vol.51「NBAロックアウト解除!」
皆さんも新聞等でアメリカのプロリーグ「NBA」がロックアウトしていたことはご存知と思います。
通常ストライキと言うと労使関係で言えば「労」つまり選手が「使」の会社側に対してストライキをするものですが、アメリカのスポーツ界は違っていて、オーナー(会社)側もストライキをします、それが「ロックアウト」なのです。
ロックアウトとは締め出しと言うことで、選手をアリーナやファシリティーと呼ばれる練習場への立ち入りも禁じることですが、それだけではなく選手とチームの交渉ごとや接触すら禁止されます。
NBAではリーグと選手会は労使協定を結んでいて、今年の6月末がその期間が切れるため、新しい労使協定を結ばなくてはなりませんでした。
何度も交渉を繰り返してきたが、現地時間6月30日の3時間に渡る最終交渉でもオーナー側と選手側双方の間の大きな溝を埋めることができず、新労使協定締結に失敗、1998-99シーズン以来となるロックアウトに突入することになったわけです。
そのため古い労使協定は同日に失効し、7月1日に解禁となる予定だったFA(フリーエージェント)市場を始め、すべてのリーグの業務が公的に停止となり、各チームは選手とコンタクトを取ることを一切禁じられ、選手もチームの練習場を使うことができなくなりました。
実はNBAではロックアウトは今回で98-99シーズン以来2度目となります、前回は通常82試合あるレギュラーシーズンのうち50試合が行われただけでした。
このロックアウト、そもそも何で揉めたの?
理由は幾つかありますが、大きく分けると次のようになります。
1)サラリー・キャップ
NBAではサラリー・キャップ(制度)と呼ばれている「各チームの選手年俸の総額」を決めています。と言うのは「上限を決めないと資金が潤沢にあるチームだけが良い選手を多く取れ強くなるため、戦力の均一化が図れなくなり、リーグ全体の興味が薄れる」のを恐れたからです。
実はサラリー・キャップ制と言いながら、以前の制度ではオーバーしてもラグジュアリータックス(贅沢税)と言う「オーバーした分だけリーグに税金を払えば許される」と言う逃げ道がありました。
選手協会側には、このような制度は大歓迎ですが、弱小チームのオーナー側は反対なので上限付きの「ハードキャップ」の導入を希望している、と言うことで対立しました。
ちなみに10-11シーズンの上限は5804万ドル(約46億8000万円)で、リーグで最低の総年棒額は、4353万ドル(約35億1000万円)でした。NBA全体で選手数はおよそ450人ほどです。
2)収益分配金
B.R.I.と呼ばれるバスケットボール関連の収入(Basketball-Related Income)と呼ばれるバスケット事業に関連する収入(放映権料、入場料収入、スポンサー収益、物販収益等)の内、今までは57%を選手側が、受け取るシステムとなっていましたが、オーナー側はこの数字を引き下げることを希望して対立していました。
ちなみに2009-10シーズンでは、おおよそ合計36億ドル(約2900億円)もの収入があり、その内21億ドル(約1690億円)を選手年棒に割り当てていました。
大まかにはこの2点を労使で争っていたわけですが、世間では以外に冷たい反応でした。と言うのも一部で言われていたのが「億万長者と百万長者の争いなんだろう」 つまり金持ち同士の金の取り分争いじゃないか、勝手にやりなよ、と(笑)。
*参考資料 NBA高額年俸選手ベスト3
レブロン・ジェームス(マイアミ・ヒート)4,450万ドル(約34.6億円)
ヤオ・ミン(元ヒューストン・ロケッツ) 3,568万ドル(約27.7億円)
コービー・ブライアント(ロサンゼルス・レイカーズ) 3,480万ドル(約27億円)
ロックアウトをすると誰が得して誰が損するのでしょうか?
◆得した人
いますか???
◆損した人
ゲーム数が減れば入場収益やTV放映料が減ってオーナーは損します。
選手も82ゲームが基本の年俸ですから、ゲーム数が減ればその割合で引かれます。
まあこの連中は金持ちだから、ちょっとくらい減っても良いですよ(笑)。
でもアリーナで働く従業員はゲームが無ければ仕事が無いので給料は貰えません、アリーナ周辺のお店も上がったりでしょう。もっと大きく言うと、アリーナに出資している市の収入が減り、市民へのサービスが悪くなるかもしれません、つまり一般の人が損するわけですね。
またロックアウト中、選手は何していたのでしょう?
