチャンスだから#1タクがシュートしよう。何故なら、彼はリーグきっての良いシューターで、チームのエースですから。」と尺野コーチが言っています。
そうです、全て#1タクが状況を見て自分で判断したのです。
富山戦のところで少し触れましたが、敗因は「ビーコル病」と私は呼んでいますが(笑)、#1タクにボールを集めすぎたこと。#1タクがボールを欲しがり、俺がシュートを決めてやると言う強い気持ちが出ていたでしょうし、他の選手もボールを持ってもリングに向かはず、#1タクを探している状態でした。
殆どの相手チーム・コーチは、「先ず川村をマークする」と言い、作戦を立て特別マークしてきます。#1タクがそこを突破するのは、大変なことです。
シーズン最後の富山戦で3P-0/3、2P-0/8と抑え込まれ、得点はFTの2点だけ、チームも60-80と大敗したことがあります。当然ですが、#1タクを抑えればビーコルに勝てると言うことが判られ、富山は押さえ方を知っていたのです!
その悔しさもあったのでしょうか、#1タクはやり始めますが、自分がやろうとしているのではなく、富山ディフェンスに不得手な方へ導かれていたのです。
その結果シュートを外しまくりで、開始から7分間無得点。#1タクどころか、他の選手も緊張の為か、シュートが尽くリングに蹴られ0‐15となりました。
その後は落ち着きを取り戻し、#4JPが3PやI/Sで得点し、それにつれてチームのリズムが出来て、第3Qには47‐46と逆転に成功します。しかしその後が続かず、敗れました。
15点差を良く追いつきはしたが、実はこれにはかなりのエナジーを必要とするのです。逆転した場面で更にギアをアップさせるほどでないと、息切れしてきます。
これは広島も同じでした。第2Qに追い上げてきて30-26として終わりました。
第3Qのオンザコートは、お互い1人ですが、ビーコルは帰化人枠で#10パプ(ファイ・パプ月瑠)が、#4JPと一緒に出られるのが大きな利点になってI/Sアウトサイドとバランス良く攻め、徐々に差を広げ、第3Q残2分44秒47-33の場面で、#1タクがFTを貰い2本とも決めました。実はこれが#1タクのこの日最初の得点だったのです。
そうです、#1タクが得点しなくてもビーコルは勝てるんです。#0マーシーが、#4JPが、#45Jウォッシュが、ベテラン#25ケンもいます。
それじゃ#1タクは必要ないだろう!?
イエイエ、#1タクがいるから相手ディフェンスが偏り、他の選手の負担が軽くなるのです。そして#1タクは得点だけではなく、リバウンドやアシストも多い、と言うことをご存知でしたか?
アシストは、#4JPとほぼ同じ数で、ディフェンス・リバウンドは日本人ではトップです。
話が逸れてしまいましたが、第3Qで一気に差が付いたのはオンザコートの差でした。それなら第4Qは同じ人数なので広島の反撃があるのでは?
ところが広島は、第3Qで追い付くどころか逆にビーコルに16点の大差を付けられました。第2Qで追い上げた時に、エナジーを使い切ってしまったようで、そんなものです。
74-53で広島に勝ち、B1残留を決めました。
動画:Sports navi
ゲーム後のインタビューでは、キャプテン#13ケンジ(山田謙治)が「ホッとしている!」と言いましたが、B2へ降格しなかった、残留できたと言うこの言葉こそが、本音なんでしょう。
B1で一番多くゲームした選手達、そしてスタッフの人達、お疲れ様でした!!
そして一番多いゲーム数を楽しめた(?)ブースタ-の皆さん、応援ありがとうございました!!
6月4日に行われたビーコル帰港パーティー(ファン感謝パーティー)の様子は「イベント・レポート」で詳しく紹介していますので、そちらをご覧下さい。
1946年生まれ。
月刊専門誌「バスケットボール・イラストレイテッド」の編集長を経て、バスケットボール用品のデザイナーとして活躍。特にキャラクター「あんたかベイビー」のTシャツは一世を風靡した。日本初のバスケット・ユニフォームデザイナーとしても活躍。当時強豪と言われる殆んどのチーム<実業団-大学-高校>に関して何らかのデザインを手掛けている。またスポーツ界では唯一のファッションのコラムを持っていた。
現在は自身のユニフォーム・ブランド「305」を立ち上た。
NBAに関しては「月刊バスケットボール・イラストレイテッド」編集者時代の1966年から連載を執筆。TV解説はNHK BS以前にも東京12チャンネルで1985年から行っており、日本最古のNBA解説者と言われている。
過去にはスポニチウェブサイトのNBAコラムを担当。月刊バスケットボール及び月刊バスケットボール・マガジン等に連載を持っていた。
横浜の中学・高校バスケの指導者、関係者とのつながりが深く横浜及び神奈川県のバスケ事情に精通している。
現在は横浜をホームとするBリーグ「横浜ビー・コルセアーズ」の名誉広報として情報発信やプレス対応などチームの広報活動に力を注いでいる。
また(社)神奈川県バスケットボール協会広報顧問も務めている。
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