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あんどうたかおのバスケにどっぷり

vol.28「ウインターカップ」

 今更ですが、明けましておめでとうございます m(__)m

 さて今回は年が明ける前の話です。12月23日から29日まで、東京体育館で行われていた第40回全国高等学校選抜優勝大会、通称「ウィンターカップ(WC)」のことです。

 この大会は何しろ人気があります。大きな東京体育館が連日満員になります。
 この10年ほどはインターハイも満員で、空席待ちの人が大勢場外で待っていることが良くあり、高校バスケットの人気は上昇しています。

 さてそのWCへ神奈川県女子代表として横浜の県立金沢総合高(金総)が出場しました。昨年夏のインターハイ(IH)では3位となった金総です。その実績を買われ今回は第3シードです。

 それに先立って行われたWC神奈川県予選では、出場を賭けて決勝で相模女子大と対戦しましたが、ピリッとしない展開で、得意の3ポイントシュート(3P)が決まらず、ディフェンスの強さで勝ったものの、不満が残る内容でした。
 このままじゃ本番のWCが心配??

 実はIH予選の時もこんな調子だったんです。
 しかしそこからチームとして作り上げるのが名匠・星沢先生です。本番のIHでは全国3位となりました。
 一説によると、全国区の金総は他県からのスカウティングに備えて、全てをさらすことはしないのじゃないか、とも言われています。
 ということで今回も作り上げてくる、と楽観視してました[笑]。

 ところが大誤算が、、、
 中心選手の篠崎澪(3年生166cm)選手が緒戦となる2回戦、宮崎の県立小林高との対戦で、それも始まってすぐに怪我をしたんです。ルーズボールを取りにいって足首捻挫しました。
 ところが星沢先生は言います。「ぶつかられての怪我じゃなく、自分でぶつかって怪我したもの、自業自得。格下とやるとき往々にして油断から起きるもの。」と手厳しい。
 しかしこれが全国優勝を目指すチームの考え方なのでしょう。ちなみに優勝したときは主力選手に故障者はなかったと言っています。

 この小林高戦はディフェンスの力で80-63で勝ちました。

 3回戦はIHで対戦している東京の実践学園です。
 IHでは104-70で楽勝した相手です。
 ディフェンスと3P、そして長身の1年生宮澤夕貴(180cm)のゴール下の活躍で91-80とどうにか勝ちました。

 そしていよいよ準決勝!
 相手は東北の強豪、山形市立商高です。
 山商はU-18日本代表メンバー#4佐藤綾香(3年175cm)選手、U−16で準優勝したメンバー#14大沼美琴(1年174cm)選手という2人の日本代表メンバーを擁し、平均身長も金総より3cmも高く、ディフェンスも強く、良いチームです。

 金総だって全日本のメンバーはいます。宮澤(1年180cm)は昨年12月にインドのネプーで行われた第1回FIBAアジアU-16(16歳以下)女子選手権で準優勝に輝いたメンバーで、決勝の中国戦ではベンチ・スタート(控え選手)ながら33分の出場で、チーム2番目の13得点して準優勝に貢献しています。
 金総のスタメンは#4小原(3年172cm)、#5柳瀬(2年168cm)、#8宮澤(1年180cm)、#11小平(2年155cm)、#14井関(2年161cm)で、スタメンの平均身長は167.2cm。
 一方山形商は#4佐藤(3年175cm)、#5加藤(3年172cm)、#7小野(3年167cm)、#8武田(165cm)、#14大沼(1年174cm)で、平均身長は170.6 cmです。

 立ち上がり金総は小原のシュートと宮澤のインサイドで得点します。
 対して山商はガードの小野、武田のミドルが決まって9−4と5点リードです。

 その後金総のディフェンスが良くなり徐々に追い上げて同点に追いつくものの、金総はインサイドを押さえられた上に外のシュートも入らず、競った展開となり、30−33山商リードで前半終了しました。

 後半立ち上がり金総は宮澤→小原のパスでゴール下と井関の3Pで逆転するものの続きません。

 対して山商はインサイド、アウトサイドとバランス良く攻め、6分には39−45と再度逆転されます。

 金総は小原のペイント内のシュートと柳瀬がペネトレーション(ドリブルで切れ込む)して得点するだけ、得意の3Pがまるで決まらない。前半得点していた宮澤がまるで入らない。気持ちが逃げている。こんな時に篠崎選手がいてくれたら得点してくれるのですが。

