vol.63「今年を振り返る」
今年も残すところ、あと半月ほどとなりました。
早いものですね、年々早くなると感じるのは歳のためか(笑)。
さて、年末と言うことで、今年1年を横浜ビー・コルセアーズ(以下:ビーコル)中心に振り返ってみましょう。
正月と言えば、バスケットボール界では1月1日から始まるオールジャパン(全日本or総合選手権大会or天皇杯・皇后杯とさまざまな言われ方をしますが、全カテゴリーを集めての日本ナンバー1を決める大会)となります。
この大会に、横浜市からは高校女子・県立金沢総合高等学校(以下:金総)がインターハイ(平成23年度全国高等学校総合選手権大会)優勝チームとして推薦され出場し、鶴屋百貨店(九州代表)を88-74、秋田銀行(社会人1位)も69-50と下しベスト8へ進出しました。高校勢としては49年ぶりとなるベスト8入りと言う快挙を達成しました。
次に対戦する相手はWJBL3位で、先輩#35小畑亜章子がポイントガードを務める強豪、デンソー・アイリスです。ここに勝てばファイナル4ですが、簡単ではありません。
身長が勝敗に大きく作用するバスケットと言う競技です。平均で6cmも低い金総は歯が立つわけがありません。まして相手のセンター#5高田真希は日本代表のスタメン・センターですし、小畑も名ベテランガードです。
一方、金総はインターハイ優勝後気が緩んでいましたが、歴代のOG達が選手の気を引き締めてくれました。
と言うのは、監督で教師でもある星澤純一が定年のため、この大会が最後のゲームとなるからです。
富岡高等学校時代から数えて35年間指導をしてきましたが、公立校として、専用体育館がないどころか週に数回しか使えない、という厳しい環境の中、インターハイ3回、ウィンターカップ(冬に行われる高校選抜大会)1回優勝と言う輝かしい実績を上げてます。
金沢総合高等学校vsデンソーアイリスの一戦
このゲームは当然ながらデンソーが86-62で勝ちましたが、互角に戦い、終盤に追い上げる場面もあったほどの大健闘で、終了後は場内から大きな拍手が起こりました。
そして終了後に教え子であり、相手チームのエースである小畑から花束とプレゼントを貰い、さすがの星澤の目にも光るものが。
「インターハイ優勝後、少し精神的に緩んでいたのですが、この大会が私にとっても選手にとっても最後だと言うことで頑張ろうと。本当にこの3試合は気持ちの入ったバスケットをやってくれた。ウィンターカップで中途半端な成績(準々決勝敗退)となり、35年間やってきたことが最後出せずに終わるのかなと思ったが、ここでやってくれたので、こんな幸せなコーチが居て良いのかなって心境ですね(笑)」と心境を語ってくれました。
金沢総合高等学校・星澤純一監督(当時)とデンソー・アイリス・小畑亜章子選手(金総OB)
※小畑さんは、2011-2012シーズンをもって引退されました。
さて、1月と言うとビーコルに変化があった月でもあります。
新チームとしてスタートした昨年10月、コンビネーションも出来ずチームプレーも噛み合わなく2011年12月終了時点で9勝13敗(勝率40.9%)と散々の成績、それも年末にホーム横浜国際プールで対戦した富山(当時8勝10敗、イースタン・カンフェレンス7位)戦、下位チームにまさかの連敗でした。
しかし気合を入れ直して迎えた正月、年が明けた途端に埼玉戦で2連勝、アウェーの新潟で1敗したものの1月は5勝1敗で通算成績を14勝14敗の五分に戻しました。
1月15日bjリーグ オールスター・ゲームがさいたまスーパーアリーナで行われ、ビーコルからは#24ジャスティン・バーレルが出場し、イースト・チーム後半の追い上げの立役者となりました。
スラムダンク・コンテストにも出場しましたが、成績は書かない方が良いでしょう(笑)。
オールスター出場を果たした#24ジャスティン・バーレル選手のダンク
(写真は平成23年10月のもの)
1月はまだまだあります。
