vol.44「NBAの中の日本人」
急に暖かくなり初夏を思わせる陽気になりましたね。
バスケットはサッカーに次ぐ世界第2のスポーツと言われ、サッカー同様世界の多くの国でプロリーグがあります。ユーロではサッカーと同じリーグだったり、サッカーもバスケットも一緒のクラブだったりもします。
しかしバスケットがサッカーと違うのは別格のプロリーグが存在することです。それがNBA(National Basketball Association)なのです。ユーロにも多くのプロリーグ、プロチームがありますが、その頂点はアメリカにあるNBAなのです。バスケット選手なら誰もが憧れるリーグです。
NBAはアメリカ全土に渡って30チームが所属し、それを東西で分け、なおもそれを2分割して、計4ディジョンから成り立ってます。
NBAと言えば横浜市民にとっては田臥勇太というアイコンがあります。日本生まれの日本人として、初めて憧れのNBAのコートに立った男です。
田臥勇太選手
その後日本からは竹内譲次(206cm26歳、日立サンロッカーズ)、公輔(206cm26歳、アイシン・シーホース)の双子兄弟や川村等が挑戦したものの、ことごとく跳ね返されて来ました。
そしてまた今年、2人の日本人がNBAへ挑戦します。
2人ともJBLリンク栃木ブレックスの選手で、マサこと片岡大晴(かたおか まさはる184cm25歳)と、ナリこと並里成(なみさと なりと172cm21歳)です。
この2人は4月30日大阪で行われたトライアウトでコーディネーターのジェイソン・フィリップス氏から高く評価され、シアトルのECBA(Emerald City Basketball Academy)でNBAで通じるスキルを学び、その後NBAのトライアウトを経てサマーキャンプ、ロースター(登録選手)入りを目指します。
彼らは私の友人で「TEAM Global Vision」を主宰する西田辰巳さんが行ったNBAトライアウトジャパンで見出されました。
面白いことにマサとナリは選ばれた基準がまるで違います。
並里成選手(左)と片岡大晴選手(右)
マサは2番ポジションと言うシュートの上手いガードですが、今回はディフェンスの強さ、特に相手がドリブルで来るのに対して胸で受け止められることが高く評価されました。それは相手の動きに対応できる素早いステップ・ワークと読みと強い身体が無いと出来ません。
そして最も高い評価は「強いハート」です。
トライアウト中も常に先頭に立って大きな声を出し、受験生達をリードしていて、強いキャプテンシーを感じます。
一方ナリは高校時代から華麗な技術とテクニックで「ファンタジスタ」と呼ばれたほど高い身体能力とスキルと俊敏性を持っていて、ドリブルもシュートもパスも、何でも上手い天才です。
しかしナリは172cmで、日本人としても小さな選手の部類に入るのに、2mクラスがゴロゴロしてるNBAでやって行けるはずが無い、と誰しもが考えるところです。
しかし考えてみると、NBAにも日本人並みの身長の選手はいるのです。
170cmでダンク・コンテストに優勝したスパッド・ウェッブと言う選手がいましたね。
この人は化け物で別格としても、87年から01年まで13シーズンもシャーロット・ホーネッツ他で活躍していたマグジー・ボーグス選手は日本の中学生並みの160cmです。驚きでしょう。
現在はプレーオフの真っ只中ですが、ディフェンディング・チャンピオン(昨シーズン優勝)で今シーズンも優勝の呼び声が高かったロサンゼルス・レイカーズを破ったダラス・マーベリックスには控えながら小柄なホセ・バレアという白人選手がいます。彼が俊敏性を生かし良く動き回り、レイカーズのディフェンスを引き裂いてチャンスを作ったりシュートを決め、マーベリックスの勝因の一つにあげることが出来ます。チビの良さを生かしたことになります。
そうなると対戦相手としてはバレア対策として小さい選手を必要とするでしょうし、他のチームも超小型選手を再認識する可能性もありますね。
