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あんどうたかおのバスケにどっぷり

vol.83「中学男子 原中が強い」

暑い夏がやってきた。でも横浜の中学生の大会はもっと熱いぞ!

多くの3年生にとっては中学最後の大会となるのが女子164校、男子165校が参加して行われた横浜市立中学校総合体育大会(市大会)です。そしてそこを勝ち抜いた男女各12校が県の中学総体へ出場し、さらにこの大会で優勝+準優勝の2校だけが8月8日(金)から東京都の大田区体育館で行われる関東大会への切符を手に入れることができる。

7月5日(土)から始まった市大会、男子で本命視されていたのは192cmの#7宮本を擁する市立原中(瀬谷区、以下原中)、昨年の県大会では2回戦で綾瀬中に49-59で負けましたが、主力メンバーは2年生、つまり今年のメンバーというわけで、2年がかりで作ったチームと言えます。原中に次ぐのは市立豊田中(戸塚区、以下豊田中)、市立樽町中(港北区、以下樽町中)、市立岩崎中(保土ケ谷区、以下岩崎中)、市立岡村中(磯子区)、市立六角橋中(神奈川区、以下六角橋中)の常連校が上位グループとなり、その下に市立富岡中(金沢区、以下富岡中)、市立中田中(泉区)、市立戸塚中(戸塚区、以下戸塚中)、市立岡津中(泉区、以下岡津中)、市立浜中(磯子区)、市立松本中(神奈川区)が続いています。

 

7月24日(木)に行われた市大会決勝は原中vs豊田中。ゾーンプレスで仕掛けてる豊田中に対し、スピードあるドリブルとパスワークで突破しシュートへ持ち込む原中。#4清野のジャンパー(ジャンプシュート)と鋭いATB(Attack The Basket、リングに向かってドリブルで攻め込むこと、ペネトレイトともいう)や#5菊川のATBで得点。さらにシュートをミスしても#7宮本がプットバック(リバウンドを取りシュートすること)を決め、一気に点差を広げ25-6で第1ピリオド(以下ピリ)を終えた。
豊田中はその後も原中の強い守りにATBできず、外でボールを回し外からのシュートに頼ることに。しかしゴール下には192cmの#7宮本がいてリバウンドが取れないため、シュートの確率は下がってしまう、という悪循環に陥り、前半を48-9で折り返すことに。

意地を見せる豊田中は後半に強いゾーン・ディフェンスを敷きスティールから速攻を連発したが、長くは続かず、結局78-31という大差をつけて原中が優勝しました。

この結果県大会へは上記の12チームが県大会へ進出。市大会男子結果はこちらで見られます。
http://www.kanagawabk.or.jp/update/wp-content/uploads/2014/07/sotai-resultMH260724.pdf

一方女子は戸塚中、市立鶴ケ峯中(旭区、以下鶴ケ峯中)がトップ集団を形成し、その下に市立大道中(金沢区、以下大道中)、市立旭北中(旭区)、市立田奈中(緑区)、その下の市立山内中(青葉区)、岩崎中、市立今宿中(旭区)、市立洋光台第一中(磯子区)、六角橋中、岡津中、富岡中が続きますが、男女共に強豪校が多く見受けられる。

女子決勝は戸塚中vs鶴ケ峯中で争われましたが、戸塚中・足立洋介コーチと鶴ケ峯中・高砂祐一コーチは市立金沢高の先輩後輩の間柄で、神奈川県バスケットボール協会・柿沼憲一会長の教え子であり、勉強会等を開く柿沼ファミリーなのです。そのため練習ゲーム等は頻繁に行っていたそうですが、さすがに今シーズンだけは2強の予感があり、やらなかったとか。

お互いに手の内を知っているチーム同士の対戦、6月の選手権大会では45-30で戸塚中が勝っていますが、戸塚中がこの時に仕掛けた1-2-1-1のフルコート・ゾーンプレスに鶴ケ峯中が又もまんまと引っかかり、前半だけで26-15と差を付けて大勢を決めました。後半鶴ケ峯中もゾーンプレスでミスを誘い37-27と追い上げたものの、戸塚中はロングパスで崩し3Pで得点し、4ピリ残5分に42-27と広げ勝負を決めました。

以上の結果、上記12チームが県大会へ進出しました。

優勝した戸塚中は#5工藤が165cm、#4川村は162cmでやや大きいがフロントライン(フォワードやセンター・ポジション)としては小さい部類で、#7山下155cm、#30高橋158cm、#311相田157cm達がガードとして平均的な身長、つまり全体的には小さいチームといえます。