高校の県新人戦(2年生までの出場)女子決勝は金総vs県立旭高等学校とで争われ、2週間ほど前にオールジャパンに3年生が出場していた金総が80-51で優勝しました。星澤を引き継いで監督に就任したOGの清水 麻衣の1勝目となりました。
2月と3月初め、ビーコルは我慢月間でした。
ウエスタン・カンファレンスの強豪(島根、沖縄、宮崎、大阪、京都)と対戦でしたが、首位・沖縄をはじめほとんどが上位チーム。ここを1勝1敗ペースで過ごせれば上出来かなと思ってましたが、見事5勝5敗で乗り切りました。
これで見通しが立ちましたね。レジー・ゲーリーヘッドコーチは、敗れたものの沖縄相手に互角に戦えたことで手ごたえを感じたようです。
3月はミニバスケットの全国大会があり、横浜市からは女子の川上北が神奈川県代表で出場しました。
ビーコルは結局この月は5勝3敗と勝ち越し、トータルでも23勝21敗と勝ち越しました。
4月のビーコルは快進撃です。
3月25日横須賀で開催された千葉との第2戦を97-80と勝利してから連勝が続きます。
強豪・秋田にアウェーで2連勝したのは大きかったですね。翌週はドアマットチーム・高松(ドアマットのように他チームに踏みつけられる弱いチームのことを指す用語。2011-2012シーズンの高松の成績は、2勝50敗で3シーズン連続ウエスタン・カンファレンス最下位)に連勝し、4月20日(金)・21日(土)、平塚でホーム最終となる仙台2連戦。ビーコルはここで勝利し、秋田と新潟が負ければ、ビーコルの2位が確定します。
4月21日、リーグ戦ホーム最終戦より(会場:平塚総合体育館)
20日の勝利に続き、21日も勝利し、一足早くゲームを終了したビーコルは、ボランティアをはじめインターン、平塚協会、音響、照明、MC、チアパフォーマーが集まり、ご苦労さん会を開いていました。しかし気になるのは秋田と新潟の結果です。秋田は岩手と、新潟は滋賀と対戦です。
秋田と対戦した岩手のヘッドコーチは「あんたかファミリー」の冨山晋司です。
彼はFacebookで「うちは秋田に勝つ予定なので、ビーコルの2位は固いでしょう」と宣言してくれました。頼もしい限りです(笑)。
新潟の逆転負けが先に決まり、後は秋田の「負け待ち」です。しかし秋田がずーっとリードしていて、半ば諦めていましたが、土壇場で岩手がまさかの逆転勝ち!! 冨山、でかした(笑)。
最終ゲーム、仙台へは余裕のアウェーです。
この頃から「カツサンド」ならぬ「勝サンド」を食べ始めました。ある時のゲーム前に冗談で「カツ丼」を食べました。そうしたら勝っちゃったんです(笑)。
翌週のビーコル定例MTGで昼食に全員で「必勝(かなかつ)」と言うお店のカツ定食を食べました。そうしたらまた勝っちゃったんです。こうなると止めるのが怖くなってきて(笑)、それからはずーっと「勝サンド」や「勝丼」です(笑)。仙台遠征時も「勝定食」と「勝丼」でした。
定番となりつつあるランチのカツ(勝)定食。これだけでなく、メディアルームのカツ(勝)サンドで、ビーコル・メディアの気持ちも一つに
そのお蔭で2勝して仙台に4連勝となり、カンファレンス2位でプレーオフ出場。それも2回戦(カンファレンス・セミファイナル)からとなりました。これが良い結果を生みました。
4月29日、仙台でビーコル最初のレギュラー・シーズンを終了しましたが、まだまだプレーオフが残っています。
5月はビーコルのクライマックスですが、これは後に取っておきましょう。
6月。高校生の大会が花盛りです。男子関東大会が群馬で行なわれ、Aブロックに横浜清風高等学校、Bブロックに県立市が尾高等学校、横浜高等学校が出場し、横浜高がBブロックで3位になりました。
一方、女子はさいたま市で行われ、Aブロックに金総、県立旭高等学校が出場し、金総が準優勝しました。
そしてすぐインターハイ予選です。
男子は横浜高が4チームで争う決勝リーグに残りましたが、4位のため出場できませんでした。女子は金総、旭が決勝リーグに残り、金総が1位で出場を決めました。
IH神奈川県予選女子 金総 vs 旭
8月はインターハイと中学大会の季節です。
