vol.86「1ヶ月過ぎたビーコルとウインターカップ予選」
ターキッシュエアラインズbjリーグ(以下TKbjリーグ)開幕からちょうどひと月、横浜ビー・コルセアーズを振り返って考察してみましょう。
10月4日(土)開幕はアウェー・富山グラウジーズ(以下富山)戦、開幕戦は63-81で落としたものの、ゲーム[2]は後半追い上げ、#3蒲谷正之と#15ウォーレン・ナイルズがビッグショットを決め87-79で勝ち、1勝1敗で横浜へ帰ってきました。この1勝は大きかったですね、何しろ富山は昨シーズンからグングンと強くなったチームで、今シーズンは岩手とともにイーストの1位候補と予想されるチームの上、我がビーコルは数日前にやっと全戦力が揃った未完成のチームですから、アウェーで1勝できれば御の字です。
翌週11-12日は3年連続でスカイアリーナ座間での信州ブレイブウォリアーズ(以下信州)戦、ホーム・オープナーです。何故なのか座間での信州戦は相性が悪く、2勝できるはずのところを全て1勝1敗となってます。#11齊藤洋介の呪いかと思ったけど(笑)、彼がビーコルに移籍しても90-105,95-71とまたも1勝1敗と分けた、どういうこっちゃ?!
未だチームが整ってないので、年内は強豪相手には1勝1敗で、下位チームに2勝すれば良いかと思ってます。
18-19日はアウェーで青森ワッツ戦(以下青森)です。ゲーム[1]は#15ナイルズの22得点もあり75-68で勝ったものの、ゲーム[2]では最終クォーター(以下Q)に逆転され67-75で破れ、ここも1勝1敗と五分、ここで星を分けたのは納得いかないですね。まあある兆候が現れていましたが。
初の綾瀬市開催となった25-26日、相手は優勝の本命・岩手ビッグブルズ(以下岩手)。ゲーム[1]はインサイドに厚く強いディフェンスを岩手に敷かれ、71-81と押さえ込まれ完敗でした。
ゲーム[2]は立ち上がりから強いディフェンスと#44ウェイン・マーシャル、#33ジャーフロー・ラーカイのインサイドにボールを集め得点し、ディフェンスをインサイドに注意を集めさせておいて外からは#73久山智志と#15ナイルズが3Pを決め、一歩リードして第3Qまで推移していましたが、岩手は若き名将・桶谷大コーチがインサイド陣の身長のハンデをスピードでカバーする作戦に後半から切り替えてきました。それは#44マーシャルと#33ラーカイの両BigManを外に引き出しておいてスピードのある外国人が積極的にリングにアタックし、ファールを誘う作戦。
マンツーマン(以下M2M)で守るビーコルはカバーに入るもののオフェンス重視のTKbjリーグではファールを取られことが多く、ファールトラブルとなってしまった。
それならゾーンで守れば良いじゃないか、と考えるところですが、中・高校生のゾーンと違いプロは動きの約束事が多く細かく決められているため、練習を積んでいないと「逆に簡単に攻められてしまう」結果になるため、安直にゾーンを敷くわけには行きません。
最終Q残7分49秒、#44マーシャルがファールアウト(5反則退場)で外国人が#33ラーカイと#15ナイルズの二人になり、3人の外国人相手に戦うことに。この時点で65-61と4点のリード。
岩手は身長の低い日本人にマッチアップされてる選手をBigManが一人だけとなったゴール下に置いて攻めます。
しかしここはオフェンスの前に立つフル・フロントという積極的な守り方で凌ぎました。
ところがさらに残6分19秒、67-61の時にもう一人のBigMan#33ラーカイもファールアウトとなり、最高身長が194cmの#15ナイルズ+180cm #3蒲谷+180cm #13山田謙治+191cm #7堀川竜一+183cm #73久山という日本人4人体制。対する岩手は#31アブドゥーラ・クウソー(206cm)+#10スクーティー・ランダル(198cm)+#32ウェイン・アーノルド(193cm)の3外国人体制、しかも身体能力が高い。当然岩手はさらに有利なインサイド攻撃を仕掛けます。
だがここで諦めるビーコルじゃありません、海賊たちがハートを見せました。#73久山や#13山田が自分より20cmも高い外国人に対し身体を密着させたフル・フロントで守ります。いや、守るというより攻撃!!
