Vol.17 高校男子に光が
今年度は不甲斐無い成績で心配されていた高校女子の名門・県立金沢総合高でしたが、今月7、8日に行われた関東高等学校新人大会(会場秦野市総合体育館、海老名運動公園総合体育館)で、大会屈指の長身メンバーを揃えた優勝候補筆頭の東京成徳大高(全国でも1,2を争う強豪校)と準決勝で対戦して、好勝負を展開し、惜しくも敗れたものの3位入賞を果たし、復活の兆しが見えたようです。
その一方で寂しいのは男子です。この大会には横浜チームは出場できませんでした。
横浜といえば、かつて全国区でインターハイ・ベスト8になったこともあり、県内バスケット界では商大と呼ばれる横浜商大高が挙げられます。
ここの出身者で現在日本バスケット界で活躍している選手は、bjリーグ富山グラウジーズ蒲谷正之(日大→三菱電機)、大分ヒートデビルズ君塚大輔(順天堂大)、埼玉ブロンコス浅野嵩史(専修大)、琉球ゴールデンキングス福田幹也(神奈川大)、元OSG鈴木鉄夫(青山学院大→東京日産)とそうそうたるものです。
しかしその商大も浅野を最後に全国から遠ざかってます。入試状況の変化で優秀選手が集まらないためです。
そんな中、徐々に力を伸ばしてきたのが保土ヶ谷の山の上にある横浜清風高です。
横浜清風と言えば明倫高という女子高でかつての強豪校でしたが、共学に変えたのを機に男子部を創設して力を入れました。
中学高校でチームを強くしようとすれば、良い選手を集めることと、良いコーチが指導することです。
そこで抜擢されたのが神奈川県の名門・相模工業大付属高出身の三宅学です。
日体大ではキャプテンとしてインカレに優勝、MVPも獲得しました。
そして実業団の名門NKKへ入社して社会人として仕事をしながらバスケットをする生活へ。当時の実業団と呼ばれる日本リーグの他のチームもみな、午前中仕事して午後バスケット、という環境でした。
NKKの場合は勤務地・川崎の工場内に体育館があるため、練習後に再び職場へ戻って仕事ということも多かったと聞いてます。
98年の全日本総合選手権では優勝して、三宅個人もベスト5にも選ばれる活躍でしたが、NKKが休部となり、退社して松下電器へ入ります。そこでもベテラン・ガードとしてチームをリードしてきました。
全日本メンバーに選ばれたほどのバスケットの実績と、社会人を経験、特に休部という辛い社会の荒波を乗り越えてきた人間が高校生を指導することは、プレーの面だけでなく人間的にも良い影響を与えるものと思います。
その三宅は神奈川県バスケットボール高体連が強化見直しを図った06年から、県立大楠高の河内健一、県立茅ヶ崎北陵高の河野裕一と共に国体の少年男子(高校生)のスタッフとなって神奈川県の強化に携わってきました。指導力はかなり評価が高かったですね。
ポイントガードというポジション柄、考えたりゲームをコントロールしたり、指示を与えたりチームを励ましたり、という経験が人に教える時に役立っているようです。
05年から清風の男子チームをコーチして4シーズンが過ぎて、選手も集まりだしてそろそろ結果が期待された今年、冒頭に書いた関東新人戦の神奈川県予選でやっと小さな答えが出ました。
1回戦 vs厚木高 108−73
2回戦 vs横浜隼人高 111−83
3回戦 vs逗子開成高 97−83
準々決勝 vs秦野高 106−60
と勝ち上がってベスト4入りしたんです。特に準々決勝の秦野は第3シード校、それを倒しての準決勝進出は意義があります。
こう書いてくると、さぞかし大型選手を揃えたのでは、と思うでしょうが、小型チームです〔笑〕
三宅の作ったチームを一度は見なくてはと思っていましたが、実は私も清風を見るのは準決勝の東海大相模高戦が初めてだったのです(^_^;)
見てビックリ。
ガード陣(元々このポジションは小さい選手が多いのですが)の二人は私より背が低い。一人は160cmです。
今時高校女子でもこの低さはないです〔笑〕
長身者が有利なバスケットでは小さい選手は圧倒的に不利です。
でも有利なこともあります。それは俊敏性や運動能力、バスケットへの理解度等です。
相手の東海は全日本ジュニアメンバーの梅林という199cmのセンターがいるだけでなく、ガードは二人とも170cm以上もあります。
清風にとって一番の弱点となる15cmほど高い相手センターへのディフェンスは、強いプレッシャーを掛けてポストでボールを持たせないようにしたり、ボールを持たれたらWチーム(二人で守る)したり、工夫のあとが見られます。
その上清風はよく走り回り、ディフェンスでは強いプレッシャーを掛け、確実な外からのシュートで東海を苦しめます。
ゲームの大半をリードしてましたが、最後で疲れが出たのか、集中力を欠いてパスミスが多くなり逆転負けを喫しましたが、残り3分まで接戦して、超善戦でした。
小さければ小さいなりのバスケットをする。そんなメッセージが三宅から送られた気がしました。
今年の4月にはいずれも180cm台の優秀な大型選手が入ってくると聞いてます。
となると気になるのは、熱将・茂木率いるかつての名門、商大です。
清風が新風を巻き起こした県の新人戦で久しぶりにベスト8に進出しました。
こちらも復活が近いようです。
両チームとも良いライバルとしてお互いに切磋琢磨して強くなってほしいものです。
そうなれば、この横浜の2チームで神奈川県を牛耳る日も近いのではないでしょうか。
期待してます。
平成20年度神奈川県高等学校バスケットボール新人大会最終結果
平成20年度第19回関東高等学校バスケットボール新人大会最終結果
(以上、神奈川県バスケットボール協会HPより)
(敬称略)
1946年生まれ。
月刊専門誌「バスケットボール・イラストレイテッド」の編集長を経て、バスケットボール用品のデザイナーとして活躍。特にキャラクター「あんたかベイビー」のTシャツは一世を風靡した。日本初のバスケット・ユニフォームデザイナーとしても活躍。当時強豪と言われる殆んどのチーム<実業団-大学-高校>に関して何らかのデザインを手掛けている。またスポーツ界では唯一のファッションのコラムを持っていた。
現在は自身のユニフォーム・ブランド「305」を立ち上た。
NBAに関しては「月刊バスケットボール・イラストレイテッド」編集者時代の1966年から連載を執筆。TV解説はNHK BS以前にも東京12チャンネルで1985年から行っており、日本最古のNBA解説者と言われている。
過去にはスポニチウェブサイトのNBAコラムを担当。月刊バスケットボール及び月刊バスケットボール・マガジン等に連載を持っていた。
横浜の中学・高校バスケの指導者、関係者とのつながりが深く横浜及び神奈川県のバスケ事情に精通している。
現在は横浜をホームとするBリーグ「横浜ビー・コルセアーズ」の名誉広報として情報発信やプレス対応などチームの広報活動に力を注いでいる。
また(社)神奈川県バスケットボール協会広報顧問も務めている。
※タイトル・本文に記載の人名・団体名は、
掲載当時のものであり、閲覧時と異なる場合があります。