インターハイは清水新監督率いる金総が3回戦へ進出しました。
中学は混戦で、市大会と県大会で順位が入れ替わる事態となりました。
県大会、男子では1位だった桐蔭中が1回戦で5位の岩崎中に敗れる波乱が起き、同じく5位の金沢中は本命の衣笠中を最後まで苦しめ、豊田中と岩崎中が関東大会に出場しました。
神奈川中学総体男子 衣笠vs豊田
女子は横浜3位の平戸中が1位戸塚中を決勝リーグで破り、優勝を果たしました。そして、平戸中、戸塚中、万騎が原中が関東大会へ出場しました。
神奈川中学総体女子 平戸vs戸塚
しかしさいたま市で行われた全国大会には残念ながら1校も出場出来ませんでした。
8月は個人練習のビーコルですが、オフィシャルカメラマン佐々木智明さんによる「シーズンを振り返った写真展」が横浜山下公園隣の県民ホールで5日日曜日まで開催されました。
「佐々木智明写真展 横浜ビー・コルセアーズ “maiden voyage”」
9月はビーコルに新メンバーが来ました。
昨シーズン3位のチームから#1チェイス・マクファーランド、#10マーカス・シモンズ、#24ジャスティン・バーレルの3人が去り、新たな船出に向け#1トーマス・ケネディーと#43ポール・ビュートラックの2人の新外国人と前シーズン練習生だった#37河野誠司がトライアウトを経て契約、この3人が乗り込みました。
写真は10月9日・ビーコル メディア・デーでのヘッドコーチ・キャプテン・新加入選手記者会見の模様
※#43ポール・ビュートラック選手とは12月11日、契約解除となりました
トーマスは個人技が上手く得点能力の高い選手で、ポールは大型ながら外から得点できます。ただし、二人とも身長が馬鹿高くないのでリバウンドが心配されてますが、外からの攻撃力はドカンと増えました。
そう言えばファイ・パプ・ムールが背番号を6から10に変更しました。
ビーコルは24日から台湾で行われた2012ABAチャンピオンシップにbjリーグ推薦で出場しました。
全員が揃ってから期間が短かったため、連続して行う大会形式は大いに役立ちました。中国、韓国、台湾各国クラブのトップ・チームが集まったこの大会の成績は4チーム中4位でしたが、いずれも接戦だったので上出来です。
10月、いよいよビーコル2度目の航海へ出帆しました。
他チームの開幕から1週遅れて13日(土)アウェーの埼玉県所沢市民体育館。シーズン開幕戦となると、やはり心配になるもんです。ディフェンスの連携は上手くいくのか、インサイドが弱いけどそこを突かれたらどうなるのか、3Pは入るのか…等々。
セカンドシーズンのスタートは意外なものでした。スタメンに、昨シーズン怪我でプレータイムがほとんどない#15堀田剛司、そしてセンターにはパプを起用しました。埼玉のディフェンスが良く、ずーっと競っていましたが、第3Qに相手のテクニカル・ファールで得たフリースローから一気にリードを奪い、一度は追いつかれたものの、最終Qはキャプテン蒲谷が爆発、3Pを決めまくりチーム史上最高記録の115点を挙げ大勝しました。とは言え94点も取られるとは「ディフェンスのビーコル」の名がすたると言うもの。
この開幕戦にはビーコル・ブースターさんが100人以上も応援に来たうえ、多くのビーコル・メディア(報道関係)さんも来ていただきました。嬉しかったですね。
次のゲームも88-71と勝ち、2連勝での好スタートとなりました。
11月は高校のウィンターカップ(平成24年度 第43回全国高等学校バスケットボール選抜優勝大会、広島市で開催)神奈川県予選(「東日本大震災」被災地復興支援 平成24年度神奈川県高等学校秋季バスケットボール大会)が行われました。これは6月末に行われたインターハイ県予選でファイナル4に残ったチームによるトーナメントで、男女とも1チームだけが出場となります。
男子は横浜高が1回戦で優勝した桐光学園に96-81で敗れました。
一方女子は、金総と旭の横浜市同士で決勝を争いましたが、61-54で金総が勝ち15年連続22回目の出場を決めました。偉業ですね!
