Vol.113「後半好スタートのビーコル」
お正月の京都戦に連勝し、ちょっぴり良いムードのビーコル(横浜ビー・コルセアーズ)は、Bリーグ・オールスターを挟んで1月18日(水)に変則カードで、新潟とアウェーで1ゲームだけ対戦しました。
それまでは相性が悪かったのか、新潟と3ゲーム対戦していますが、一度も勝てなく、この日もほぼ勝ちゲームを終盤のミスで惜しくも72‐74で負けました。そして3日後、墨田区総合体育館で東地区1位アルバルク東京との対戦となりますが、移動も有り疲れが出て動きが悪く、タク(#1川村卓也)がキッチリとマークされたことも有り、66‐98とブローアウト(大敗)されました。相手のA東京・富山ACも「水曜日の新潟戦の後じゃ、身体が重くなりますよ!」と少し同情的でした。
しかしこれでズルズルと負けるようなビーコル海賊ではありません。ゲーム①で0得点だったタクが10得点、JP(#4ジェフリー・パーマー)の内外の得点、そしてI/S(Inside、リング近辺)でJウォッシュ(#42ジェイソン・ウォッシュバーン)が頑張り、後半残4分36秒のOTO(オフィシャル・タイムアウト。どちらのチームにも記録されないローカル・ルールのタイムアウト)まで75‐70と5点リードしていました。
#4 ジェフリー・パーマー選手
しかしそれから、日本代表のエースでもある田中大貴に4本の3Pを決められ、85‐90で悔しい負け方をしたんです。
12月から、名古屋Dゲーム②、三河ゲーム①、栃木ゲーム①、新潟戦と、良いゲームをしたり、ほぼ勝ってるゲームを落とすことが多いビーコルです。悔しすぎます!!
このゲームでは、OTO後の田中に決められた3Pが良い例ですが、続けて同じ選手に同じようなシュートを連続して決められることが多いのです。
●例1 12月10日(土)三河ゲーム①
第4Q、63‐65からギャビン・エドワーズ(206cm)にFT(Free Throw。フリースロー)を挟み、全てI/Sの1対1で連続8得点され、83‐87で負けました。
●例2 1月3日(木)京都ゲーム②
第3Q、34‐30からケビン・コッツアー(202cm、117kg)に3連続でI/Sで決められ、38‐36と追い上げられました。この時は既に4本もI/Sでシュートされてましたが、入ってなかったので助かったものの、同じプレーを連続でさせてはいけません。マッチアップしてる当人もプレーを見なくてはいけませんが、周りの選手やベンチからもプレーの内容をアドバイスすることが大事だと思います。
確かに田中の場合はI/Sのコッツアーに比べるとプレーが単純でないので、ディフェンスは大変です。と言うのも田中のシュートは4本ともアシストが付いてるからです。1本目はサウスポー・シューターの菊地祥平、2本目以降はディアンテ・ギャレットですが、ご存知かと思いますがこの二人のシュート力は半端じゃなく、どうしてもマークがここへ行きます。特にギャレットは、ディフェンスを引き付けておいて外の3Pシューターたちに撃たせることが出来る選手で、そういう練習もしてます。
だからと言ってそのまま撃たせるのは面白くないですよね。それに引っかかった振りをして、そのパスを狙うとか考えて欲しかったですね。ベテランなんですから!!
もう一点、CTO(Charged Time Out。タイムアウト)の取り方について。
このゲームの立ち上がり竹内譲次のジャンパー(Jumper。ジャンプシュート)に続き正中岳城と竹内の3Pが決まり、いきなり0‐10とリードされました。まだTip Off(ゲーム開始)から2分半しか経ってません。
ここはCTOを取ろうか迷うところです。何故なら前半は2回しかCTOを取れないため、通常は第2Qに取ることが多いのですが、ここは青木コーチが思い切って最初のCTOを取りました。これは正解でした!!
