vol.105「NBLファイナルスとインターハイ予選」
◆キングス 優勝!!◆
bjリーグとして最後のシーズン、最後のファイナルズは5月14日(土)15日(日)の二日間、bjの聖地と言われる有明コロシアムで、コロシアム史上最多の11,038人が見守る中で琉球ゴールデンキングスvs富山グラウジーズ戦が行われ、キングスが86-74でグラウジーズを下し史上最多4度目、そして2005年11月に開幕したbjリーグ最後の王者となり幕を閉じました。
◆東芝 優勝!!◆
5月28日(土)から行われていたNBLファイナルス、川崎市の東芝ブレイブサンダース神奈川(以下東芝)が0勝2敗の崖っぷちから見事3連勝し、NBL2度目そして最後のNBLチャンピオンとなりました。
bjファイナルズと並行して行われていたのが、もう一つのリーグNBLプレーオフです。
12チームによるレギュラーシーズン(以下シーズン)の後、8チームによるプレーオフズが行われシーズン1位のトヨタ自動車アルバルク東京を下した4位アイシン・シーホース三河(35勝18敗、以下アイシン)と、シーズン2位リンク栃木ブレックス(以下ブレックス)を下した東芝(37勝17敗)との間で3勝先勝ち制で行われました。
東芝は何処からでもシュートを決められる守護神ニック・ファジーカス(210cm、元NBAミルウォーキー・バックス。以下ニック)と、3Pが上手くクラッチ・シューター(勝負どころでシュートを決める強い選手)として知られている辻直人(185cm、青山学院大)が中心ながら、ベンチメンバー(控え選手)が豊富なチーム。現在アメリカではNBAファイナルスの真っ盛りですが、優勝候補のゴールデンステート・ウォリアーズもメンバーが豊富で、昨年から「Strength in Numbers」と言う言葉を掲げていますが、正に東芝にも当てはまる言葉で、それは「数の強味」つまり「活躍できる選手が数多く居る」と言うことです。
対するアイシンは、ジャンパーもATBも出来る比江島慎(190cm、青山学院大)と、全日本代表のシューター金丸晃輔(192cm、明治大)と、PGながら3Pも得意な橋本竜馬(178cm、青山学院大)と、アイシンのプレーの起点と言われるベテラン桜木ジェイアール(203cm、UCLA)と、ゴール下に滅法強いアイザック・バッツ(208cm)と、ペイントエリアでスピードを活かしたプレーが得意なギャビン・エドワード(206cm)を擁し、I/S(ゴール下周辺)が強くベテランが居る巧いチームと言われています。
◆ゲーム①5月28日(土)
東芝は守護神ニックのシュート・タッチが悪く、さらに辻も当たりが来ない。アイシンはポイントゲッターの金丸が不調だったが、強いディフェンスとバッツとエドワードがI/Sで活躍しリード。東芝は終盤追い上げたモノのケアレスミスが続き、70-65でアイシンが先勝しました。
◆ゲーム②5月29日(日)
アイシンは橋本が積極的にドリブルでリングにアタックし、3Pも決め26-16とリードすると、東芝は1on1で攻めようとしてオフェンス・リズムが悪く追いつけず、さらに残り2分69-58の時、ニックがファールアウト(5反則退場)となり74-63でアイシンが2勝目を挙げ、優勝へ王手を掛けました。
◆ゲーム③5月30日(月)
後がない東芝は、ゲーム前にニックとジェフ磨々道が「開き直ってプレーしよう。」とアドバイスしたのが効いたのか、2ゲーム合計22点の辻と41点のニックの不調コンビ(通常は2人で76点強)が、積極的にシュートしに行きました。そしてディフェンスもより強く積極的に出て13-4と一気にリードを奪います。
実はこの日、アウトサイドは金丸以外は捨て(シュートされても良い)、2ゲームで64点取られているバッツとエドワード2人のI/Sの守りに重点を置きました。そして金丸は長谷川がしっかりとディナイ(ボールを持たせないように密着したディフェンス)したのが効果を出しました。その後は追いつかれ39-37東芝リードで前半を終了しました。
重要になった後半の出だし、東芝は辻+ニックが3Pを決め1分も経過しない間に45-37とリードを一気に広げたのが大きく、そのままの点差で最終クォーターを迎え、最後は辻のオン・ステージとばかりに3Pを連続で決め88-73で勝利し、1勝2敗で6月4日(土)のゲーム④へと夢を繋ぎました。
ゲーム後北コーチは、「今日が本当の東芝です。前2ゲームは信じられないミスもあった。今日はスペースを取ることを指示した。君達は3連勝出来る、チームの勝利のためにやり続けなさい。」と言っていました。
また辻選手は、「ファイナルスはひるんだら負け!チーム全員今日は負けられない、と言う雰囲気だった。」と話していました。