普段ならサマーリーグと言う若手中心のリーグ戦も行っていますが、それも早々に中止が決まり、選手は個人でトレーニングをしていたようです。
また今年の夏はオリンピックの各大陸予選があったために、そこへ参加していた選手も多いようです。
チームによって違いますが、ヒートのように選手のエージェントがトレーニング場を確保して、チーム全体で練習したところもあります。
チャリティー・ゲームも良く行われましたね。これは仲の良い選手やエージェントや契約メーカーが同じもの同士が集まってゲームをすることでファンの目をバスケットからそらさないようにする目的でもあります。
交渉が長引いたことで、選手によってはヨーロッパや中国のプロチームと契約する選手も出てきました。NBAも特例で「シーズンが始まったらNBAへ戻れると言う契約条件なら外国のチームと契約しても良い」と認めました。
そのロックアウトも11月25日(現地時間)にやっと合意しましてシーズンを再開することになりました。実にロックアウトを始めてから161日目のことです。
さて決まった内容は、簡単に言うとB.R.I.の比率が付帯条件がありますがオーナー50:選手50と言うことになりました。他にも選手の契約条件について合意がなされましたが、条件等が難しくて普通の人には理解できません(汗)。
ラグジュアリータックスの件は不透明なままです。
それで誰が得したの?
B.R.I.の比率がオーナー側に7%ほど多くなるため、オーナー側が年間で20億円ほど得すると言われています。
シーズンは2011年12月25日から始まり、レギュラーシーズンは2012年4月26日に全日程を終了し、その2日後となる28日(土)からプレイオフが開幕。ファイナル最終戦は、6月26日(火)となります。
クリスマスの日がシーズン開幕なんて、やはりアメリカ人ですね。日本で言ったら「お正月」と言うことでしょうから。
そしてそのカードの素晴らしさ、昨シーズン・ファイナルと同じ組み合わせ「ダラス・マーベリックスvsマイアミ・ヒート戦」です。NBAはクリスマスには必ず全米待望のカードを持ってきます、これがNBAからファンへのクリスマス・プレゼントなのです。
しかし選手にとっては「魔のシーズン」となることでしょう。シーズンが短くなったことでスケジュールが過密になりました。NBAでは2連戦ですらきついのに、今シーズンは3連戦が各チーム1回はあると言うことです。
疲労で怪我人が多くなりそうなシーズンです。
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さて県立金沢総合高(金総)の話もしなければなりません。
暮の風物詩となったウィンターカップが23日(祝)から千駄ヶ谷の東京体育館で始まります。
夏のインターハイで優勝した金総は第1シードです。インターハイと逆で組み合わせはかなりタフです。福岡大附若葉、昭和学院、桜花学園、聖和学園、東京成徳大、札幌山の手と競合が同じサイドに集まっています。
金総最初のゲームは24日10時30分から滋賀短大附vs福大附若葉の勝者との対戦になります。それ以降は27日準決勝まで全て東京体育館で10時30分からとなっていて、決勝は28日12時からとなってます。
是非とも応援に行ってあげてください。
1946年生まれ。
月刊専門誌「バスケットボール・イラストレイテッド」の編集長を経て、バスケットボール用品のデザイナーとして活躍。特にキャラクター「あんたかベイビー」のTシャツは一世を風靡した。日本初のバスケット・ユニフォームデザイナーとしても活躍。当時強豪と言われる殆んどのチーム<実業団-大学-高校>に関して何らかのデザインを手掛けている。またスポーツ界では唯一のファッションのコラムを持っていた。
現在は自身のユニフォーム・ブランド「305」を立ち上た。
NBAに関しては「月刊バスケットボール・イラストレイテッド」編集者時代の1966年から連載を執筆。TV解説はNHK BS以前にも東京12チャンネルで1985年から行っており、日本最古のNBA解説者と言われている。
過去にはスポニチウェブサイトのNBAコラムを担当。月刊バスケットボール及び月刊バスケットボール・マガジン等に連載を持っていた。
横浜の中学・高校バスケの指導者、関係者とのつながりが深く横浜及び神奈川県のバスケ事情に精通している。
現在は横浜をホームとするBリーグ「横浜ビー・コルセアーズ」の名誉広報として情報発信やプレス対応などチームの広報活動に力を注いでいる。
また(社)神奈川県バスケットボール協会広報顧問も務めている。
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