このチームが強いのは戸塚という地域性にあります。昨年書いたように旭区と並んでミニが強い地域で、東汲沢、矢部アローズ、戸塚という強豪チームから、戸塚中の練習はキツい、ということを承知で入ってくる子が多いことも影響しています。足立コーチも研究熱心で、全日本等強豪チームのVTR等で常に勉強しています。

ちなみに言えば戸塚は「日本ミニバス発祥の地」なのです(諸説あります)。

◆女子結果はこここちらで見られます。
http://www.kanagawabk.or.jp/update/wp-content/uploads/2014/07/sotai-resultGH260724.pdf

県大会は7月28日(月)から31日(水)まで、藤沢市と寒川町で行われました。女子は本命・相模女子大中等部(相模原地区1位、以下相模女)、横須賀市立坂本中(横須賀地区1位、以下坂本中)に次いで戸塚中がシードされ、ファイナル4には相模女、坂本中、そして横浜の戸塚中と鶴ケ峯中が残り、4チームによる決勝リーグが行われました。横浜からも進学者が多い相模女は能力も身長も高く、メンバーも豊富で強いディフェンスを仕掛けます。坂本中は将来の全日本入りも噂される、動けるBigWoman奥山を中心に大きな選手が多いチーム。

決勝リーグ緒戦、戸塚中は相模女と対戦、高さとディフェンスに押され19-59と大差をつけられたが、関東ブロック大会へは2チームが出場できるので、まだ心配は無い。
一方鶴ケ峯中は、奥山が前のゲームで捻挫しており出場してない坂本中と対戦。接戦を続けていたが、坂本中は途中で奥山を出場させ高さを活かした展開に持ち込み鶴ケ峯中を57-47で下し、横浜勢は痛いスタートとなった。

最終日、まず鶴ケ峯中は相模女と対戦。前半は追いついていたものの、後半一気に離され38-48で破れ大ピンチ。戸塚中も坂本中に接戦したものの、終盤で引き離され34-41で破れ、相模女と坂本中が2勝0敗、戸塚中と鶴ケ峯中が0勝2敗となり、この時点で関東大会出場の夢は絶たれてしまった。

一方男子はシードの#1に原中、#2豊田中、樽町中が#3となり、トップシード中3チームが横浜勢となっています。原中はファイナル4決めのゲームで湘南地区2位・藤沢市立高浜中を73-45と寄せつけず、豊田中も湘南地区1位・藤沢市立善行を44-39の接戦でモノにし、樽町中も同じ横浜代表の六角橋中を66-44で下し、圏央地区1位の今泉中を61-48で破った南足柄市立足柄台中(県西地区1位、以下足柄台中)の4チームが決勝リーグ進出を果たしましたが、3チームが横浜勢です!!

決勝リーグ1戦目、原中は足柄台中を61-33で下し、浜っ子同士の対戦では67-58で市大会同様の結果で豊田中が樽町中を破り、2戦目では原中57-43樽町中、豊田中52-40足柄台中とし、女子同様早々と関東大会出場を決め、3戦目の決勝戦は横浜市大会決勝のリマッチに。

◆男子決勝 原中vs豊田中
豊田中はいきなり3Pを決め、市大会リベンジの強い意思を見せたが、それが原中キャプテン#4東野(178cm)を焚きつけることになった。直後に3Pと鋭いATBで9-3とすると、その後は得意の強いディフェンスで豊田中のミスを誘い速攻に持ち込み、第1ピリオドを20-3とリードした。その後も強いディフェンスで圧倒し75-36で勝ち優勝し、初の関東大会出場に花を添えた。

横浜市の中学の傾向は、1年前「vol.71 横浜の中学が強いわけ」に書いたように「スピードとクイックネスがあり、ドリブル等のスキル(技術)を持っていて、シュートが上手く、バスケットを良く知っているが、全体的に身長は低いこと」で、典型的なのが豊田中です。豊田中も原中さえいなければ優勝できる力はあるんです。
ところが原中の強さは「豊田中+BigMan」なんです。東野は178cmながらポイントガードとしてチームを牽引しますが、オールマイティーで、スピードある鋭いATBだけじゃなく3Pも得意。もう一人のガード#5菊川も168cmながらペネトレイトが上手く、#6渡辺は165cmで一番小さいがジャンパーが得意で、#8清野は東野と同じ178cmでリバウンドやペリメーターのシュートが得意。
そして192cmの#7宮本がペイント内でリバウンド、シュート、ブロックと高さを活かしたプレーが得意のゴール下の魔人。とはいえ多くの関係者に聞くと、宮本が最近上手くなったと言われます。
市大会までは清野と組んでハイロー(ハイポストからローポストへ、大きい選手同士のパスプレー)を使っての攻めがあったものの、読まれてしまい県大会ではあまり宮本にボールが入ってなかった。それでも勝てるのが原中の強みでしょう。