◆ゲーム④ 6月4日(土)
やっと1勝しただけでまだまだ油断できない東芝でしたが、立ち上がり肝心の辻がアイシン橋本にしつこくマークされ押し返したところファールを吹かれ、さらに9秒後の残8分33秒比江島にファール、開始1分半で2ファールとなりベンチへ下げざるを得ない状態に。
それでも東芝は25-21とリードして第2Qへ。東芝はここでベンチ・メンバーを起用するのが常套手段で、この日も藤井祐眞(178cm、拓殖大)、山下泰弘(187cm、明治大)、栗原貴宏(192cm、日本大)、永吉佑也(198cm、青山学院大)とニックで始まりました。山下、藤井の3Pや強いディフェンスからのスティール→速攻も連発し32-21とリードを広げましたが、これが東芝の強みの一つです。さらに前半終盤に差を広げ、このQ(クォーター)はアイシンに4点しか与えず、40-25で前半終了。
これで勝負はつき、82-60で2勝2敗と振り出しに戻しました。
ゲーム後アイシン鈴木コーチは、「勝ちたい気持ちがディフェンスに出ないでオフェンスに出てしまい、気負いすぎてドリブルで攻めることが多く疲れてしまった。辻君が早めにベンチに下がったことで、油断したかもしれない。」と述べています。
◆ゲーム⑤ 6月5日(日)
こうなると短期決戦では勢いのある方が強いとバスケット界では良く言われる言葉で、その言葉通りお調子者の辻がいきなりシュートを決め、さらに辻からゴール下の磨々道へアシストが決まり、篠山竜青(178cm、日本大、以下竜青)がリングへアタックし、さらに辻がピック&ロールから3Pを決め、9-0とした6分56秒にアイシンが早くも最初のCTO(タイムアウト)を取りました!!!
さすがにその後アイシンは立て直して、18-15で第1Qを終了しましたが、第2Qはいつものベンチ・メンバーがこの日もディフェンスで力を発揮し、アイシンにオフェンス・リズムを作らせず中盤には30-20と差を広げ、前半を41-30と大きくリード、そして第3Qを57-47で終了しました。
最終Qとなればアイシンもディフェンディング・チャンピオンの名において、このまま引きさがる訳には行きません!
比江島が3Pを決め反撃の狼煙をあげると、徐々に差を詰めてきますが、東芝もこの4ゲームで6点しか取れなかったブライアン・ブッチ(211cm)とニックも3Pを決めます。しかし橋本が3Pを決め、さらに金丸が久しぶりの3Pで続き残1分05秒で70-67と3点差、3Pで同点のところまで追い上げます。
残り28秒、70-67東芝リードでOB(アウト・オブ・バウンズ)から東芝のスローイン、とは言え24秒ショット・クロックは1秒しか残っていません。ボールをキャッチしてから1秒以内にボールが手から離れてないと得点になりません。
しかしここで本領を発揮するのがクラッチ・シューターの辻です。
FTサークルでニックと磨々道2人が掛けるスクリーンを右から回り込んで比江島を外し、左45度で竜青からのスローインをキャッチ。「撃つしかないのだから!」と、キャッチするや否や体勢を崩しながらも3Pラインの外から撃った!!
見事にリングの真ん中を通ってカウント!!!
73-67と6点差にして勝負を決めました!!!
そして優勝!!
NBL最後のチャンピオンです。
このファイナルスを振り返ってみると、優勝の原因は幾つか挙げられます。一つじゃありません!
① ディフェンスが強い。
これはベンチ・メンバーが多いことに関係もするでしょうが、強いディフェンスを掛け続けられること、要所要所でボールを持っている人にWチームを掛けたり、相手パスコースを読んでスティール出来ること。特にI/Sへのパスをかなりカットしていたのは大きいと思います。
また金丸への長谷川のディフェンスが強く、簡単にシュートさせなかったこと。またその対策としてアイシンはボールが無い所で金丸にスクリーンを掛けディフェンスをスイッチさせるのですが、スイッチした選手のディフェンスも強く、シーズンはAvg.17.5点の金丸を5ゲームで43点(Avg.8.6点)に抑えたことは優勝の大きな要因ですね。
② 磨々道はJBL時代の2013年、ファイナルスで同じくアイシンと対戦し、最終戦の最後でミスして54-58で負けてしまいました。ゲーム後ロッカーでみんなが居る前で「自分のミスで負けた!」と泣きました。
その屈辱を晴らしたのが今ファイナルスでした。良い所でゴール下のシュートを決めリバウンドも獲り、身体を張ってバッツ等をディフェンスしました。38歳とベテランながら、シーズンよりAvg.で6分多くプレーし、3点多く得点し、リバウンドを1.6本多く獲ってます。縁の下の力持ちでした!