相手が身体を捻ってきたり、ディフェンスの前を取ろうと掻き分けてきても、その前へその前へと脚を出し身体を預け守ります、オフェンスの3倍以上の運動量です。インサイドは守り切った、と言っても良いでしょう。
残3分40秒、72-65の時#15ナイルズがゴール下で接触し治療のためベンチへ下がることに。ついに全員日本人。
しかし凄いことは、日本人4人となってから2分33秒間、ビーコルは5点を取ったのに対し失点はたったの2点!
まさに「魂のディフェンス」を見せてくれました。
全員日本人となり、インサイドはさらに厳しいものなりますが、外もボールを追って強いプレッシャーを掛けます。しかし弱点のインサイドが気になるもので、ついついプレッシャーが緩くなると、そこをベテランの#32アーノルドに3Pを撃たれます。入らなくてもリバウンドが強いためプットバック(リバウンドしてシュート)されます。残1分15秒、岩手は#21ローレンス・ブラックレッジがプレッシャーのためフリースロー(以下FT)を2本とも外したが、それをアーノルドにプットバックされ、ついに74-72と逆転された!
しかし時間はまだまだ十分にある、ビーコルは慌てずゆっくりと攻めるが、岩手のディフェンスも強く高いため、簡単にシュートできない。
それでも#3蒲谷がドリブルで切れ込んでファールを取った。さあFT2本獲得。2本とも決めれば同点。
しかし2本とも外してしまった(涙)。かなりのプレッシャーと疲労だったろう。それでも次のディフェンスは脚を動かし、守りきったと言って良いだろう。
勝負としては72-75で敗れたが、ゲーム後、岩手・桶谷コーチが「ビーコルの気迫に圧倒された!」と絶賛したように、内容としては岩手に優った良いゲームだったと言える。
これを受けての11月1-2日の秋田ノーザンハピネッツ戦。ブースターは岩手戦ゲーム[2]の「強い気持ちのビーコル!」のイメージを抱いて応援に来たはずですが、最悪のゲームをしました。気持ちの準備ができてなくフワーっと入ってしまった。ボールが回って攻め方は悪くなく、良いシュートをしているはずなのにシュートがことごとく外れる、気持ちがこもってないんですね。
秋田戦は日本大学生物資源科学部体育館(藤沢市)で開催
シュートが入らないことって、不思議というか面白いというか、伝染することがあるんですね。誰が撃っても入らない。初得点まで4分49秒もかかりました。それもFTで1本だけ(涙)。
フィールドゴール(野投、以下FG)が入ったのは第1Q残りが8秒の時、ひょっとして第1Qは「ノーゴール??」とすら考えていた時です。#15ナイルズがペネトレイトしたシュートがリングに跳ね返ったところ#44マーシャルがティップして押し込んだもので、1Q4-17で終了。
1Qで4点しか取れなかったのは、ビーコル史上最低得点でした。まあ平均85得点の秋田を17点に抑えたことは、ディフェンス的には悪くないのですが。
その後はインサイドの#44マーシャル、#33ラーカイにボールを集め得点しますが、失点も多くなった。これは岩手戦を参考にしてBigManを外におびき出して機動力のある#15リチャード・ロビーや#41ルーベン・ボイキンズにペネトレイトさせたため。このゲームはその後ズルズルと離され59-79で敗れました。
ゲーム[2]、秋田は3Pが好調で前半は32-41と離されましたが、第3Qに#33ラーカイのインサイドが爆発、さらに#15ナイルズも加わり中盤に56-56と追いつき、64-70で最終Qへ。
#44マーシャルがファールトラブルのため外国人2人でスタートしたビーコル。ここを突かれ立ち上がりに外国人に連続して決められ、64-79と15点差に開かれましたが、#33ラーカイのゴール下で69-79としたのが精一杯だった。74-92で破れ10月19日(日)青森戦以来5連敗となってしまった。
ただ原因は判っている。それは青森戦以来、ゲーム[2]の最終Qを全部リードされてるってこと。つまり疲れがピークに達するところでズルズルと力が出せずに終わってしまうこと。
別にサボっているとか根性が無いわけじゃない、エナジー・タンクが空になるってことです。
他のチームは外国人を4人登録し、上手く回していますが、ビーコルは3人。その上#44マーシャルは時間制限がある。それは外国人にも負担が掛かるし、カバーする日本人にも負担が大きいし、外国人とマッチアップするとなれば、疲れ方も激しい。
