vol.34 「インターハイ」
今年の梅雨は晴れ間が多くておかしいですね、世界的な異常気象だとか。
梅雨が過ぎると高校生はIH(インターハイ、高校総体)の季節です。
その神奈川県予選は5月に始まり6月27日まで行われ、男女各2チームの出場が決まりました。
予選の第一段階として、神奈川は県をA,B,Cの3グループに区分けします。
Aグループ—川崎、北相東、北相西
Bグループ—横浜北、横浜中、横浜南
Cグループ—横須賀三浦、湘南、西湘
この各グループで予選を行い、それぞれ7〜11チーム、そして関東大会予選上位8チームの計32チームを4ブロックに振り分けトーナメントを行い、その勝者4チームで決勝リーグを行い、上位2チームがIH出場となります。
そうして決勝リーグに勝ち進んだのは、
◆男 子
桐光学園高、東海大付属相模高、法政大第二高、県立市ヶ尾高(横浜市)
◆女 子
相模女大高等部、県立荏田高(横浜市)、県立茅ヶ崎北陵高、県立金沢総合高(横浜市)
男子の決勝リーグ1日目は市ヶ尾60-54桐光、東海相模66-65法政二高でしたが、2日目は波乱が起きました。
桐光87-61東海相模、法政二高72-70市ヶ尾となり、初日の勝チームが破れたのです。
つまり全チームが1勝1敗で横並びとなったため、最終日に勝ったチームが「IH出場」となりました。
6月27日(日)最終日、場所は平塚市総合体育館です。
男子第1ゲームは川崎市の法政二高vs桐光学園。
ずーっと接戦を続け、残り20秒で66-62と法政二高がリードしましたが、桐光は3Pで1点差まで追い上げたものの66-65で法政二高が逃げ切り、IH出場権を獲得しました。
さて男子第2ゲームは市ヶ尾vs東海大相模です。
初めからリードを奪われていた市ヶ尾は第3Qには46-57と11点も差をつけられました。
しかしその後、東海大相模の司令塔PG安斎が足首捻挫で思うように動けず、得点ペースが落ちてきました。
徐々に差を詰める市ヶ尾、そして残り時間3分に加藤がFT(フリースロー)を2本とも決め、ついに77-76と逆転、最後はヒヤッとする場面もあったものの85-82で逃げ切り、初のIH出場権を勝ち取りました!
戦評は私のBlog IH神奈川県予選 最終日 追記あり をお読み下さい。
市ヶ尾はごくごく普通の県立高ですが、ポイントガードで中学時代県選抜選手の加藤(174cm)とフォワードで長身の諌山(いさやま・190cm)が入ってきてから変わったのです。
昨年も決勝リーグに残れたものの、他チームとの力の差は歴然としていました。
それは加藤、諌山共に外からシュートするのが好きだったからです。
確かに神奈川県高校レベルで言えば3Pの確率は良かったかもしれないのですが、シュート、特に3Pは水物なんです。
NBAのスターシューターでもコンスタントに決められる選手はまずいません。
加藤は突拍子も無い時に撃つ。
フィーリングと言えばカッコいいけど、シュートチョイスが悪い!
しかし入ることがあるので、益々悪質[笑]
市ヶ尾・加藤(白#4)のシュート
諌山も身長のわりに外からのシュートが得意。外のシュートを決めた方がカッコいいし、身体接触も少ないので楽です[笑]
ただチーム1の長身なので、外からシュートするとリバウンドに行けないので、取りに行くのは背が低い選手になり、と取れないことが多いのが難点となります。
だから本来ならペイント・エリアと呼ばれるゴール下近辺でシュートしたほうが、確率も高くなるし、リバウンドも取りやすく、堅実に勝てる方法なのです。
市ヶ尾の教員でもある内藤コーチは加藤にシュート禁止令出したこともあります。そこで加藤は周りの選手のシュートのお膳立てに専念するようになり、それによって他の選手の底上げが図られ、その一人が最後の場面でFTを決めた奥山なのです。
それまでシュート制限をかけていた加藤に対し、最終ゲームでは「思いっきり撃って来い」と発破を掛けた内藤先生。
そして外での攻撃が好きな諌山には逆に「ペイント内で勝負しろ、外から楽に撃つな!」と課題を与えました。
その結果加藤は3Pを8本決め30得点。
諌山は1本も3Pを撃たなかったものの、27本中13本、FTも10本貰い9本決めチーム最高の35得点8リバウンドです。
チームとしてシュートの確率やリバウンドの数では負けているものの、アシスト数とFTを得た数は東海大相模を上回っています。