一気に失点が嵩み、更にオフェンスでは良い感じで攻めてはいたもののシュートが入らなかったため、気分を変えるためにも取るべきだったと思います。
CTOの取り方については往々にして結果論で語られることが多いのですが、直ぐにJP(#4ジェフリー・パーマー)が3Pを、続いてマーシー(#0細谷将司)があのギャレットをスピードで抜きレイアップを、次にマーシーからタクへ3Pアシストが決まり、更にマーシーのペネトレイト(ドリブルで割って入る果敢なプレー)のミスをJウォッシュ(#42ジェイソン・ウォッシュバーン)がプットバック(Put Back。オフェンス・リバウンドを取った選手がシュートするプレー)で一気に10得点で、10‐10に戻します。
一方終盤で75‐70と追い上げられたシーン。
田中の3PとギャレットのFTで同点にされたものの、Jウォッシュがターンアラウンド(軸足を中心に回転させて撃つ難しいシュート)とミッドレンジ(Mid Range。中距離シュート)をきめ79‐75と差を開きました。
しかし次のディフェンスで田中に3P、そしてギャレットにFT2本決められ79‐80と逆転された残1分50秒がCTOを取るチャンスじゃなかったのか?
とは言え、後半3回目は最後のCTOとなるので、躊躇するのは理解できます。未だ110秒残ってますから、攻防は5回ほど変わりますからね。
しかしその33秒後にまたしてもギャレット→田中3Pで79‐83にされた時は限界でしょう。
結局残49秒に、田中にとってこのクォーター5本目となる3Pを決められ、81‐86となったところでCTOを取りましたが、遅すぎました。
結果論でなく書けば、田中は当たっていてZoneに入っていた感じがするし、そんな場面でシュートを決めるのが東海大時代からの田中です。そこは判って欲しいですね!!
そんなことがありましたが、ビーコルに新メンバーが!!
筑波大4年生・満田丈太郎(188cm、83kg)と特別指定選手として契約しました。この数年、東海大に替わって能力集団と言われているインカレ3連覇の筑波大で、3年生からスタメンだったのでその能力は期待出来ます、更にリーグNO1の平均年齢の高さを誇るビーコルに、若い力を吹き込んでくれることと思います。
ビーコル満田 入団会見
ビーコル満田デビュー戦
ポジションはSG(Shooting Gurd)でカバ(#3蒲谷正之)、タク、カズ(#2高島一貴)、ケン(#25竹田謙)、アレク(#5湊谷安玲久司朱)と一緒で、ますますこのポジションが多くなって来ました(笑)
#2 高島一貴選手
#25 竹田謙選手
#5 湊谷安玲久司朱選手
優勝した昨年の関東大学リーグ戦では、平均11.3得点、3Pは31/61、成功率51%とかなり高確率です。タク、マーシーに続く3Pシューターの出現です!