今年で4年目となる幾田登コーチ、横浜市の名門中学・浜中で伊藤先生の指導を受けたことが、指導者を志すきっかけとなり、県立港南台高では元国際審判・石田秀敏先生から考えるバスケットを教わった。石田は横浜市立桜が丘高時代には国体選手に選ばれ、少年男子の部で神奈川県に初の優勝をもたらし、東京教育大(現筑波大)進学後も選手で大活躍後、日本リーグ(現NBL)には進まず教員の道へ進み審判員となり、オリンピックでアメリカ戦を吹いた日本随一の審判員として有名になった。
幾田は東海大へ進学したが当時は今のように強豪チームではなく、卒業後は教員となりバスケットの指導者の道を選び、市立永田中時代は女子チームを関東大会出場、前任地・岩崎中でも男子チームを関東大会へ一度出場させている。周りの指導者からは「練習は厳しい、1on1が基本、1つのプレーを徹底してやらせる、繰り返してやらせる。熱い男」という声が聞こえますが、「戸塚中の足立と同じだな!」という声も。

期せずして取材した男女トップ・チームのコーチが同じような評価を受けたのには驚きであり、納得でもあります。2人とも「ディフェンスから」というのも共通してます。


ゲーム前に相手の練習を見ながら話し合う幾田コーチと東野キャプテン、中学では非常に珍しいことだ

高さを備え神奈川県ではダントツの原中ですが、この後8月8日〜10日に東京の大田区体育館で開催される関東大会では、簡単に勝ち進めるほど甘くはありません。プレスに対するボール運びや相手ディフェンスへの対応力等の強化を幾田コーチは挙げてますが、U-16日本代表男子チームリーダーの大平敦先生(鎌倉市立玉縄中校長)は「もっと#7宮本君をインサイドで使った方がいいだろう。関東を抜けるには、リバウンドを取れるのだから、リバウンドからの速攻を出した方がいいのではないかな」とアドバイスがありました。

期待できる男子横浜勢を応援に行きましょう!

男子は大田区体育館で9日(土)10日(日)。女子は大森スポーツセンターで8日(金)〜10日(日)
男子組み合わせ http://tokyobasketball.jp/wp/wp-content/uploads/2014/08/H26JHSKANTOM.pdf
女子組み合わせ http://tokyobasketball.jp/wp/wp-content/uploads/2014/08/H26JHSKANTOW.pdf

大田区体育館 http://ota.esforta.jp/access/index.html
大森スポーツセンター http://jhs.tokyobasketball.jp/kanto2014/files/map_SC.pdf

あんどうたかお プロフィール

1946年生まれ。

月刊専門誌「バスケットボール・イラストレイテッド」の編集長を経て、バスケットボール用品のデザイナーとして活躍。特にキャラクター「あんたかベイビー」のTシャツは一世を風靡した。日本初のバスケット・ユニフォームデザイナーとしても活躍。当時強豪と言われる殆んどのチーム<実業団-大学-高校>に関して何らかのデザインを手掛けている。またスポーツ界では唯一のファッションのコラムを持っていた。

現在は自身のユニフォーム・ブランド「305」を立ち上た。

NBAに関しては「月刊バスケットボール・イラストレイテッド」編集者時代の1966年から連載を執筆。TV解説はNHK BS以前にも東京12チャンネルで1985年から行っており、日本最古のNBA解説者と言われている。

過去にはスポニチウェブサイトのNBAコラムを担当。月刊バスケットボール及び月刊バスケットボール・マガジン等に連載を持っていた。

横浜の中学・高校バスケの指導者、関係者とのつながりが深く横浜及び神奈川県のバスケ事情に精通している。

現在は横浜をホームとするBリーグ「横浜ビー・コルセアーズ」の名誉広報として情報発信やプレス対応などチームの広報活動に力を注いでいる。

また(社)神奈川県バスケットボール協会広報顧問も務めている。

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