解決法は簡単です。もう一人外国人と契約すればほぼ解消します。きっとチームはその努力をしてるはずです。
さて11月というと神奈川県の高校バスケ界では大きなイベントがあります。
「ウインターカップ(以下WC)県予選」です。インターハイ(以下IH)予選ファイナル4のチームだけが出場できる大会で、本大会へは1校だけの出場となります。
男子はIH同様、アレセイア湘南高が84-75で桐光学園を破り初出場を決めました。
一方女子は今回も県立金沢総合高(以下金総)vs県立旭高(以下旭)の横浜市内高同士の戦いとなりました。
準決勝は県立藤沢西高を80-64で下した旭に対し、準決勝で県立市が尾高に第3ピリオド(以下ピリ)まで負けていた金総。
ゲーム前「膝の怪我が回復した#6春日イザベル瑠璃の復帰が大きい」と話す旭の講武コーチ。
対する金総は「5人ともシュートが入らないことってあるんですね。3ピリの終盤にガードに当たらせて追い上げ、4ピリはシーソーで行って、最後は3P2本で引き離したんです」と語る金総・松木コーチ。
前日シュートが入らなかったことが不甲斐ないと感じたのだろうか、金総はエースの#7清田が立ち上がりから積極的に1on1を仕掛けシュートを入れてくる、その後も金総は1on1の攻撃が続くが気合が空回りする展開も。
金総・清田、旭#5平の両エースが1on1で勝負して決めてくる展開。技術ではなく気持ちが前面にでた展開だった。そして両チームともに周りの選手も積極的に撃って決めている。
38-34と金総が4点リードして前半終了。
注目された後半立ち上がり。旭はプレータイムに制限がある#6春日をベンチに置いた。ここで金総はディフェンスを強くし、一気に3連続ゴールし47-36と差を開いた残6分、旭は春日を投入。春日のインサイドでの活躍等で50-49と追い上げたがその後攻めきれず、再度離され63-54で3ピリ終了。最終ピリオド、金総はパスを多用して落ち着いて攻撃。徐々に差が開く。
旭はエース#5平にボールを集め徹底的に1on1を狙うが、金総もそれは十分に織り込み済みで、徹底マーク。78-70で金総が勝ち17年連続のウインターカップ出場権を獲得。
前日までは仕上がりが心配された金総。しかし決勝となると伝統の重み(自分たちで連続出場記録を断ちたくない)気合いの入り方が違っている。上手くない弱いと言われながらも最後は締める、それが金総なんです。
「東日本大震災復興支援 JX-ENEOSウインターカップ2014 平成26年度 第45回全国高等学校バスケットボール選抜優勝大会」は12月23日(火・祝)から千駄ヶ谷の東京体育館で行われます。
組み合わせは11月17日(月)18時発表予定です。
WC公式サイト:http://wintercup2014.japanbasketball.jp/
1946年生まれ。
月刊専門誌「バスケットボール・イラストレイテッド」の編集長を経て、バスケットボール用品のデザイナーとして活躍。特にキャラクター「あんたかベイビー」のTシャツは一世を風靡した。日本初のバスケット・ユニフォームデザイナーとしても活躍。当時強豪と言われる殆んどのチーム<実業団-大学-高校>に関して何らかのデザインを手掛けている。またスポーツ界では唯一のファッションのコラムを持っていた。
現在は自身のユニフォーム・ブランド「305」を立ち上た。
NBAに関しては「月刊バスケットボール・イラストレイテッド」編集者時代の1966年から連載を執筆。TV解説はNHK BS以前にも東京12チャンネルで1985年から行っており、日本最古のNBA解説者と言われている。
過去にはスポニチウェブサイトのNBAコラムを担当。月刊バスケットボール及び月刊バスケットボール・マガジン等に連載を持っていた。
横浜の中学・高校バスケの指導者、関係者とのつながりが深く横浜及び神奈川県のバスケ事情に精通している。
現在は横浜をホームとするBリーグ「横浜ビー・コルセアーズ」の名誉広報として情報発信やプレス対応などチームの広報活動に力を注いでいる。
また(社)神奈川県バスケットボール協会広報顧問も務めている。
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