因みに筑波大では、関東大学トーナメント優秀選手賞受賞と、3年生時に光州ユニバーシアード日本代表に選ばれてます。
横浜市出身で金沢区の六浦南ペガサス・ミニバスから田臥勇太の出身校である大道中へ、そして富山の北陸高校へ進み筑波大へ。
そんなことがあった後の滋賀レイクスターズ戦。
滋賀にも同じような動きが有りました。NBAドラフト全体21位で指名されたクレイグ・ブラッキンズが、2週間ほど前に契約しました。ドラフトは30位までが一巡目なので21位指名と言ったらかなり上位で、フィラデルフィア76ersで2シーズンプレーした選手です。その上体格が208cmで104kgとかなり巨体です。
滋賀は並里成と言うバスケットIQの高いPGが居て、長谷川智伸と狩野祐介と言う3Pの名手がおり、ベテランの菅原洋介が高いバスケIQと良いディフェンスでチームを支えていますが、中心選手は203cmのジュリアン・マブンガで、3Pを含めどこからでもシュートを決められるの得点能力が高い選手です。ブラッキンズを含めた4人を中心に3Pが得意なチームで、攻撃スタイルはI/S中心のビーコルと対照的です。
ビーコルのオンザコート(外国籍選手のオンザコートルール。詳細は先月号をお読み下さい。)は1‐2‐1‐2でオーソドックスな2‐1‐1‐2とは違っています。ビーコルには帰化選手でパプ(#10ファイ・パプ月瑠)が居るので、純粋な外国人と2人同時にコートに立てるため、第1Qは若干ビハインドでも、相手チームの外国人が1人になる第2Qは2人の外国人が使えるビーコルが優位に立てるわけです。
立ち上がりから滋賀はタクをピッチりとベタ・マークして来ましたが、良くあることで戸惑いは少ないのですが、滋賀は日本人の活躍で14‐15と1点リードします。ビーコルはルーティンワークのように終盤にタクとマーシーをベンチに下げ、アレク、ケン、ケンジ(#13山田謙治)をコートへ出します。
第2Qは第1Q終盤の日本人を残し、外国人はPJとJウォッシュの5人でスタートします。この二人が同時に出れば当然I/S攻撃で、3分半の間に二人だけで12得点、26‐19と逆転しそのままリードしました。第3Q終盤の4分で、マーシーとパプの活躍で16‐2のランとなり51‐39と一気に差を開きました。
が、ここで気が緩むのがビーコルの特徴で、ジワリジワリと追い上げられますが、このゲームでは前半シュートが不調だったアレクが苦しい時に得点してピンチを救い、残1分52秒JPがFTを決め73‐63として「勝負あった」と感じたみたいで、明らかにペースを落としましたが、甘かった!
112秒あれば5回くらいは攻守が交代します。狩野、長谷川が3Pを3本決めたら逆転されます。しかし滋賀は、ブラッキンズとマブンガの二人が堅実にゴール下で1本1本決めてきます。残1分10秒、マブンガにand1(バスケット・カウント後の1本のFT)を決められ、73‐68と5点差に詰められ、更にシュートミスを速攻に出されそれを菅原が決め、73‐70。慌ててCTOを取ったものの、これが後半1回目なので明らかに遅かったですね。その前の5点差の時に取っておくべきだったと思います。
残9秒にJウォッシュがFTを1本決め74‐70として、その後マブンガにゴール下を決められ74‐72と2点差にされたものの、残り時間は2秒なので一応CTOを取りました。これが結果的には良かった。
と言うのも、ゲーム残り2分を切った後にCTOを取ると、攻撃側のコートでスローイン出来るからで、安全性とフロントコートへ持ち込むまでに数秒かかることを考え、多くのチームはCTOを上手く活用します。
ケンジがスローインしますが、前には208cmのブラッキンズが手を振りながらジャンプしたりしてスローインの邪魔をしてます。180cmのケンジがその手の上を狙ったのでしょうが、ボールはブラッキンズの手に当たると言う凡ミス!
ブラッキンズが菅原へパスし直ぐにシュートしました。ボールはリングに向かってるのでヒヤリとしましたが、リングに当たり大きくバウンドして一安心。もしエンドラインからのスローインだったらと思うと、ゾッとしました!
ビーコルvs滋賀 ゲーム1 Tip off
翌29日のゲーム②では、恒例となってしまった第1QでのCTOですが(笑)、それも恒例となったその後の反撃で17‐16とリードして第1Qを終えると、第2QはJウォッシュのI/Sでリードを保ちますが、このゲームではベテランのケンの3Pが炸裂し42‐34で前半を終え、第3Qもそつなく64‐56で終えると、これも恒例となってしまったOTO後の相手の反撃(笑)
この日好調の狩野の3Pなどで残3分42秒に74‐69とされますが、流石にこの日は集中し、アレクのジャンパーとケンジのゴール下、更にJPの華麗なスピンターン(ドリブル進行中に片脚を軸にしてクルリと身体を回転させるプレー)で、残1分21秒82‐71として勝負あり!
