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あんどうたかおのバスケにどっぷり

vol.70「金総復活」

横浜ビー・コルセアーズも優勝してから1か月半ほど経ち、現在オフとなり契約の季節となりましたが、この話は次回にでも。

6月末というと、バスケット界では全国的に高校の大会が注目されます。それはインターハイ(以下IH)予選が各地で行われるからで、神奈川県では5月11日から県予選の予選となる各ブロック大会が行われ、勝ち抜いてきた男女共32チームにより「第51回神奈川県高等学校総合体育大会バスケットボール競技 兼 平成25年度全国高等学校総合体育大会バスケットボール競技神奈川県予選 兼 第66回全国高等学校バスケットボール選手権大会神奈川県予選」という長ったらしい名称の大会が5月26日から行われました。神奈川県からは男女共に2チームずつがIHへ出場できます。

■男子春に行われた関東大会県予選では初の準優勝に輝いた横浜清風高(以下清風)に期待が寄せられました。組み合わせは第2シードといえるBブロック。関東大会県予選で98-84と下した第3シードだった東海大相模高を再度下して、4チームで争われる決勝リーグ進出を決めました。


関東大会 横浜清風vs文星

その清風と関東大会県予選で準決勝を戦った慶應義塾高、Bブロックでの関東大会出場で決勝まで勝ち進み桐生第一高(群馬県)に83-121で負けましたが、大きな経験を積みました。今年は#6高橋晃史郎(3年190cm田浦中)を中心に、シューター#5須賀公佑(3年178cm岩崎中)とオールラウンダー#7堂本阿斗(3年185cm慶應中等部)と良いメンバーが揃いましたね。IH予選では第4シードのDブロック決勝で法政大二高(以下法政)に59-76で惜しくも敗れ決勝リーグ進出はなりませんでした。


関東大会 慶應vs足立

6月16日に行われた決勝リーグ第一日目、清風は強敵・桐光学園相手にディフェンスが機能して桐光を64点に抑え66-64で辛うじて勝ち、IH出場へ大きく前進しました。このチームはチームをコントロールしながら自からも得点できるキャプテンでPG#4阿達隼人(3年175cm上の宮中)がメインとなり、#7塚田駿輔(3年184cm南戸塚)の外のシュート、そしてインサイドで堅実に守り、リバウンドし、得点する#8栗原雷太(3年187cm腰越中)が中心となります。栗原は長身選手が少ない神奈川県では純粋のセンターとして貴重な存在です。 決勝リーグ2日目、清風の相手は関東大会予選ではベスト8止まりだった法政、しかし法政はそこから大きく進歩していました。ATBを仕掛け、豊富なメンバーを取り替え引き替えして常に強いプレッシャーを掛け続けたのに対し、清風は栗原がゴール下で頑張るだけで、組織的なオフェンスができず58-80で敗れてしまった。 ただ清風にとってラッキーだったのは、決勝リーグ初日に法政に勝った厚木東が桐光に敗れ、全チームが1勝1敗となり、振出しに戻ったことです。これにより翌最終日に勝った2チームがIH出場権を獲得するわけです。最終日、先ず桐光が法政を65-36で下し出場を決めました。清風の対戦相手は桐光と共に強豪といわれる県立厚木東高。県立秦野高を強豪校にした永田先生が転勤してきて、この数年は小さいながらも瞬発力、スピード、得点力、強いプレッシャーのディフェンスを活かしたプレーで神奈川県の強豪となったチームで、201cmの#8小久保克俊(3年秦野南中)が入ったことでヴァージョンアップされてます。


関東大会 厚木東vs国学院久我山


厚木東vs横浜清風


厚木東vs横浜清風

このゲームはTVKで中継されましたので、ご覧になった方もいらっしゃるかと思います。 2日連続のゲーム、更にベンチの層が薄い(控えメンバーが少ない)清風にとっては、走り回りメンバーを替え強いディフェンスをする厚木東は苦手とするところですが、そんなことは言ってられません。初めからディフェンスをフルコート・プレスで仕掛けます。厚木東は例によってメンバーをガラリと変えてきます。清風とすれば、ベンチメンバーの時に差を詰めたいところですが、捕らえることができず33-39で前半を終えた。後半になり外からのシュートが多くなりましたが、疲れのためか確率が悪く、落ちたボールから速攻を出され、徐々に差が開いていき38-49と離され、その後も得点できるのはゴール下の栗原だけで、60-97で敗れ、初のIH出場はなりませんでした。

■女子1校も出場できない男子に比べ女子は決勝リーグに3チームも進出しました。関東大会予選では第6シードから準決勝まで勝ち進んだ県立市ヶ尾高(以下市が尾)が、Cブロック決勝で相模女子大を62-57で破り決勝リーグへ。しかしながら県立旭高(以下旭)に34-56、県立金沢総合(以下金総)に60-78、県立山北高に55-70で全敗となりIH出場とはなりませんでした。神奈川県で高校女子といえば、最近は横浜の「金総」と「旭」、この2チームでしょう。金総を全国的強豪校に作り上げた星澤先生が昨年3月定年退職となり、現在は教え子であり金総教諭の清水 麻衣先生が引き継いでいます。星澤先生についてアシスタント・コーチをしていた清水先生ですが、若いうえにヘッド・コーチの経験が無く、いきなり全国区のチームを任されても荷が重すぎます。昨年度はまだ星澤先生の遺産があったのでどうにか保てましたが、今年が正念場です。この大変な年に主力の長身センター星澤真(3年181cm王禅寺中央中)が怪我で出場できません、弱り目に祟り目とはこのことです。それが影響したのか、5月の関東大会決勝vs旭戦では得意のディフェンスは弱く、肝心の3Pシュートどころかゴール下シュートもポロポロ落とす始末で、女王の片燐は無く、表情からは自信が見て取れず、怯えているような感じすら窺え、旭に46-75と大敗を喫しています。それでも1か月後に東京体育館で行われた女子関東大会では第1シードの土浦日大高を77-68で破ることができ、少し回復してきました。