そして12月、ビーコルの調子が上がってきました。
5勝1敗です(12月14日現在)、それも強豪秋田と富山に勝ってます。#1ケネディーがチームのシステムに馴染み、得意の3Pを撃てるようになったうえに、ディフェンス面でも噛み合ってきました。
とはいえ油断は禁物です。秋田は外国人が入れ替わったばかりで、チームとして機能できない状態、仙台も新外国人が数日前に合流、即スタメンと言う荒っぽいことをやっているので、コンビネーションどころではない状態で、ラッキーだったといえます。
とはいえ「運も実力の内」っていいますからね。
さて、5月のビーコルのプレーオフです。
カンファレンス2位になったことで2回戦(準々決勝)からの登場となります。実は直前まで体育館の用意がしてなく、苦心の末横浜市の援助もあり10日木曜日と11日金曜日となりました…と言うよりこれしか方法がなかったのです。
でも、これが結果的には秋田に勝った要因の一つでもありました。
というのは、プレーオフ1回戦はその前の週の土日に行われました。勝った秋田は月曜日1日だけ休み、水曜日に横浜へ移動というタフなスケジュールです。対するビーコルは休んでいるので体調は万全です。秋田の中村ヘッドコーチは10日の敗戦後にスケジュールに対する不満を記者会見で言っていましたね(笑)。
そのため、10日のゲーム-1は86-74と思い通りの展開で勝利しました。そして翌11日、このゲームで勝てばプレーオフ・ファイナルズへ進出です。しかしここで引き下がるようなチームはこの場にはいません。負けるもんかとばかりに凄まじいエナジーでゲーム-2に臨んでくるチームだけがプレーオフに出てきます。
秋田は前日の倍のエナジーでディフェンスしてきました。集中力を切らさず最後までシュートを外すことがなく、ビーコルは69-82で大敗して1勝1敗のタイとなりました。このゲーム、ビーコルも最後までゲームを投げず、真剣にプレーを続けました。その結果の大敗、そうなるとゲーム-2終了20分後に行われるゲーム-3は、どうしてもゲーム-2の敗戦を引きずってしまうモノですが、ビーコルは見事に気持ちを切り替えました。
そのことはアシスタント・コーチの勝久マイケルも「気持ちを切り替えなくちゃダメでしょう!」と言っていましたが、普通では難しいことです。でもそれが出来るのがビーコルの強みなんです。
ゲームの内容に関しては vol56.「ビーコル強いですねー」 をお読み下さい。勝った時は感動的でしたねー。
2011-2012シーズンイースタンカンファレンス決勝進出を決めた瞬間。林文子市長も廣田和生代表とがっちり握手
そしていよいよbjの聖地・有明コロシアムでの戦いです。
いままで取材する立場で有明のファイナルズへは行ってましたが、自分たちのチームが出場すると、感慨はひとしおでイメージがまるで違ってきました。全米大学選手権決勝(通称ファイナル・フォー)やNBAファイナルズに匹敵するような威圧感と晴れがましさが有りました。
ファイナルズ緒戦のイースタン・カンファレンス・ファイナルでは浜松に敗れましたが、翌日の3位決定戦では見事に敗戦から立ち直り、京都を下し、エクスパンション(新規)チームとして上出来の3位となりました。
このゲーム内容は vol.57「ビーコル3位」 をお読み下さい。
ざっと1年を振り返ってみましたが、やはりビーコルの話題が多くなってしまいました。でもそれは当然だと思います。横浜市初のプロ・バスケットボール・チームで、その上いきなり3位と言う好成績を収めたのですから。
といってこれで終わった訳ではなく、現在は第2シーズンの真っただ中にいます。
メディアやブースターさんも徐々に増えてきました。代表の廣田和生とも話しますが「1年目より2年目、2年目より3年目と増えて行くんだよね!」そしてこれが10年先、いや私が死んだ後まで増え続けて欲しいものです。
これからも声援お願いします!!
1946年生まれ。
月刊専門誌「バスケットボール・イラストレイテッド」の編集長を経て、バスケットボール用品のデザイナーとして活躍。特にキャラクター「あんたかベイビー」のTシャツは一世を風靡した。日本初のバスケット・ユニフォームデザイナーとしても活躍。当時強豪と言われる殆んどのチーム<実業団-大学-高校>に関して何らかのデザインを手掛けている。またスポーツ界では唯一のファッションのコラムを持っていた。
現在は自身のユニフォーム・ブランド「305」を立ち上た。
NBAに関しては「月刊バスケットボール・イラストレイテッド」編集者時代の1966年から連載を執筆。TV解説はNHK BS以前にも東京12チャンネルで1985年から行っており、日本最古のNBA解説者と言われている。
過去にはスポニチウェブサイトのNBAコラムを担当。月刊バスケットボール及び月刊バスケットボール・マガジン等に連載を持っていた。
横浜の中学・高校バスケの指導者、関係者とのつながりが深く横浜及び神奈川県のバスケ事情に精通している。
現在は横浜をホームとするBリーグ「横浜ビー・コルセアーズ」の名誉広報として情報発信やプレス対応などチームの広報活動に力を注いでいる。
また(社)神奈川県バスケットボール協会広報顧問も務めている。
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