 第3Qこそ52−55と喰らい付いていたものの、女子日本代表の中川監督は「山商は全体的にミドル・シュートが上手い」というように、その後はU-18日本代表の佐藤を中心にミドルシュートが良く決まり差がついていきます。
 結局63−79で金総はファイナル4進出なりませんでした。

 このゲームのボックスコア(記録)を見ると大きな差が見て取れます。
 それは3Pです。金総は24本撃ってるのに対し山商はたったの9本だけです。しかし金総は5本しか決められず確率はたったの20%。
 山商は3本決め、確率は33%で、普通のレベルと言えます。
 しかしゴール下を含めた2点シュートは、撃った数はほぼ同じながら、山商56%、金総40%と大きな開きがあります。これが勝敗を分けたことになります。

 これは金総が得意の3Pを決められなかったこと、決まらなくても撃たなければならない理由があります。
 3Pはディフェンスが小さくなった時に外からズドンと決めるのが効果的です。そのためにはインサイドで得点しなくては相手ディフェンスが小さくなりません。
 金総は後半、宮澤が不調で相手ディフェンスが広くなったこと、そしていつもなら決めてくれるエース篠崎がいないことが入らない原因にもなってます。

 相手とすると、金総で怖いのは全国的に有名な篠崎です。当然篠崎がきつくマークされることになります。
 ということは他のガードへのプレッシャーは軽かったわけで、身長が低くても余裕を持ってシュートできました。
 ところが篠崎がいないので、その分他の選手に対してプレッシャーを掛けることが出来るわけで、背の低い二人の2Pシューターへプレッシャーが掛かってきたうえ、センターへもダブルチーム(2人掛かりで守る)を掛けてきました。それをかわせるのは、1年生の宮澤では無理で、3年生の小原選手しかいないのです。
 インサイドは小原しか攻撃出来ないので外で撃つしかありません。だから撃ち続けたのです。

 ゲーム後、星沢先生は「ガードが悪い。宮澤は無理にシュートして落としてしまった。
 外に2人余っている上級生が、昨日までは動いてボールを貰っていたのに今日はボケっとしていた。上級生が呼べばよいのに。

 宮澤は1年生なので精神的に疲れていたようで、体力的にも疲れていたはず。IHでは休み休み使っていたからそれほど疲れていなかった。
 IH後怪我で休んでいたし、U-16で怪我して練習してない時間が長かった。
 そしてWCは連戦なので、1ゲームあたりプレーしてる時間も長かったから疲れが出てしまった。」

 負けたとはいえ、3位山商に競った篠崎のいない金総のメンバー、14得点の柳瀬、12得点の井関は2年生、山商戦こそ力が発揮できなかったもののセンターの要の宮澤はまだ1年生。1、2年生でチーム総得点の6割近い得点を挙げてます。
 下級生が元気です。

 きっと今年こそ4強の壁を破ってくれるでしょう。

あんどうたかお プロフィール

1946年生まれ。

月刊専門誌「バスケットボール・イラストレイテッド」の編集長を経て、バスケットボール用品のデザイナーとして活躍。特にキャラクター「あんたかベイビー」のTシャツは一世を風靡した。日本初のバスケット・ユニフォームデザイナーとしても活躍。当時強豪と言われる殆んどのチーム<実業団-大学-高校>に関して何らかのデザインを手掛けている。またスポーツ界では唯一のファッションのコラムを持っていた。

現在は自身のユニフォーム・ブランド「305」を立ち上た。

NBAに関しては「月刊バスケットボール・イラストレイテッド」編集者時代の1966年から連載を執筆。TV解説はNHK BS以前にも東京12チャンネルで1985年から行っており、日本最古のNBA解説者と言われている。

過去にはスポニチウェブサイトのNBAコラムを担当。月刊バスケットボール及び月刊バスケットボール・マガジン等に連載を持っていた。

横浜の中学・高校バスケの指導者、関係者とのつながりが深く横浜及び神奈川県のバスケ事情に精通している。

現在は横浜をホームとするBリーグ「横浜ビー・コルセアーズ」の名誉広報として情報発信やプレス対応などチームの広報活動に力を注いでいる。

また(社)神奈川県バスケットボール協会広報顧問も務めている。

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