関東大会 金総vs土浦日大

旭は昨年から出ている選手が多くPG #5北村野々花(3年156cm大谷中)を中心に外からも中でも攻められる進境著しいパワーの#6坂本コーコ麻世(3年163cm蒔田中)とフォワード#4稲葉絵里(3年170cm渋谷中)、#7川越葵(3年172cm中大横浜山手中)に2年生の#11平典紗(159cm鵜野森中)とスピードスター#16河西菜津姫(3年160cm飯島中)で構成され、坂本がパワーを活かし得点するが、インサイドでもう一人頑張れる選手がいるともっと強くなれるチームです。関東大会では千葉経済大附属校を77-53で下し、2回戦でも県立宇都宮中央女高を89-67で破り準決勝へ進出しました。残念ながら埼玉の山村学園高に67-89で敗れ決勝進出はなりませんでしたが、関東大会予選で金総に勝ったことが自信となったのでしょうか? 決勝リーグは金総が山北を90-66、市ヶ尾を78-60で破り、旭も山北を71-57、市ヶ尾を56-34で下し、2日目で両チーム共にIH出場を決めました。とはいってもこの2チームにとっては当たり前のことかもしれません、むしろ優勝する、いや金総は旭を、旭は金総を破ることがとりあえずの目標になっていたと思います。
◆スタメン金総:#4吉成文(3年161cm平戸中)、#5大沼明日郁(3年169cm鴨宮中)、#6清田陽香(2年164cm大洋中)、#7五十嵐律美(3年165cm中大横浜山手中)、#10三上夏侑(3年166cm錦台中)旭:#4稲葉、#5北村、#6坂本、#7川越、#11平


金総vs旭

前日の市ヶ尾戦ではチーム・ディフェンスが良くなかった金総でしたが、このゲームでは見事に直されています、特にインサイドへのディフェンスが強く、旭は簡単に中へ入れません。関東大会から入り出した3Pは#11今泉真奈美(3年162cm中和田中)が的確に決めると、#8八木澤里奈(3年171cm中大横浜山手中)はドライヴして切り崩し、バランスよく攻め、更にキャプテン吉成が要所要所を締め、王道のバスケットを展開し、金総らしさが出てきました。一方旭はガードの#5北村が3Pを決め、#6坂本がペイント・エリアで頑張るものの、本来のインサイド陣がピリッとせず、31-23で金総がリードして前半を終了しました。


旭・坂本選手(右)

後半も同じような状態が続きますが、第4ピリオドで旭は#5北村の活躍で追い上げを見せましたが、金総は#7五十嵐が連続でペネトレイトを決め決着をつけました。60-55で金総が勝ち10連覇を達成です!!! 春の大敗で修正点や不足部分が判ったことが、今回の復活に繋がったのでしょう。吉成キャプテンは「ディフェンスを頑張った。ゲーム前は10連覇が掛かっていたのでプレッシャーは感じていた」と言ってましたが、「ゲームが始まったら楽しくできました」と付け加えてました。 今までは神奈川県内の大会で勝つことが当たり前で、勝負は全国大会だった金総。まだ以前の金総にまでは復帰してませんが、とりあえず神奈川県で優勝して、女王金総の復活と言ってよいでしょう。
IH予選結果はこちらでご覧ください(神奈川県バスケットボール協会公式サイト)
*用語注釈 ATB:Attack The Basketの略。リングを攻める、ということで、積極的にドリブルでゴール下へ攻め込むこと。

あんどうたかお プロフィール

1946年生まれ。

月刊専門誌「バスケットボール・イラストレイテッド」の編集長を経て、バスケットボール用品のデザイナーとして活躍。特にキャラクター「あんたかベイビー」のTシャツは一世を風靡した。日本初のバスケット・ユニフォームデザイナーとしても活躍。当時強豪と言われる殆んどのチーム<実業団-大学-高校>に関して何らかのデザインを手掛けている。またスポーツ界では唯一のファッションのコラムを持っていた。

現在は自身のユニフォーム・ブランド「305」を立ち上た。

NBAに関しては「月刊バスケットボール・イラストレイテッド」編集者時代の1966年から連載を執筆。TV解説はNHK BS以前にも東京12チャンネルで1985年から行っており、日本最古のNBA解説者と言われている。

過去にはスポニチウェブサイトのNBAコラムを担当。月刊バスケットボール及び月刊バスケットボール・マガジン等に連載を持っていた。

横浜の中学・高校バスケの指導者、関係者とのつながりが深く横浜及び神奈川県のバスケ事情に精通している。

現在は横浜をホームとするBリーグ「横浜ビー・コルセアーズ」の名誉広報として情報発信やプレス対応などチームの広報活動に力を注いでいる。

また(社)神奈川県バスケットボール協会広報顧問も務めている。

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