③ バスケットが上手くなった!
今回のファイナルスは丁度NBAファイナルス(ゴールデンステート・ウォリアーズvsクリーブランド・キャバリアーズ)とイメージが合います。
チーム・プレーの東芝vs個人技のアイシン
確かに東芝はニック+辻のスーパー・シューターばかりが目立ちますが、この二人がボールを持つまでは多くのスクリーンやパスが有ります。特にこのファイナルスで目立ったのが、ワンモア・パスと言われる数回パスが有ってのシュート、主にゴールへ切れ込んでキックアウト(外へのパス)、そこから横へパス、さらにパスしてワイドオープン(完全なノーマーク状態)で3Pを撃つことが多くなっています。余裕をもってシュート出来るので、入る確率が高くなるってわけです。
その点を北コーチに聞くと、「特に練習してる訳じゃないんです、と言うかスタメンの連中はそんなことしなくてもシュート出来ちゃうんで(笑)」とのこと。つまりゲームを重ねるごとにアジャストした、学習したのでしょう。
左から大島通訳、ファジーカス選手、辻選手、篠山キャプテン、北コーチ
④ 全員バスケット!
冒頭にも書きましたが、スタメンだけが凄いわけじゃありません。プレータイムもシェア(分割)していますし、得点もニック、辻以外は際立っていません。ベンチの得点合計はチーム得点の42%にもなり、プレータイムはスターターの合計より多いほどです。
今回は特に山下が目につきましたね。良い所で3Pを決めるだけじゃなく、このファイナルスでは3Pを5/8(62.5%)と高確率で決めてます。栗原もディフェンスでベテランらしく金丸等を抑え存在感を示し、藤井もゲームを重ねるごとに確実さを増し、永吉も使えるようになりました。ベンチが充実しているからスターターは安心して身体を休めることが出来るわけです。
東芝が3連戦目となったゲーム③で勝ったのは1ゲーム毎に考えたのではなく、3ゲームを一つとして考えた体力配分の効果が有ったのでは無いだろうか?
ご存知のように東芝は、会社が現在大変な危機に陥っています。社員もへこんでいるようで、中にはこの時期にバスケットなんてやっていて良いのだろうか、とか考える社員も多かったと思いますが、この大会でサンダースを応援することが、そして優勝することが会社の明るさを取り戻す役割をしたのではないでしょうか?
優勝した今だから言えるのですが、表彰式も終わった後、関係者から聞いた話です。北コーチは会社から、「勝たないと来年は無いよ」と言われていたらしいのです。しかしそれを選手に言えばプレッシャーとなると思い口外しなかった、とのことです。
陰では色々と有ったようです。
東芝キャプテン篠山竜青へのインタビューの動画はこちらをクリック!
◆◆高 校◆◆
インターハイ(IH)予選(第54回神奈川県高等学校総合体育大会バスケットボール競技 兼 平成28年度全国高等学校総合体育大会バスケットボール競技神奈川県予選 兼 第69回全国高等学校バスケットボール選手権大会神奈川県予選)は、5月29日(日)県立横浜緑ヶ丘高ほか7校を会場として始まりました。
多くの高校生にとって最後の戦いとなる大会です。
男女とも関東大会予選上位8チームと各ブロックを勝ち抜いてきた32チーム、計40チームを4ブロックに分けトーナメントを行いその勝者4チームで決勝リーグを行い、男女ともに2チームが出場権を得られます。
この大会は5月4日(水・祝)まで行われていた関東予選の結果を元に組み合わせが決まります。主なチームをピックアップしましょう。
【男 子】
◆Aブロック:-優勝候補筆頭で関東予選優勝の桐光学園高と同7位・横浜清風高、他に横須賀学院も面白そう。
◆Bブロック:関東予選準優勝アレセイア湘南高と同7位・県立厚木北高。
◆Cブロック:関東予選3位・東海大相模高と同6位・横浜高、他に古豪・湘南工大附高も面白そう。
◆Dブロック:関東予選4位・県立厚木東高と同5位・法政二高が跳びぬけています。
順当に行けばA-桐光、B-アレセイアが勝ち上がってきますが、C-東海相模vs横浜とD-厚木東vs法政は予想不能ですね。IHへは桐光が有力で、もう一つの席にどこが座るのか、横浜か??