ということでマサにもナリにもチャンスがあるわけです。
それとNBAでプレーをするということで我々が誤解していたことがあります。それは単にバスケットの技術(シュート力も含め)と、驚異的なジャンプ能力を持った上に体格が良くなければNBAでプレー出来ないと思い違いをしていたことです。
技術・体力も大事ですが、実は「ハート」も大事なのです。人に負けない強い気持ちと「アンセルフィッシュ」と呼ばれる協調性、そして頭脳が大事なのです。
それは日本人が得意とする部門です。それがNBAでも重視されて来ているとフィリップス氏が教えてくれて、この2人が選ばれました。
さてNBAというとプレーの面ばかりに目が行きますが、チーム運営には色々な部門があります。
大きく分けて「プレーに関する部門」と「運営に関する部門」の二つがあります。
プレーに関する部門はバスケットという競技の専門家の集団で、運営に関する部門は会社経営やゲームの運営進行を司る営業部門にあたります。
実はそこへ一足先に日本人が仕事していたんです。
田臥選手がサンズでコートに立つ前の90年代に、ニュージャージー・ネッツというチームの営業部門にジュン安永という日本人が働いていました、彼は現在bjリーグの沖縄ゴールデンキングスのスタッフとなっています。
そして現在ネッツの営業に若い日本人が一人勤務してるんです。ロイ長澤という大阪出身の若者です。
彼はNBAの仕事に興味を持ち、そのためにアメリカの大学へ留学して、ネッツに入ることが出来たわけで、かなり勉強したそうです。勿論これは安永氏の仕事ぶりが高く評価されたからこそ採用されたわけです。
左吉本君 右長澤君
そしてネッツにもう一人日本人がいます。ネッツの正規社員ではありませんが、ネッツが使うスカウティング用のビデオを編集したり、全NBAと全米の大学のゲームを録画して各チームへ配信する仕事をしており、仕事場はネッツの練習場と同じビルにあり、練習には毎日参加して手伝いをしてるという吉本泰輔です。NBAファンからするとうらやましい仕事ですね。
彼はコーチを志す若者で、チームのビデオ・コオーディネーター→アシスタント・コーチ→ヘッド・コーチという道を歩もうとしています。
これはNBA選手じゃ無かった人間には王道ともいえるコースで、現マイアミ・ヒートのエリック・スポールストラが良い例です。
このようにNBAで仕事したり、選手を目指す日本人が、これからも出てくれば、日本のバスケットは盛り上がって行きます。
若者よ世界を目指せ!!
1946年生まれ。
月刊専門誌「バスケットボール・イラストレイテッド」の編集長を経て、バスケットボール用品のデザイナーとして活躍。特にキャラクター「あんたかベイビー」のTシャツは一世を風靡した。日本初のバスケット・ユニフォームデザイナーとしても活躍。当時強豪と言われる殆んどのチーム<実業団-大学-高校>に関して何らかのデザインを手掛けている。またスポーツ界では唯一のファッションのコラムを持っていた。
現在は自身のユニフォーム・ブランド「305」を立ち上た。
NBAに関しては「月刊バスケットボール・イラストレイテッド」編集者時代の1966年から連載を執筆。TV解説はNHK BS以前にも東京12チャンネルで1985年から行っており、日本最古のNBA解説者と言われている。
過去にはスポニチウェブサイトのNBAコラムを担当。月刊バスケットボール及び月刊バスケットボール・マガジン等に連載を持っていた。
横浜の中学・高校バスケの指導者、関係者とのつながりが深く横浜及び神奈川県のバスケ事情に精通している。
現在は横浜をホームとするBリーグ「横浜ビー・コルセアーズ」の名誉広報として情報発信やプレス対応などチームの広報活動に力を注いでいる。
また(社)神奈川県バスケットボール協会広報顧問も務めている。
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