そして残43秒、待ちに待った満田の登場!
滋賀がファールゲームに出たため、一度しかボールをに触れなかったので力は発揮できませんでしたが、ブースターさんを魅了しました!
この2ゲームでのタクの得点はたったの4点、ゲーム②では0点です! 3Pは5本撃って0本、2Pも10本中1本、得意なFTですら2/4で、心配です!!
ジャンパーが入らないのは良くあることで、そんな時はイージーなレイアップ(ランニングシュート)を多用したりしますが、そのレイアップですら外しているのです。1月3日(木)の京都②では、自分からシュートに行って無いので4得点、次の新潟戦で18点入れてるので気にしてませんでしたが、21日(土)のA東京戦から4ゲームで14点しか取ってません。これはそれまでの彼の1ゲーム平均で、得点15.1→3.5点、3P確率36%→13%、2P確率48%→15%と大幅にダウンしてます。
スランプから早く脱出して欲しいです!!
でもこれを逆の視線で見ると「タクが不発でも勝てるようになったビーコル!」と考えられます。その原因は?
ひとつにはアレクの活躍が挙げられます。当人も強くは否定していませんが、これまで「スタメンじゃないと力を発揮出来ない」とか「周りに気を遣い過ぎてる」とか言われてました。
ゲーム①では前半6本も落としながら後半も使ってくれたことに意気に感じたようで、第4Q57‐49時に3P、そして64‐56とされた後、攻めあぐんだ時、24秒ギリギリでのジャンパー、更に68‐61とされたときのステップバック・シュートと、追い上げられたところでの3本でビーコルを救ってくれました。これで自信を付けたようで、ゲーム②でも8得点しました。
そしてパプの活躍も見逃せません。帰化選手として外国人とのマッチアップが多い中、サウスポーを活かしたフックショットでの得点が伸びて来ていて、更にリバウンドが獲れるのが魅力です。
もうひとつ加えれば、ケンのシュートです。ベテランらしい読みの深いディフェンスは定評あるところですが、最近はシュートの確率がアップしています。今年に入り京都戦から3Pを良く撃つようになってきたうえ、確率が良くなってます。
ケンジとケンのベテランは、相手チームからするとそれほど眼中にはなく、やはりビーコル相手ではタク+JP+Jウォッシュ+準主役のマーシーの3人をいかに守るかに重点が置かれますが、ディフェンスが手薄になって居るこの2人に得点されると、相手にとっては辛いところです。
最近はアレクが台頭し、ベテランのケンジ+ケン、そしてルーキー満田の加入で、相手には的を絞り辛いチームになって来たようです。
ビーコル竹田、ゲーム後インタビュー
1946年生まれ。
月刊専門誌「バスケットボール・イラストレイテッド」の編集長を経て、バスケットボール用品のデザイナーとして活躍。特にキャラクター「あんたかベイビー」のTシャツは一世を風靡した。日本初のバスケット・ユニフォームデザイナーとしても活躍。当時強豪と言われる殆んどのチーム<実業団-大学-高校>に関して何らかのデザインを手掛けている。またスポーツ界では唯一のファッションのコラムを持っていた。
現在は自身のユニフォーム・ブランド「305」を立ち上た。
NBAに関しては「月刊バスケットボール・イラストレイテッド」編集者時代の1966年から連載を執筆。TV解説はNHK BS以前にも東京12チャンネルで1985年から行っており、日本最古のNBA解説者と言われている。
過去にはスポニチウェブサイトのNBAコラムを担当。月刊バスケットボール及び月刊バスケットボール・マガジン等に連載を持っていた。
横浜の中学・高校バスケの指導者、関係者とのつながりが深く横浜及び神奈川県のバスケ事情に精通している。
現在は横浜をホームとするBリーグ「横浜ビー・コルセアーズ」の名誉広報として情報発信やプレス対応などチームの広報活動に力を注いでいる。
また(社)神奈川県バスケットボール協会広報顧問も務めている。
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