【女 子】
◆Aブロック:関東予選優勝・県立旭高と同7位・立花学園高がシードですが、名門・県立金沢総合高と県立座間高もいます。
◆Bブロック:関東予選準優勝・県立市ヶ尾高と同7位・県立海老名高。
◆Cブロック:関東予選3位・横浜清風高と同6位・県立逗葉高。
◆Dブロック:関東予選4位・県立横須賀大津高と同5位・相模女大高。
大変なのはAブロックです。旭高が第1シードですが、ナントここに関東予選ではエイト入りで相模女に負け雪辱を期す名門・金総と、急上昇中の座間も居て、11日(土)に対戦し、その勝者が旭と対戦しますが、それは翌日の12日(日)と非常にタフなスケジュールになっています。ここは初戦となる旭が有利でしょうね。Bブロックは市ヶ尾が優位と思いますが、関東予選で旭にボロ負けしたのを引きずっていなければ良いのですが。Cブロックは清風が優位ですね。問題はDブロックの横須賀大津と相模女戦です。相模女がやや有利か?
順当に行けば決勝リーグへは旭、清風、市ヶ尾の横浜勢が3チームとなり、悪くても1チームはIH出場となるでしょう!
【スケジュール】
◆男子 清風:12日(日) 11時30分@逗葉高 勝てば18日16時00分@横須賀総合高
横浜:12日(日) 14時30分@逗葉高 勝てば18日14時30分@逗葉高
◆女子 金総:11日(土) 15時30分@座間高 勝てば12日13時00分@相模女大高等部 vs旭
旭 :12日(日) 13時00分@相模女大高等部 勝てば18日14時00分@旭
市ヶ尾:12日(日) 13時00分@逗葉高 勝てば18日14時30分@横須賀総合高
清風:12日(日) 10時00分@相模女大高等部 勝てば18日13時00分@逗葉高
◆決勝リーグ 男女とも
19日法政二高、25日平塚総合体育館、26日平塚総合体育館
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◆告 知◆
第74回早慶バスケットボール定期戦
日 時:2015年6月25日(土)
会 場:国立代々木第二体育館
入場料:前売り 中学生以上 1,000円(当日 1,200円/小学生以下無料)
*プログラム付き(入場時にお渡しします)
◆タイムテーブル
09:00~ 開場
11:00~ OG戦
12:00~ OB戦
13:10~ 開会式
13:40~ 女子戦
15:30~ 男子戦
17:00~ 閉会式
◆ 前売り申し込み受付中 ~6月23日(木)
詳細はこちらをクリック!
◆チームカラーでの応援!
「早稲田:エンジ」「慶應:紺」
両校チームカラーでの着衣(ブレザー・ポロシャツ・Tシャツ等)で今年も応援を行いますので、是非ともご準備の上ご来場願います!
1946年生まれ。
月刊専門誌「バスケットボール・イラストレイテッド」の編集長を経て、バスケットボール用品のデザイナーとして活躍。特にキャラクター「あんたかベイビー」のTシャツは一世を風靡した。日本初のバスケット・ユニフォームデザイナーとしても活躍。当時強豪と言われる殆んどのチーム<実業団-大学-高校>に関して何らかのデザインを手掛けている。またスポーツ界では唯一のファッションのコラムを持っていた。
現在は自身のユニフォーム・ブランド「305」を立ち上た。
NBAに関しては「月刊バスケットボール・イラストレイテッド」編集者時代の1966年から連載を執筆。TV解説はNHK BS以前にも東京12チャンネルで1985年から行っており、日本最古のNBA解説者と言われている。
過去にはスポニチウェブサイトのNBAコラムを担当。月刊バスケットボール及び月刊バスケットボール・マガジン等に連載を持っていた。
横浜の中学・高校バスケの指導者、関係者とのつながりが深く横浜及び神奈川県のバスケ事情に精通している。
現在は横浜をホームとするBリーグ「横浜ビー・コルセアーズ」の名誉広報として情報発信やプレス対応などチームの広報活動に力を注いでいる。
また(社)神奈川県バスケットボール協会広報顧問も務めている。
※タイトル・本文に記載の人名・団体名は、
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