こんなプレーがありました。残りが1分32秒で、加藤がペネトレイト(ドリブルで突っ込むこと)してディフェンスを引き付けると、諌山がそれに合わせてゴール下に飛び込み、加藤からパスを受けシュートを決め、ナイス・アシストとなった。
このプレーは東海大相模のファールを誘い、諌山はFTを1本貰い、見事決め82-76と大きく差を開いた瞬間でした。
アシストが多いことはチーム・プレー(ワーク)が良いことを示し、FTが多いことは、積極的なゴール下シュートが多く、ディフェンスに負けない強い気持ちを持っている表れでもあります。
アタック・ザ・リング(バスケット)と言って、アメリカでは大事なプレーとされ、ゴール下へ飛び込んで行かない選手のことを「チキン(臆病者)」と言ってさげすまれるのです。
市ヶ尾にとっては初のIHに萎縮することなく、横浜市の代表として、精一杯戦って欲しいものです。
■男子組合せ
女子は金総(金沢総合)がダントツでした。
春先に関東新人戦で優勝し、6月初めの関東大会で優勝してIHのシード権を獲得しました。
実は今年金総のチャンスです。
全国の強豪校と言えば名古屋の桜花学園と東京成徳大です、
桜花には昨年、日本代表にも選ばれた渡嘉敷来夢(191cm)や超175cmの選手が多くいましたが、スタメンは全て卒業してます。
成徳も山本(175cm)篠原(184cm)等3人のスタメンが卒業してます。
それに対して金総は篠崎(166cm)と小原(172cm)が抜けた程度で、大黒柱の宮澤(181cm)は健在!
金総・宮澤(白#7)のシュート
関東大会予選やIH予選と言った県内大会では今一つ調子の上がらない金総ですが、6月の関東大会では見事な集中力で大差をつけて優勝した金総です、沖縄の本大会で実力を見せて欲しいものです。
実は今年の星澤コーチは少し違っています。
静かにベンチに座ったままでCTO(タイムアウト)を取らないことで知られている星澤さんが怒鳴るし、立っているし、CTOは取るし、今までと違います。
というのは、初めて優勝した時のメンバーが事故で亡くなったことがきっかけです。
亡くなったのは能力が無い上ドン臭い、でも一生懸命に頑張る選手だったと言います。コーチって、大体がこういう選手が好きなんですね。
「その選手のためにも、今年は是非勝ちたい!」と星澤さんは言います。
先日発表されたIH組合せを見ると、ナント金総は第1シード。
このブロックで強豪といえば福井県立足羽高程度。準決勝で当たる第3シードのブロックには札幌山の手高と桜花が入っており、潰し合いの末に金総と当たることとなり、金総には有利です。
■女子組合せ
皆さんもこの8月は沖縄に向かって大きな声援を送って下さい。
それと一つ、大事なことを忘れてました。
神奈川県にいよいよプロバスケットチームが誕生します。
横浜スポーツエンターテインメントが「神奈川県プロバスケットボールチーム設立委員会」を立ち上げました。
私もその一員です。
現在bjリーグに申請中で8月には承認されそうです。
皆さんも応援して下さい。
とりあえずチーム名を募集するので、考えておいて下さいね。
1946年生まれ。
月刊専門誌「バスケットボール・イラストレイテッド」の編集長を経て、バスケットボール用品のデザイナーとして活躍。特にキャラクター「あんたかベイビー」のTシャツは一世を風靡した。日本初のバスケット・ユニフォームデザイナーとしても活躍。当時強豪と言われる殆んどのチーム<実業団-大学-高校>に関して何らかのデザインを手掛けている。またスポーツ界では唯一のファッションのコラムを持っていた。
現在は自身のユニフォーム・ブランド「305」を立ち上た。
NBAに関しては「月刊バスケットボール・イラストレイテッド」編集者時代の1966年から連載を執筆。TV解説はNHK BS以前にも東京12チャンネルで1985年から行っており、日本最古のNBA解説者と言われている。
過去にはスポニチウェブサイトのNBAコラムを担当。月刊バスケットボール及び月刊バスケットボール・マガジン等に連載を持っていた。
横浜の中学・高校バスケの指導者、関係者とのつながりが深く横浜及び神奈川県のバスケ事情に精通している。
現在は横浜をホームとするBリーグ「横浜ビー・コルセアーズ」の名誉広報として情報発信やプレス対応などチームの広報活動に力を注いでいる。
また(社)神奈川県バスケットボール協会広報顧問も務めている。
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